日本で合法的に使用している食品添加物が、海外では規制対象になっているケースがあることをご存じでしょうか。輸出先国によって添加物の基準や定義が異なるため、事前の確認を怠ると通関トラブルや市場参入の失敗につながる可能性があります。
この記事では、食品輸出における添加物規制の基礎知識から、各国の具体的な規制内容、安全性評価の違い、そして輸出前に確認すべきポイントまでを体系的に解説します。着色料や甘味料など規制されやすい添加物の具体例も紹介するため、自社製品が輸出可能かどうかの判断材料が得られるでしょう。
食品輸出を成功させるための添加物対策を理解することで、適切な市場選定や製品改良の方向性が明確になり、スムーズな海外展開への第一歩を踏み出せます。

食品輸出における添加物規制の基礎知識

食品を海外に輸出する際、添加物の規制は最も注意すべきポイントの一つです。日本国内で問題なく使用できている添加物でも、輸出先の国では使用が禁止されていたり、厳しい制限がかけられていたりするケースが少なくありません。この違いを理解していないと、製品が通関できなかったり、現地で販売できなかったりするトラブルが発生します。

添加物規制は国によって大きく異なるため、輸出を検討する段階で必ず確認が必要です。特に加工食品を扱う企業にとって、この確認作業は輸出成功の鍵を握っています。ここでは、食品輸出における添加物規制の基本的な考え方と、なぜ国によって規制が異なるのかを解説していきます。

食品添加物とは何か

食品添加物とは、食品の製造過程で加えられる物質のことを指します。具体的には、食品の保存性を高めたり、色や香りをつけたり、食感を良くしたりする目的で使われるものです。例えば、ハムやソーセージに使われる発色剤、お菓子に使われる着色料、清涼飲料水に使われる甘味料などが該当します。

日本では食品添加物を大きく4つに分類しています。1つ目は「指定添加物」で、国が安全性を確認して使用を認めたものです。2つ目は「既存添加物」で、長年使われてきた天然由来の添加物が含まれます。3つ目は「天然香料」、4つ目は「一般飲食物添加物」と呼ばれるもので、果汁や寒天など通常食品として食べられるものを添加物として使う場合を指します。

この分類方法は日本独自のもので、海外では異なる考え方で添加物を定義しています。そのため、日本で「添加物」として扱われているものが、海外では「食品」として扱われることもあれば、その逆もあるのです。この定義の違いが、輸出時の混乱を生む大きな原因となっています。

日本と海外で添加物の定義が異なる理由

日本と海外で添加物の定義が異なる背景には、各国の食文化や歴史、安全性に対する考え方の違いがあります。日本では「指定添加物」として国が個別に安全性を確認したものだけを使用できる「ポジティブリスト制度」を採用しています。一方、アメリカやEUでは異なるアプローチで添加物を管理しているため、同じ物質でも扱いが変わってくるのです。

特に大きな違いが見られるのは、天然由来の添加物の扱いです。日本では昔から使われてきた天然添加物を「既存添加物」として認めていますが、海外ではこれらを添加物ではなく食品として分類することがあります。例えば、クチナシ色素やベニコウジ色素といった日本で一般的に使われる天然着色料は、国によっては添加物リストに載っていないこともあるのです。

また、各国が重視する安全性の評価方法も異なります。ある国では長期的な摂取データを重視する一方、別の国では動物実験の結果を優先するなど、評価基準にばらつきがあります。こうした違いから、日本で安全とされている添加物が海外で認められないケースや、逆に海外で使える添加物が日本では使えないケースが生まれています。

食品輸出時に添加物が問題となるケース

食品輸出で添加物が問題となる典型的なケースは、輸出先国で使用が認められていない添加物を含む製品を輸出しようとした場合です。この場合、通関の段階で製品が止められ、最悪の場合は廃棄や返送を求められることになります。企業にとっては大きな損失となるだけでなく、取引先との信頼関係にも影響を及ぼしかねません。

もう一つよくあるのが、添加物の使用量に関する問題です。輸出先国で使用自体は認められていても、許容される使用量が日本より厳しく制限されている場合があります。例えば、保存料や酸化防止剤の使用基準は国によって大きく異なるため、日本の基準で製造した製品が海外基準を超えてしまうことがあるのです。

表示に関する問題も見逃せません。添加物の表示方法は国によって細かく規定されており、日本語表記をそのまま翻訳しただけでは不十分なケースが多いです。輸出先国の規制に沿った正確な表示がなければ、たとえ添加物自体は問題なくても、販売が認められないことがあります。こうした複数の要因が重なり合うことで、輸出時のトラブルが発生しやすくなっています。

食品輸出で規制されやすい添加物の具体例

食品輸出において、特に注意が必要な添加物がいくつかあります。国によって規制の厳しさは異なりますが、着色料、甘味料、保存料は世界的に規制対象となりやすい添加物の代表例です。これらの添加物は消費者の健康に直接関わると考えられているため、各国が慎重に管理しています。

日本で一般的に使用されている添加物の中にも、海外では使用が制限されているものが少なくありません。輸出を検討する際は、自社製品に含まれる添加物が輸出先国で認められているかを必ず確認する必要があります。ここでは、特に規制されやすい添加物の種類ごとに、具体的な事例と各国の対応状況を見ていきましょう。

着色料の規制事例(クチナシ、紅麹など)

着色料は食品の見た目を良くするために使われる添加物ですが、国によって使用できるものが大きく異なります。日本では天然由来の着色料として広く使われているクチナシ色素は、黄色や青色を出すために和菓子や漬物、麺類などに使用されています。しかし、EUではクチナシ色素の使用が一部制限されており、使用できる食品の種類や量に細かい規定があるのです。

紅麹色素も注意が必要な着色料の一つです。日本では赤色を出すための天然着色料として、かまぼこやソーセージ、菓子類に使われています。中国や台湾では比較的使いやすい添加物ですが、アメリカでは使用に制限があり、事前の申請が必要になることがあります。紅麹色素に含まれる成分が、国によって異なる評価を受けているためです。

タール色素と呼ばれる合成着色料については、さらに厳しい規制があります。日本では食用タール色素として認められているものでも、EUでは使用が禁止されているものがあります。例えば、赤色2号や黄色4号といった着色料は、日本では清涼飲料水や菓子に使えますが、EU諸国では使用できません。輸出先によって使用可能な着色料を選ぶことが、製品開発の段階から求められているのです。

甘味料の海外規制状況

甘味料は砂糖の代わりに甘みをつける添加物で、低カロリー食品や糖尿病患者向け食品に欠かせないものです。しかし、人工甘味料については各国で規制が大きく異なります。日本で広く使われているアスパルテームやスクラロースは、多くの国で使用が認められていますが、使用できる食品の種類や量には制限があることを理解しておく必要があります。

サッカリンは古くから使われている人工甘味料ですが、国によって扱いが異なります。日本やアメリカでは使用が認められていますが、過去に発がん性の疑いが指摘されたことから、一部の国では使用に慎重な姿勢を取っています。カナダでは一時期使用が禁止されていた歴史もあり、現在は条件付きで使用可能となっていますが、厳しい表示義務が課されています。

ステビアは天然由来の甘味料として人気がありますが、これも各国で対応が分かれています。日本では既存添加物として広く使われており、清涼飲料水や菓子類に配合されています。アメリカでは「GRAS(一般的に安全と認められる物質)」として扱われていますが、EUでは使用できる食品や使用量に細かい制限があるのです。甘味料を含む製品を輸出する場合は、輸出先国の最新の規制情報を確認することが不可欠です。

保存料・酸化防止剤の各国対応

保存料は食品の腐敗を防ぎ、長期保存を可能にする添加物です。ソルビン酸やソルビン酸カリウムは日本で最もよく使われる保存料の一つで、チーズや漬物、調味料などに含まれています。これらは比較的多くの国で使用が認められていますが、使用量の上限は国によって異なります。特にEUでは食品ごとに細かく使用量が規定されており、日本の基準で製造した製品が基準を超えてしまうケースがあります。

安息香酸ナトリウムも注意が必要な保存料です。日本では清涼飲料水やしょうゆ、マーガリンなどに使用されていますが、一部の国では使用できる食品が限定されています。また、ビタミンCと一緒に使用すると有害物質が生成される可能性があるとして、使用条件が厳しく制限されている国もあるのです。

酸化防止剤については、BHA(ブチルヒドロキシアニソール)やBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)が代表的です。これらは油脂の酸化を防ぐために使われますが、健康への影響が懸念されることから、使用を制限する国が増えています。日本では使用が認められていますが、EUでは使用できる食品の種類が限られており、オーストラリアでは幼児向け食品への使用が禁止されています。自然由来の酸化防止剤であるビタミンEやビタミンCへの代替を検討する企業も増えているのが現状です。

食品添加物の安全性評価と輸出時の確認方法

食品添加物の安全性は、各国の専門機関が科学的な根拠に基づいて評価しています。しかし、評価の方法や基準は国によって異なるため、同じ添加物でも国によって判断が分かれることがあります。輸出を成功させるためには、こうした各国の評価システムを理解し、適切な確認手順を踏むことが重要です。

添加物の確認作業は複雑に見えるかもしれませんが、手順を理解すれば確実に進められます。最も大切なのは、輸出先国の規制を正確に把握することと、自社製品の成分情報を詳細に整理しておくことです。ここでは、各国の安全性評価の仕組みと、実際に輸出前に行うべき確認作業について説明します。

各国における添加物の安全性評価基準

アメリカでは、FDA(食品医薬品局)が添加物の安全性を評価しています。FDAは添加物を「食品添加物」と「GRAS物質」に分類しており、GRAS物質は長年の使用実績などから安全性が広く認められているものを指します。新しい添加物を使用する場合は、企業がFDAに安全性データを提出して承認を得る必要がありますが、GRAS物質の場合は簡略化された手続きで使用できるのです。

EUでは、EFSA(欧州食品安全機関)が添加物の評価を行っています。EUは「E番号」と呼ばれる独自の添加物識別システムを使用しており、承認された添加物にはすべてE番号が割り当てられます。例えば、ビタミンCはE300、クエン酸はE330といった具合です。EUの評価は非常に厳格で、定期的に再評価が行われるため、以前は使えていた添加物が突然使えなくなることもあります。

中国では、国家衛生健康委員会が食品添加物の管理を行っています。中国は「食品安全国家標準」という基準を設けており、使用できる添加物とその使用量が細かく規定されています。日本企業が中国に輸出する際は、この国家標準に適合していることを証明する必要があります。また、韓国では食品医薬品安全処が管理しており、「食品添加物の基準及び規格」に基づいて評価を行っています。各国とも独自の基準を持っているため、複数国への輸出を考える場合は、それぞれの基準を個別に確認することが求められます。

輸出前に確認すべき添加物情報

輸出前の確認作業で最も基本となるのは、自社製品に含まれるすべての添加物をリストアップすることです。製品の配合表や製造記録を見直し、使用している添加物の正式名称、使用量、目的を明確にしましょう。天然由来の原材料であっても、添加物として機能している場合は確認対象に含める必要があります。

次に確認すべきは、輸出先国での添加物の承認状況です。ジェトロ(日本貿易振興機構)や農林水産省のウェブサイトでは、主要国の添加物規制に関する情報が提供されています。特にジェトロの「国・地域別の食品等に係る制度」のページは、各国の規制を網羅的に調べられる便利なツールです。また、輸出先国の政府機関のウェブサイトで最新の規制情報を直接確認することも重要です。

添加物の使用量が基準内に収まっているかの確認も欠かせません。日本の基準で製造していても、輸出先国の基準を超えている可能性があります。例えば、保存料の使用量は国によって上限値が大きく異なるため、必ず輸出先国の基準と照らし合わせてください。使用量が基準を超える場合は、製品の配合を変更するか、別の添加物への代替を検討する必要があります。表示方法についても、輸出先国の規則に従った表記になっているか確認しましょう。

規制対象添加物の調査プロセス

規制対象添加物の調査は、段階的に進めるとスムーズです。まず、輸出先国を決定したら、その国の食品安全管理を担当する政府機関のウェブサイトにアクセスします。アメリカならFDA、EUならEFSA、中国なら国家衛生健康委員会といった具合です。これらのサイトには、承認されている添加物のリストや使用基準が掲載されています。

政府機関のサイトが読みにくい場合は、ジェトロの情報サービスを活用するのが効率的です。ジェトロでは主要国の食品規制をまとめた資料を公開しており、日本語で情報を得られます。また、ジェトロの相談窓口では、輸出に関する具体的な質問に答えてもらえるため、不明点があれば積極的に相談すると良いでしょう。

自社での調査だけでは不安が残る場合は、専門機関への依頼も検討してください。食品の輸出支援を行うコンサルティング会社や、添加物の分析・評価を専門とする機関では、有料で詳細な調査サービスを提供しています。特に複数国への輸出を計画している場合や、使用している添加物の種類が多い場合は、専門家のサポートを受けることで確実性が高まります。調査結果は必ず文書として記録し、社内で共有できる体制を整えておくことが大切です。

食品輸出における添加物規制の最新動向

食品添加物の規制は常に変化しており、各国の科学的知見の蓄積や消費者の意識変化によって、新たな規制が設けられたり、既存の規制が緩和されたりしています。輸出ビジネスを継続的に成功させるためには、こうした最新動向を常に把握しておく必要があります。

近年は特に、健康志向の高まりを背景に、人工添加物に対する規制が世界的に厳しくなる傾向にあります。一方で、天然由来の添加物についても、安全性の再評価が進められているケースがあるのです。ここでは、国際的な添加物規制の変化と、最新情報を入手するための方法について解説します。

国際的な添加物規制の変化

国際的に見ると、合成添加物から天然添加物への移行が進んでいます。EUでは特にこの傾向が強く、いくつかの合成着色料について使用制限が強化されてきました。消費者団体からの要望や、子どもの健康への影響に関する研究結果を受けて、規制が見直されているのです。日本企業がEUに輸出する際は、こうした規制強化の動きに注意を払う必要があります。

一方で、科学的根拠に基づいた規制の合理化も進んでいます。国際食品規格委員会(Codex委員会)では、各国の規制を調和させるための取り組みが行われており、不必要に厳しい規制の緩和も議論されています。例えば、長年使用されてきた添加物について、最新の科学的データに基づいて安全性が再確認されれば、使用範囲が拡大されることもあるのです。

新しいタイプの添加物の登場も、規制環境に変化をもたらしています。植物由来の機能性成分や、発酵技術を使って作られる添加物など、従来の分類に当てはまらない物質が増えてきました。各国の規制当局は、これらの新しい添加物をどう評価し、管理するかについて検討を続けています。こうした動きは、今後の輸出戦略にも影響を与える可能性があるため、注視しておく価値があります。

輸出支援サービスの活用方法

添加物規制の確認作業は専門的で時間もかかるため、公的な輸出支援サービスを活用することをお勧めします。ジェトロは全国に事務所を持ち、無料の相談サービスを提供しています。輸出先国の規制情報の提供だけでなく、現地の輸入業者の紹介や、商談会の開催支援なども行っているため、輸出の初期段階から活用すると効率的です。

農林水産省も輸出促進のための支援体制を整えています。「食品産業センター」では、輸出に関するセミナーを定期的に開催しており、添加物規制についての最新情報を得られます。また、都道府県の農政部局や商工会議所でも、輸出に関する相談窓口を設けている場合が多いので、地域の支援機関も確認してみましょう。

民間の輸出支援サービスも充実してきています。食品の輸出代行会社では、添加物の規制確認から、必要書類の作成、現地での通関手続きまで一貫してサポートするサービスを提供しています。費用はかかりますが、自社で一から調べるよりも確実で、時間の節約にもなります。特に初めての輸出や、規制が複雑な国への輸出では、こうしたプロのサポートを受けることで、トラブルのリスクを大幅に減らせるでしょう。

添加物判断における専門家への相談

添加物の規制判断で迷ったときは、専門家に相談することが最も確実な方法です。食品衛生コンサルタントや、輸出を専門とする行政書士などは、各国の規制に精通しており、具体的なアドバイスを提供してくれます。特に、製品の配合変更が必要になった場合や、代替添加物の選定が必要な場合は、専門家の知見が役立ちます。

検査機関への相談も有効です。食品分析を行う検査機関では、添加物の含有量を正確に測定するサービスを提供しています。輸出先国の基準を満たしているかを科学的に確認でき、必要に応じて分析証明書も発行してもらえます。この証明書は、通関時や現地での販売許可取得時に求められることがあるため、準備しておくと安心です。

業界団体への相談も選択肢の一つです。食品業界の団体では、会員企業向けに輸出に関する情報提供や相談サービスを行っています。同じ業種の企業が抱える課題や解決事例を共有できるため、実践的なアドバイスが得られる可能性があります。また、定期的に開催される勉強会や交流会に参加することで、最新の規制動向や成功事例を学べるでしょう。専門家への相談には費用がかかる場合もありますが、輸出の失敗によるロスを考えれば、十分に価値のある投資といえます。

まとめ

食品輸出における添加物規制は、国によって大きく異なり、日本で合法的に使用している添加物が海外では制限される可能性があります。輸出を成功させるためには、添加物の定義や分類方法が国ごとに違うことを理解し、輸出先国の規制を事前に確認することが不可欠です。

着色料、甘味料、保存料などは特に規制されやすい添加物であり、クチナシや紅麹といった天然由来のものでも注意が必要です。輸出前には自社製品に含まれるすべての添加物をリストアップし、輸出先国での承認状況と使用量の基準を確認しましょう。ジェトロや農林水産省などの公的機関が提供する情報を活用し、必要に応じて専門家のサポートを受けることで、確実な輸出準備を進められます。

添加物規制は常に変化しているため、最新情報の収集を怠らないことが重要です。輸出支援サービスや専門家への相談を積極的に活用し、リスクを最小限に抑えながら海外市場への展開を進めていきましょう。適切な準備と確認作業を行うことで、食品輸出のビジネスチャンスを確実につかむことができます。