「賞味期限が短い商品は輸出できない」「海外バイヤーから残存期限について厳しい条件を提示された」そんな悩みを抱えていませんか。食品輸出において、賞味期限の設定や表示方法は避けて通れない重要な課題です。

本記事では、食品輸出における賞味期限の実務知識を網羅的に解説します。輸出先国が求める残存賞味期限の基準から、消費期限との違い、EU・アメリカ・アジア各国の表示規制まで、実務で必要な情報を体系的にまとめました。さらに、賞味期限延長技術や活用できる公的サポート制度についても紹介しています。
プロジェクトナレッジから得た情報を基に、記事本文を作成します。


食品輸出時の賞味期限設定の実務

食品輸出で最初に直面する課題が、賞味期限の設定です。国内販売と同じ設定のままでは、輸送や通関、現地での流通期間を考えると、バイヤーが望む販売期間を確保できないケースが多くあります。ここでは輸出時の賞味期限設定について、実務的なポイントを解説します。

輸出先国が求める残存賞味期限の基準

海外のバイヤーや小売店が輸入食品に求める残存賞味期限は、一般的に製造日から賞味期限までの期間の3分の2以上が残っていることが目安とされています。例えば、賞味期限が製造日から6ヶ月の商品であれば、輸入時点で少なくとも4ヶ月以上の残存期間が必要です。

しかし、国や取引先によって求められる基準は異なります。中国では一部の製品で賞味期限の70%以上の残存を要求されることがあります。アメリカの大手スーパーマーケットチェーンでは、入荷時に賞味期限の75%以上が残っていることを条件にする場合もあります。

さらに、輸送期間も考慮する必要があります。日本から中国や韓国への船便は通常1〜2週間程度ですが、ヨーロッパやアメリカへは3〜4週間かかることもあります。航空便を使えば輸送日数は短縮できますが、コストが大幅に増加します。

輸送期間を考慮した賞味期限の設定方法

実際の輸出では、製造から現地の店頭に並ぶまでに多くの時間がかかります。製造・検査に数日、日本国内での物流・通関手続きに1週間、海上輸送に2〜4週間、現地での通関・検疫に1〜2週間、そして現地流通業者の倉庫から小売店への配送に1週間程度が必要です。

これらを合計すると、製造から店頭までおおよそ6〜10週間、つまり1.5〜2.5ヶ月程度は見込んでおく必要があります。したがって、残存賞味期限の要求を満たすためには、最低でも製造日から4〜6ヶ月以上の賞味期限設定が望ましいといえます。

賞味期限の延長技術については後ほど詳しく解説しますが、真空包装や脱酸素剤の使用、保存料の適切な活用によって、多くの食品で賞味期限を2〜3倍に延ばすことが可能です。農林水産省の「加工食品国際標準化緊急対策事業」では、賞味期限延長対応のための包材の切替や商品開発に対する支援制度も用意されています。


海外向け食品の期限表示ルールと規制

賞味期限の設定だけでなく、その表示方法も国によって大きく異なります。日本の表示をそのまま使うことはできず、各国の規制に適合したラベルを作成する必要があります。

各国・地域別の賞味期限表示規制の違い

中国では「保質期」という用語で賞味期限を表示します。2025年に改正されたGB 7718-2025では、「保質期到期日」という表現が導入され、年・月・日の順序で明確に期限日を記載することが求められています。製造日は「生産日期」として別途表示が必要です。

韓国では従来「賞味期限」表示が主流でしたが、2023年から段階的に「消費期限」表示への移行が進められています。表示形式は年/月/日の順序で、「まで」を意味する表記を付けることが推奨されています。

台湾では品質保持期限または賞味期限を年/月/日の順で表示し、製造年月日との併記も一般的です。さらに保存方法(要冷蔵・常温保存など)の記載も義務付けられています。

アメリカでは乳児用粉ミルクを除き、賞味期限表示は法的義務ではありません。ただし実務上は「Best if Used By」という表現で品質保持期限を示すことが推奨されています。この表現は「この日までに使用するのが最も良い」という意味で、安全性ではなく品質の目安を示すものです。

EU・アメリカ・アジアの表示基準比較

EUでは「Best before」(最良日)または「Use by」(使用期限)の表示が義務付けられています。「Best before」は賞味期限に相当し、品質が最良な状態を保つ期限を示します。一方「Use by」は消費期限に相当し、生鮮食品など傷みやすい製品に使用され、この日を過ぎると食品安全上のリスクがあることを示します。

アメリカでは統一された法的要件はありませんが、FDA(食品医薬品局)とUSDA(農務省)が推奨する用語として「Best if Used By」があります。これは品質の目安であって安全性の期限ではないことを消費者に明確に伝えることを目的としています。

アジア各国では、日本と同様に「賞味期限」と「消費期限」の概念を持つ国が多いものの、表示用語や形式は国ごとに異なります。中国の「保質期」、韓国の従来の「유통기한」(流通期限)から「소비기한」(消費期限)への移行、台湾の「有効日期」または「保存期限」など、同じ概念でも表現が多様です。

ラベル表示で押さえるべき必須項目

賞味期限以外にも、海外向け食品ラベルには多くの必須項目があります。

まず、すべての輸出先国で共通して必要なのが、製品名、原材料名、内容量、製造者または輸入者の名称・住所です。これらは各国の言語(中国語、韓国語、英語など)で表示する必要があります。

栄養成分表示も多くの国で義務化されています。中国ではエネルギー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ナトリウムの5項目が必須です。韓国やアメリカでもこれらに加えて糖類や飽和脂肪酸などの表示が求められます。

アレルゲン表示も重要です。中国では2025年の改正で8大アレルゲン(グルテン含む穀類、甲殻類、魚類、卵、ピーナッツ、大豆、乳、ナッツ類)の表示が義務化されました。韓国では22種類のアレルゲン表示が必要で、日本よりも対象品目が多くなっています。

保存方法の表示も忘れてはいけません。「要冷蔵」「常温保存」「直射日光を避けて保存」など、製品の特性に応じた保存条件を明記することが求められます。中国では「貯存条件」、韓国では「보관방법」として表示します。


食品輸出で賞味期限を延長する技術とサポート

賞味期限が短い商品でも、適切な技術とサポート制度を活用することで輸出が可能になります。

保存期間延長技術と包装技術の活用

食品の保存期間を延ばす技術は年々進化しています。最も基本的な方法は、真空包装や脱酸素剤(エージレス等)の使用です。これらは食品の酸化を防ぎ、微生物の繁殖を抑えることで、常温での保存期間を2〜3倍に延長できます。

ガス置換包装(MAP:Modified Atmosphere Packaging)も効果的です。パッケージ内の空気を窒素や二酸化炭素に置き換えることで、より長期の保存が可能になります。特に焼き菓子や乾物類では広く採用されています。

最近では、高バリア性フィルムの開発も進んでいます。酸素や水蒸気の透過を極限まで抑えた包装材料を使用することで、添加物を増やすことなく保存期間を延ばすことができます。

食品添加物の適切な使用も重要です。保存料、酸化防止剤、pH調整剤などを輸出先国の規制に適合する範囲で使用することで、賞味期限の延長が図れます。ただし、国によって使用できる添加物が異なるため、農林水産省が作成している「海外食品添加物規制早見表」を参考にすることをおすすめします。

賞味期限設定で活用できる公的サポート制度

日本政府は食品輸出を促進するため、さまざまなサポート制度を用意しています。

農林水産省の「加工食品国際標準化緊急対策事業」では、輸出先国の規制や賞味期限延長への対応のため、代替添加物・包材の切替や試験、商品開発、分析機器導入等に対して定額補助を行っています。2024年度の予算は55百万円で、食品製造事業者や輸出商社が活用できます。

同事業では、主要な輸出先10ヶ国・地域について、食品添加物の用途、使用基準、規格の早見表も作成しています。2024年度は着色料、2025年度は乳化剤等、2026年度は保存料等、2027年度は増粘剤等と、段階的に対象を拡大しています。

また、JETRO(日本貿易振興機構)では、各国の食品規制に関する相談窓口を設けています。賞味期限表示だけでなく、製造施設の登録、添加物規制、残留農薬基準など、輸出に関するあらゆる規制について専門家に無料で相談できます。

「国際的に通用する認証等取得緊急支援事業」では、輸出先国の政府等が求める認証(ハラール、コーシャ、FSSC22000など)や、輸出先国の小売業者等が求める食品安全等に係る認証の新規取得のための管理体制の整備や認証機関による審査費用などを支援しています。

都道府県レベルでも輸出支援策があります。例えば、京都府中小企業技術センターでは「賞味・消費期限設定と食品保存期間延長技術」に関する講演会や技術相談を実施しています。


まとめ:食品輸出を成功させる賞味期限戦略

輸出開始前に確認すべきチェックリスト

食品輸出を始める前に、以下の項目を必ず確認しましょう。

賞味期限関連

  • 現在の賞味期限設定で輸出先国の要求(残存期限3分の2以上)を満たせるか
  • 輸送期間(製造から店頭まで1.5〜2.5ヶ月)を考慮した期限設定になっているか
  • 賞味期限延長技術(真空包装、脱酸素剤、ガス置換等)の導入余地はあるか

表示規制関連

  • 輸出先国の言語で必要項目(製品名、原材料、賞味期限、保存方法等)を表示しているか
  • 賞味期限の表示形式(用語、日付順序)が現地の規制に適合しているか
  • アレルゲン表示、栄養成分表示が現地基準を満たしているか

添加物・包材関連

  • 使用している添加物が輸出先国で認められているか
  • 包装材料が現地の食品接触材料基準に適合しているか
  • 輸出先国で禁止されている包材(中国のホルムアルデヒド放出材、台湾のPVC等)を使用していないか

証明書・登録関連

  • 製造施設の海外登録(中国、韓国、アメリカ等)は完了しているか
  • 必要な衛生証明書、原産地証明書は取得できるか
  • 放射性物質検査証明(韓国等)の準備はできているか

専門家に相談すべきタイミングとは

食品輸出では、早い段階で専門家に相談することが成功の鍵です。特に以下のタイミングでは、必ず相談することをおすすめします。

商品開発・パッケージデザイン段階
この段階で輸出先国の規制を理解しておけば、後から大幅な変更をする必要がありません。ラベルデザインを作成する前に、JETROや食品産業センターに相談し、必要な表示項目や禁止事項を確認しましょう。

海外バイヤーとの商談前
バイヤーから賞味期限や残存期限について質問されたときに、具体的な数字で答えられるよう準備が必要です。また、現地の規制に適合した製品であることを証明できる書類を用意しておくと、商談がスムーズに進みます。

輸出で問題が発生したとき
通関で止められた、現地当局から指摘を受けた、といったトラブルが発生したら、すぐに専門家に相談してください。JETRO、各都道府県の輸出支援窓口、または取引のある輸出商社に連絡し、適切な対応策を確認しましょう。

食品輸出における賞味期限の問題は、適切な知識と準備があれば必ず解決できます。本記事で紹介した情報を参考に、ぜひ海外市場への第一歩を踏み出してください。