本記事では、EU食品輸出規制の全体像から具体的な手続きの流れ、クリアすべき安全基準まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。混合食品の特別な規制、品目別の要件、よくあるトラブル事例など、実務で必要な情報を網羅しました。
この記事を読み終える頃には、自社製品のEU輸出の可能性を判断でき、具体的な準備計画を立てられるようになります。EU市場参入への第一歩を、確実に踏み出しましょう。

EU食品輸出規制とは?日本からの輸出で知っておくべき基礎知識

EUへの食品輸出を考える際、まず理解しておきたいのが「EU食品輸出規制」の全体像です。EUは欧州連合の略称で、27の加盟国から構成される経済共同体を指します。これらの国々に食品を輸出する際には、EU全体で統一された厳しい規制をクリアする必要があります。

日本からEUへ食品を輸出する場合、大きく分けて3つの規制分野があります。第一に「食品安全規制」で、残留農薬や添加物などの基準値が定められています。第二に「手続き規制」で、施設認定や証明書の取得が求められます。第三に「表示規制」で、ラベルに記載すべき情報が細かく指定されています。

これらの規制は、EU域内の消費者の健康を守ることを最優先に設計されており、世界で最も厳格な食品規制体系として知られています。そのため、初めて輸出に取り組む事業者にとっては複雑に感じられるかもしれませんが、一つひとつの要件を理解していけば、決して乗り越えられない壁ではありません。本記事では、これらの規制を段階的に解説していきます。

EUが世界で最も厳しい食品規制を設けている理由

EUが厳しい食品規制を設けている背景には、過去の食品安全事故の教訓があります。1990年代に発生したBSE(牛海綿状脳症、いわゆる狂牛病)問題や、ダイオキシン汚染事件などを経験したEUは、消費者保護を最優先課題として位置づけるようになりました。

この経験から、EUは「予防原則」という考え方を採用しています。これは、科学的に完全な証明がなくても、健康リスクの可能性がある場合には予防的措置を取るという姿勢です。そのため、他の国や地域では許可されている添加物や農薬でも、EUでは使用が制限されているケースが少なくありません。

また、EUは消費者の「知る権利」を重視しており、食品のトレーサビリティ(追跡可能性)を徹底しています。つまり、食品がどこで生産され、どのような経路で消費者の手元に届いたかを明確にする仕組みが整備されているのです。このため、輸出する側も製造履歴や原材料の情報を詳細に管理する必要があります。

さらに、EU全体で統一された基準を設けることで、加盟国間での自由な流通を保証しています。一度EU域内に入った食品は、他の加盟国にも自由に流通できるため、輸出事業者にとっては一つの基準をクリアすれば27カ国の市場にアクセスできるというメリットもあります。

2024年以降のEU食品輸出規制の最新動向

2024年以降、EUの食品輸出規制にはいくつかの重要な変更がありました。最も注目すべきは、日本産食品に対する放射性物質規制の大幅な緩和です。2011年の東日本大震災に伴う福島第一原発事故以降、EUは日本産食品に対して厳しい輸入規制を課していましたが、2024年8月にこれらの規制が撤廃されました。

この規制撤廃により、多くの日本産食品がより輸出しやすくなりました。以前は放射性物質検査の証明書が必要だった品目も、現在では通常の手続きで輸出できるようになっています。ただし、一部の地域や品目については引き続き注意が必要なケースもあるため、最新情報の確認は欠かせません。

また、2024年からは包装材に関する新しい規制「包装及び包装廃棄物規則(PPWR)」の議論が進んでいます。これは環境保護の観点から、使い捨てプラスチックの使用削減や、リサイクル可能な素材の使用を促進する規制です。食品の包装方法を見直す必要が出てくる可能性があるため、今後の動向に注目が必要です。

さらに、デジタル化の流れも加速しています。証明書の電子化や、オンラインでの申請手続きが導入されつつあり、輸出手続きの効率化が進んでいます。これにより、以前よりも迅速に輸出準備を進められる環境が整いつつあります。

EU食品輸出規制の全体像|規制の種類と適用範囲

EU食品輸出規制は、大きく分けて「製品そのものに対する規制」と「手続きに関する規制」の2つに分類できます。製品規制には、食品の成分や品質に関する基準が含まれ、手続き規制には、輸出に必要な認定や証明書の取得が含まれます。これらを理解することが、スムーズな輸出への第一歩となります。

まず製品規制では、残留農薬の上限値、使用可能な添加物のリスト、重金属の含有量制限などが詳細に定められています。これらの基準は科学的根拠に基づいて設定されており、定期的に見直しが行われています。日本国内で流通している食品でも、EUの基準を満たさない場合があるため、事前の確認が不可欠です。

手続き規制については、製造施設のEU認定取得、輸出事業者の登録、公的証明書の発行申請など、複数のステップを踏む必要があります。特に動物性原材料を含む食品については、より厳格な手続きが求められます。これらの手続きには一定の時間がかかるため、輸出計画を立てる際には余裕を持ったスケジュール設定が重要です。

また、規制の適用範囲は食品の種類によって異なります。生鮮食品と加工食品、動物性食品と植物性食品では、求められる基準や手続きが大きく変わってきます。自社製品がどのカテゴリーに該当するかを正確に把握することが、適切な対応の出発点となります。

輸入禁止・制限品目(放射性物質規制を含む)

EUには、特定の国や地域からの食品輸入を禁止または制限する措置があります。これは主に動物の病気や植物の病害虫のリスクから、EU域内を守るための措置です。例えば、鳥インフルエンザが発生した地域からの家きん肉は、一時的に輸入が停止されることがあります。

日本に関しては、前述の通り2024年8月に放射性物質規制が大幅に緩和されました。それ以前は、福島県を含む複数の県で生産された特定の食品について、放射性物質検査の証明書提出が義務付けられていましたが、現在はこの要件が撤廃されています。ただし、EU側が必要と判断した場合には、抜き取り検査が行われることもあります。

また、特定の動物性食品については、日本からの輸出が認められていない品目も存在します。例えば、生乳や一部の乳製品については、現時点でEUへの輸出が制限されています。これは、日本とEUの衛生基準や検査体制の同等性がまだ完全には認められていないためです。

さらに、植物検疫の観点から、特定の植物や植物製品についても輸入制限があります。土が付いた状態の野菜や、特定の害虫のリスクがある果物などは、追加の検疫措置や証明書が必要になる場合があります。自社製品が制限品目に該当しないか、事前に確認することが重要です。

動物性食品と植物性食品の違い

EU食品輸出規制において、動物性食品と植物性食品では求められる要件が大きく異なります。この違いを理解することは、適切な輸出準備を進める上で非常に重要です。

動物性食品とは、肉、魚、卵、乳製品など、動物に由来する食品を指します。これらの食品をEUに輸出する場合、製造施設がEUの衛生基準に適合していることを証明する「EU認定」を取得する必要があります。この認定を受けるには、施設の構造、設備、衛生管理体制などがEUの厳格な基準を満たしていることを、日本の管轄当局(厚生労働省や農林水産省)を通じて証明しなければなりません。

また、動物性食品の輸出には「衛生証明書」の添付が義務付けられています。この証明書は、製品が安全で、EUの衛生基準を満たしていることを公的に保証するものです。証明書の発行には、動物検疫所や保健所などの検査を受ける必要があり、手続きには時間がかかることが一般的です。

一方、植物性食品(野菜、果物、穀物など)については、動物性食品ほど厳格な施設認定は求められません。ただし、植物検疫の観点から、病害虫が付着していないことを証明する「植物検疫証明書」が必要になる場合があります。また、残留農薬の基準は非常に厳しく設定されているため、栽培段階から使用する農薬の選定と管理に注意が必要です。

混合食品と呼ばれる、動物性原材料と植物性原材料の両方を含む加工食品(例:だし入り味噌、レトルトカレー)については、含まれる動物性原材料の割合によって規制の厳しさが変わります。動物性原材料の割合が一定以下であれば、比較的簡素な手続きで輸出できる場合もありますが、詳細な確認が必要です。

EU食品輸出に必要な手続きの全ステップ

EUへ食品を輸出するためには、複数の手続きを段階的に進める必要があります。ここでは、実際に輸出を開始するまでの主要なステップを順を追って解説します。全体の流れを把握することで、計画的に準備を進めることができます。

まず最初に行うべきは、自社製品がEUの基準を満たしているかどうかの確認です。製品の成分分析を行い、残留農薬や添加物などがEUの基準値内に収まっているかチェックします。もし基準を超える成分があれば、製品の配合変更や製造工程の見直しが必要になります。

次に、動物性原材料を使用している場合は、製造施設のEU認定取得が必要です。この手続きには通常、数ヶ月から1年程度の期間がかかります。認定申請は日本の管轄当局を通じて行い、施設の検査や書類審査を経て、最終的にEU側から承認を得る形となります。

並行して、輸出事業者としての登録や、輸出先のEU加盟国における輸入業者の確保も進めます。また、製品ラベルの作成も重要なステップです。EUの表示規制に従った内容を、現地の言語で記載する必要があります。これらの準備が整った段階で、初めて実際の輸出が可能になります。

施設のEU衛生認定取得までの流れ

動物性原材料を含む食品をEUに輸出する場合、製造施設がEU認定を取得することが必須条件となります。この認定取得までの流れを、具体的に見ていきましょう。

まず、自社の製造施設がEUの衛生基準を満たしているか自己評価を行います。EUが求める基準には、施設の構造(壁や床の材質、排水設備など)、温度管理システム、害虫駆除対策、従業員の衛生教育体制などが含まれます。これらの要件を詳細に定めた「EU規則」を参照しながら、現状とのギャップを洗い出します。

基準を満たしていない部分があれば、施設の改修や設備の追加導入が必要になります。例えば、製造エリアと非製造エリアの明確な区分、手洗い設備の増設、温度記録装置の設置などが求められることがあります。これらの改善には、場合によっては数百万円規模の投資が必要になることもあります。

施設が基準を満たす状態になったら、日本の管轄当局(食肉の場合は厚生労働省、水産物の場合は農林水産省など)に認定申請を提出します。申請には、施設の平面図、衛生管理マニュアル、製造工程図などの詳細な書類が必要です。当局による現地調査が行われ、基準への適合性が確認されます。

調査で問題がなければ、日本当局からEU側に認定推薦が行われます。EU側の審査を経て承認されると、施設は「EUリスト」と呼ばれる認定施設リストに登録されます。この一連のプロセスには、申請から承認まで通常6ヶ月から1年程度かかると考えておくべきでしょう。

輸出事業者登録の方法と必要書類

EU向けに食品を輸出する事業者は、日本国内での登録手続きを行う必要があります。この登録は、製品の種類によって管轄する省庁や具体的な手続きが異なりますので、自社製品に応じた適切な窓口を確認することが重要です。

水産物を輸出する場合は、農林水産省の動物検疫所に輸出水産食品取扱施設として登録します。登録申請書には、施設の名称、所在地、代表者情報、取り扱う水産物の種類などを記載します。施設の平面図や、HACCP(危害分析重要管理点)に基づく衛生管理計画書の提出も求められます。

食肉や食肉製品の場合は、厚生労働省の管轄となり、と畜場や食肉処理施設としての認定が必要です。既に国内向けに営業許可を持っている施設でも、EU向けには追加の要件を満たす必要があることが多いため、事前の確認が欠かせません。

加工食品については、製品に含まれる原材料の種類によって手続きが変わります。動物性原材料を一定以上含む混合食品の場合は、より厳格な手続きが必要になります。一方、完全に植物性の加工食品であれば、施設認定は不要で、輸出の都度必要な証明書を取得する形となることもあります。

登録手続きには、通常1〜3ヶ月程度の期間を見込んでおくとよいでしょう。登録が完了すると、登録番号が付与され、この番号は輸出する製品のラベルや証明書に記載することになります。

公的証明書(衛生証明書)の申請手続き

EU向けに食品を輸出する際、多くの場合「公的証明書」の添付が義務付けられています。この証明書は、製品がEUの衛生基準を満たしていることを日本の公的機関が保証するものです。証明書の種類や申請手続きは、食品の種類によって異なります。

水産物の衛生証明書は、農林水産省の動物検疫所が発行します。輸出の都度、事前に申請を行い、検査官による製品検査を受けます。検査では、製品の温度管理状態、包装の状態、ラベル表示の適切性などが確認されます。検査に合格すると、証明書が発行され、これを輸出貨物に添付します。

食肉や食肉製品の場合は、厚生労働省の食肉衛生検査所が証明書を発行します。と畜段階から製品化まで、一貫した衛生管理が行われていることを証明する必要があるため、製造工程の記録管理が重要になります。

加工食品で動物性原材料を含む場合は、「混合食品」として扱われ、製品の種類や動物性原材料の割合に応じて、必要な証明書の種類が変わります。比較的動物性原材料の少ない製品については、「自己宣誓書」という簡略化された証明方法を利用できる場合もあります。

証明書の申請には、製品の詳細情報、製造工程の説明、原材料のリストなどの資料提出が求められます。申請から発行までには、通常3〜7営業日程度かかりますが、初回申請の場合はさらに時間がかかることもあります。定期的に輸出する場合は、スケジュールに余裕を持って申請することが大切です。

輸入通関手続きと検査・検疫

製品がEUに到着すると、輸入通関手続きと検査・検疫のプロセスが始まります。このプロセスは主にEU側の輸入業者が担当しますが、輸出側も事前に流れを理解しておくことで、スムーズな通関をサポートできます。

EU域内の指定された国境検査所(BCP: Border Control Post)で、まず書類審査が行われます。ここでは、日本から送付された衛生証明書、商業送り状、原産地証明書などが確認されます。書類に不備があると、貨物が止められてしまうため、出荷前の書類チェックが非常に重要です。

書類審査に合格すると、次は現物検査に進みます。ただし、すべての貨物が現物検査を受けるわけではなく、リスク評価に基づいて抜き取り検査が行われます。日本からの輸出実績が積み重なり、問題なく輸入されている実績があれば、検査の頻度は下がる傾向にあります。

現物検査では、製品の状態、温度管理の記録、包装の完全性などが確認されます。必要に応じて、サンプルを採取して実験室での分析が行われることもあります。この場合、結果が出るまで数日から1週間程度かかることがあります。

検査に合格すると、「共通衛生入域文書(CHED: Common Health Entry Document)」が発行され、貨物はEU域内への入域が許可されます。その後は通常の関税手続きを経て、最終目的地へと配送されます。通関全体のプロセスには、通常2〜5日程度かかると見込んでおくとよいでしょう。

EUの食品安全基準|クリアすべき7つの規制項目

EUへの食品輸出を実現するためには、厳格な食品安全基準をクリアする必要があります。ここでは、特に重要な7つの規制項目について詳しく解説します。これらの基準を理解し、自社製品が適合しているか確認することが、輸出成功への鍵となります。

EUの食品安全基準は、科学的根拠に基づいて設定されており、定期的に見直しが行われています。そのため、最新の基準を常に確認する姿勢が重要です。また、基準値は食品の種類によって異なるため、自社製品のカテゴリーに該当する基準を正確に把握する必要があります。

これらの基準は、単に数値を満たせばよいというものではありません。製造工程全体を通じて、品質管理と記録保持を徹底することが求められます。トレーサビリティ(追跡可能性)を確保し、問題が発生した際に迅速に原因を特定できる体制を整えることも、EU市場で信頼を得るために不可欠です。

残留農薬および動物用医薬品の基準値

EUでは、食品中の残留農薬に対して非常に厳しい基準を設けています。これは、消費者の健康保護を最優先にする「予防原則」に基づいた姿勢の表れです。日本国内で使用が認められている農薬でも、EUでは使用が禁止されているケースや、より低い残留基準値が設定されているケースが多くあります。

例えば、野菜や果物の栽培に使われる特定の殺虫剤や除草剤について、EUでは日本よりも厳しい上限値が設定されています。また、EUで使用が認められていない農薬が検出された場合、たとえ微量であっても輸入が拒否される可能性があります。そのため、原材料の調達段階から、使用農薬の管理に細心の注意を払う必要があります。

動物用医薬品についても同様に厳格な規制があります。養殖魚や畜産物に対して使用される抗生物質、ホルモン剤、寄生虫駆除薬などの残留基準が細かく定められています。特に成長ホルモンの使用はEUでは原則として禁止されており、こうした物質が検出されると重大な問題となります。

自社製品の残留農薬や動物用医薬品をチェックするには、専門の分析機関に検査を依頼するのが確実です。日本国内にもEUの基準に対応した分析サービスを提供する機関がありますので、輸出前に検査を実施し、基準適合を確認しておくことをお勧めします。検査結果は記録として保管し、必要に応じてEU側に提示できるようにしておくことも重要です。

重金属および汚染物質の規制

食品中の重金属や汚染物質についても、EUは厳しい上限値を設定しています。主な規制対象となるのは、鉛、カドミウム、水銀、ヒ素などの重金属や、ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)などの環境汚染物質です。

これらの物質は、自然環境中に存在するため、完全にゼロにすることは困難ですが、EUでは人の健康に影響を与えないレベルまで低減することが求められています。特に、魚介類は水銀やカドミウムを蓄積しやすいため、基準値が厳しく設定されています。大型の魚ほど水銀濃度が高くなる傾向があるため、対象魚種の選定にも注意が必要です。

米や穀物については、カドミウムの基準が重要になります。日本の一部地域では土壌にカドミウムが含まれているため、栽培された米にも一定量のカドミウムが検出されることがあります。EUの基準値は日本の基準よりも厳しい場合があるため、原材料として使用する米の産地選定や、事前の検査が重要です。

また、包装材料から食品に移行する可能性のある物質についても規制があります。例えば、缶詰の内側のコーティング材から溶出する可能性のあるビスフェノールA(BPA)などが対象となります。包装材料の選定時にも、EUの基準適合性を確認する必要があります。

食品添加物の使用制限

EUでは、食品添加物の使用について厳格な管理体制が敷かれています。使用が認められている添加物は「ポジティブリスト」として公開されており、リストに掲載されていない添加物は一切使用できません。また、使用が認められている添加物であっても、食品の種類ごとに使用できる上限量が細かく定められています。

日本で一般的に使用されている添加物の中にも、EUでは使用が認められていないものがあります。例えば、一部の着色料や保存料、甘味料などがこれに該当します。逆に、日本では使用が制限されている添加物でも、EUでは認められているケースもあるため、双方の規制を理解することが重要です。

特に注意が必要なのは、「E番号」と呼ばれるEU独自の添加物分類システムです。EUでは、認可された添加物にはすべてE番号が付けられており、製品ラベルにはこの番号での表示が求められます。例えば、ビタミンCは「E300」、クエン酸は「E330」といった具合です。

製品開発の段階から、EUで使用可能な添加物のみを使用するよう配慮することで、後からの製品改良の手間を省くことができます。また、添加物を使用する場合は、その使用目的と使用量を明確に記録し、必要に応じて説明できるようにしておくことも大切です。天然由来の成分であっても、添加物として機能する場合は規制の対象となることがあるため、注意が必要です。

食品包装(容器)の品質基準

EUでは、食品と直接接触する包装材料についても厳格な基準が設けられています。これは、包装材から食品に有害物質が移行することを防ぎ、消費者の安全を守るための規制です。プラスチック、紙、金属、ガラスなど、すべての包装材料が対象となります。

プラスチック包装については特に詳細な規制があります。使用できるプラスチック素材の種類、添加剤、そして食品への移行量の上限値などが定められています。また、近年は環境保護の観点から、使い捨てプラスチックの使用削減やリサイクル可能な素材の使用が強く推奨されています。

包装材料から食品への物質移行を確認するため、「移行試験」と呼ばれる検査が必要になる場合があります。この試験では、包装材料を食品や食品を模した溶液と接触させ、一定時間後に溶出する物質の種類と量を分析します。試験結果がEUの基準を満たしていることを証明する必要があります。

また、環境への配慮として、包装材料の削減や、生分解性素材の使用も推奨されています。過剰な包装は避け、必要最小限の包装で製品の品質と安全性を保つ工夫が求められます。リサイクルマークや材質表示など、包装に関する情報もラベルに明記する必要があります。

包装材料の選定は、製品の品質保持と環境配慮の両面から慎重に行うべきです。包装材メーカーにEU規制への適合性を確認し、必要な証明書類を入手しておくことをお勧めします。

ラベル表示の要件

EU向けに食品を輸出する際、製品ラベルは消費者に正確な情報を提供する重要な手段となります。EUのラベル表示規制は非常に詳細で、記載すべき項目、表示方法、文字サイズに至るまで細かく定められています。

必須記載項目には、製品名、原材料リスト、アレルゲン情報、内容量、賞味期限または消費期限、保存方法、製造者または輸入者の名称と住所、原産国などが含まれます。これらの情報は、販売される国の公式言語で記載する必要があります。例えば、フランスで販売する場合はフランス語、ドイツで販売する場合はドイツ語での表示が必要です。

アレルゲン表示については特に注意が必要です。EUでは、小麦などの穀物、甲殻類、卵、魚、大豆、乳製品、ナッツ類など、14種類のアレルゲンが指定されており、これらが原材料に含まれる場合は明確に表示しなければなりません。原材料リストの中で、アレルゲンを太字や下線などで強調表示することが推奨されています。

栄養成分表示も義務付けられています。エネルギー(カロリー)、脂質、飽和脂肪酸、炭水化物、糖類、タンパク質、食塩相当量の7項目を、100gまたは100mlあたりの含有量として表示します。表形式での表示が基本ですが、スペースが限られる場合は横書きでの表示も認められています。

ラベルのデザインや文言は、消費者を誤解させるものであってはなりません。例えば、科学的根拠のない健康効果を謳うことや、実際よりも高品質であるかのように見せかける表現は禁止されています。ラベル作成の際は、EU規制に詳しい専門家やコンサルタントのチェックを受けることをお勧めします。

有機食品・遺伝子組換え食品の規制

有機食品としてEU市場で販売するためには、EUの有機認証を取得する必要があります。日本の有機JAS認証とEUの有機認証は制度が異なるため、日本で有機認証を取得していても、EU向けには別途手続きが必要です。ただし、日本とEUの間では有機同等性協定が結ばれており、一定の条件を満たせば相互認証が可能になっています。

EU有機認証を取得するには、原材料の95%以上が有機栽培または有機飼育されたものである必要があります。また、製造工程においても、化学合成された添加物や加工助剤の使用が厳しく制限されています。認証を受けた製品には、EUの有機認証マーク(通称「ユーロリーフ」)を表示することができます。

遺伝子組換え(GM)食品については、EUは非常に慎重な姿勢を取っています。遺伝子組換え作物やその加工品を使用する場合、厳格な安全性評価と承認手続きが必要です。また、遺伝子組換え原材料を0.9%以上含む食品には、その旨を明確に表示しなければなりません。

多くのEU消費者は遺伝子組換え食品に対して否定的な態度を持っているため、市場戦略としては遺伝子組換え原材料を使用しない「Non-GMO(非遺伝子組換え)」製品が好まれる傾向にあります。原材料調達の段階から、遺伝子組換えでないことを確認し、その証明を入手しておくことが重要です。

有機食品や非遺伝子組換え食品として販売する場合、サプライチェーン全体でその特性が維持されていることを証明する必要があります。原材料の生産者から最終製品まで、一貫したトレーサビリティと記録管理が求められます。

新規食品(ノベルフード)に関する規制

EUでは、1997年5月15日以前にEU域内で食用として広く消費されていなかった食品を「新規食品(Novel Food、ノベルフード)」として定義し、特別な規制の対象としています。この規制は、新しい技術で製造された食品や、EUでは伝統的に食されてこなかった食材から作られる食品に適用されます。

新規食品に該当する可能性があるのは、例えば昆虫食品、藻類やその抽出物、ナノテクノロジーを用いた食品、特定の植物エキスなどです。また、日本では一般的に食べられているものでも、EU域内での消費実績が限られていれば、新規食品として扱われる可能性があります。

自社製品が新規食品に該当するかどうかは、EU側の判断に委ねられます。判断が難しい場合は、事前にEUの各国当局や欧州委員会に照会することができます。新規食品と判定された場合、市場に出す前に安全性評価と承認手続きを経なければなりません。

この承認プロセスには、科学的な安全性データの提出、欧州食品安全機関(EFSA)による評価、欧州委員会と加盟国による審査など、複数のステップがあり、通常1〜3年程度の期間と相当なコストがかかります。そのため、新規食品に該当する可能性がある製品の輸出を計画する場合は、早い段階で専門家に相談することをお勧めします。

ただし、新規食品規制には例外規定もあります。伝統的な食品製造方法で作られた製品や、EU加盟国の一部地域で25年以上の安全な消費実績がある場合などは、簡略化された手続きで認可を受けられる可能性があります。

混合食品のEU輸出規制|特に注意すべきポイント

混合食品とは、動物性原材料と植物性原材料の両方を含む加工食品のことを指します。日本の伝統的な食品である味噌、醤油、だし入り調味料、レトルト食品、インスタント麺など、多くの製品がこのカテゴリーに該当します。混合食品のEU輸出には、特有の規制と手続きがあるため、詳しく理解しておく必要があります。

混合食品の規制は、含まれる動物性原材料の種類と割合によって大きく変わります。動物性原材料の割合が低い製品は比較的簡素な手続きで輸出できますが、割合が高い製品や、特定の動物性原材料を含む製品は、より厳格な要件が適用されます。

2021年にEUの混合食品規制が強化され、多くの日本企業が影響を受けました。しかし、その後、日本政府とEUとの協議により、特定の製品については手続きの簡素化措置が導入されています。最新の規制内容を確認し、自社製品に適用される要件を正確に把握することが重要です。

混合食品とは?定義と該当する製品例

混合食品の定義は、EUの規則において「動物由来の加工済製品を含み、かつ植物由来の製品や他の原材料を含む食品」とされています。重要なポイントは、「加工済」の動物性原材料を含むという点です。生の肉や魚は混合食品ではなく、動物性食品として扱われます。

具体的な該当製品としては、だし入り味噌(かつお節や煮干しなどの魚介エキス入り)、チョコレート(乳製品を含む)、クッキーやビスケット(卵や乳製品を含む)、ラーメン(肉エキスや魚介エキス入りスープ)、レトルトカレー(肉や乳製品を含む)、ドレッシング(卵や乳製品を含む)などが挙げられます。

製品が混合食品に該当するかどうかは、原材料リストを見て判断します。「かつおエキス」「チキンエキス」「乳糖」「全粉乳」「卵白粉」など、動物由来の成分が含まれていれば、混合食品として扱われる可能性が高いです。微量であっても、動物性原材料が含まれていれば規制の対象となることがあります。

一方、完全に植物性の原材料のみで作られた製品(例:純粋な植物油、植物性のみのカレー、野菜だけのスープ)は混合食品には該当せず、より簡素な手続きで輸出できます。製品開発の段階で、動物性原材料の使用を避けるか、代替原材料を検討することも、輸出を容易にする一つの戦略となります。

動物性加工済原料を使用する場合の衛生証明書

混合食品に動物性加工済原料が含まれる場合、その原料がEUの衛生基準を満たしていることを証明する必要があります。この証明方法は、使用する動物性原料の種類と、その原料の原産国によって異なります。

最も厳格な要件が適用されるのは、EU認定施設由来の動物性原料を使用することが義務付けられている場合です。例えば、2021年11月以降、はちみつを動物性加工済原料として使用する混合食品については、EU認定を受けた施設で生産されたはちみつのみが使用可能となりました。これは、はちみつが動物(蜂)由来の製品として分類されるためです。

一部の国から輸入した動物性加工済原料を使用する場合、その国の公的機関が発行する衛生証明書を入手できることがあります。例えば、ニュージーランド、カナダ、タイ、オーストラリア、アルゼンチンなどからの特定の動物性原料については、それぞれの国とEUとの間で合意された証明書の取得が可能です。

日本国内で生産された動物性加工済原料を使用する場合、その原料を製造する施設がEU認定を受けている必要があります。認定を受けていない施設の原料を使用する場合、その製品はEUに輸出できません。そのため、原材料調達の段階から、供給元の施設がEU認定を持っているか確認することが重要です。

衛生証明書は、製品を輸出する都度、日本の管轄当局(農林水産省や厚生労働省の関係機関)に申請して取得します。申請には、使用している動物性原料の詳細情報、その原料の供給元と認定番号、製造工程の説明などが必要です。証明書の発行には数日から1週間程度かかるため、余裕を持った申請が必要です。

自己宣誓書を利用した通関手続きの簡略化

混合食品の輸出手続きを簡素化する措置として、「自己宣誓書」の利用が認められているケースがあります。これは、特定の条件を満たす製品について、公的な衛生証明書の代わりに、輸出事業者自身が製品の安全性を宣誓する書類を使用できる制度です。

自己宣誓書が利用できる主な条件は、動物性加工済原料の含有量が一定の割合以下であること、そして使用されている動物性原料が安定した製品(常温保存可能で、加熱処理やその他の加工により微生物リスクが低減されたもの)であることです。具体的な割合の基準は、動物性原料の種類によって異なります。

例えば、だし入り味噌のように、少量の魚介エキスが含まれる製品については、自己宣誓書の利用が認められるケースがあります。これにより、これまで必要だった公的証明書の取得手続きが不要となり、輸出のコストと時間を大幅に削減できます。

自己宣誓書を作成する際は、製品の詳細情報、使用している動物性原料の種類と含有量、製造工程における加熱処理などの安全対策、製造施設の衛生管理体制などを記載します。書式は、農林水産省のウェブサイトなどで公開されている標準フォーマットを使用するのが一般的です。

ただし、自己宣誓書を利用できるかどうかは、製品の具体的な内容によって判断が分かれます。不明な場合は、農林水産省や動物検疫所などの相談窓口に問い合わせて、事前に確認することをお勧めします。また、自己宣誓書を使用する場合でも、記載内容の正確性と製品の安全性については事業者が責任を負うため、適切な品質管理体制の維持が不可欠です。

EU認定施設由来の原材料を使う必要性

混合食品に使用する動物性原材料については、その原材料を製造する施設がEU認定を受けていることが求められるケースが増えています。これは、サプライチェーン全体でEUの衛生基準が守られていることを保証するための要件です。

EU認定施設由来の原材料が必要となる代表的な例は、前述のはちみつです。2021年11月以降、混合食品にはちみつを使用する場合、そのはちみつはEU認定を受けた施設で生産されたものでなければなりません。日本国内にもEU認定を受けたはちみつ包装施設がありますので、そうした施設から調達する必要があります。

また、魚介エキスやゼラチン、コラーゲンなど、特定の動物性原料についても、EU認定施設由来であることが求められる場合があります。使用する原材料の種類によって要件が異なるため、製品ごとに確認が必要です。

原材料供給元がEU認定を持っているかどうかは、供給元に直接確認するか、または農林水産省や厚生労働省が公開しているEU認定施設リストで確認できます。リストには、施設の名称、所在地、認定番号、取り扱い品目などが記載されています。

もし現在使用している原材料の供給元がEU認定を持っていない場合、いくつかの選択肢があります。一つは、認定を持つ別の供給元に切り替えることです。もう一つは、現在の供給元にEU認定の取得を依頼することですが、これには時間とコストがかかります。第三の選択肢として、動物性原料を使用しない製品への配合変更を検討することも考えられます。

いずれの選択肢を取るにしても、早めの対応が重要です。原材料の切り替えや配合変更には、製品の味や品質に影響が出る可能性もあるため、十分なテストと準備期間を確保する必要があります。

品目別のEU食品輸出規制と手続き

食品の種類によって、EU輸出に必要な手続きや規制は大きく異なります。ここでは、日本からの輸出が多い主要な品目について、それぞれの特有の規制と手続きを解説します。自社製品がどのカテゴリーに該当するかを確認し、適切な対応を取ることが重要です。

品目ごとの規制を理解することで、より効率的に輸出準備を進めることができます。また、複数の品目を扱う場合は、それぞれの要件を整理し、計画的に手続きを進めることで、コストと時間の節約につながります。

水産物の輸出規制と必要な証明書

水産物は日本の主要な輸出品目の一つであり、EUへの輸出実績も豊富です。ただし、厳格な衛生管理と証明書の取得が必要となります。

水産物をEUに輸出する場合、まず製造・加工施設が農林水産省の動物検疫所によるEU認定を取得している必要があります。これには、漁船、養殖場、加工施設、冷凍・冷蔵施設などが含まれます。施設は、HACCPに基づく衛生管理を実施し、温度管理、交差汚染防止、トレーサビリティの確保などの要件を満たさなければなりません。

輸出の都度、動物検疫所に衛生証明書の発行を申請します。証明書には、製品の詳細情報、製造施設の認定番号、漁獲海域、製造日、保存温度などが記載されます。検査官による現物検査が行われ、製品の状態、温度管理の記録、ラベル表示などが確認されます。

養殖魚の場合は、使用した動物用医薬品の記録も重要です。EUでは使用が認められていない薬品が残留していると、輸入が拒否される可能性があります。養殖段階から、使用する薬品の管理と記録を徹底する必要があります。

また、水産物には重金属(特に水銀)の基準が厳しく適用されます。大型の魚種(マグロ、カジキなど)は水銀濃度が高くなりやすいため、定期的な検査と記録が求められます。

牛肉・家きん肉の輸出要件

牛肉や鶏肉などの食肉類のEU輸出は、最も厳格な規制が適用される品目の一つです。現在、日本からEUへの牛肉輸出は限定的で、特定の条件を満たした施設からのみ可能となっています。

食肉の輸出には、と畜場と食肉処理施設の両方がEU認定を受けている必要があります。施設の構造、設備、衛生管理体制がEUの詳細な基準を満たしていることが求められます。また、と畜前の家畜の健康状態、飼育履歴、使用した飼料や動物用医薬品の記録なども管理する必要があります。

衛生証明書は、厚生労働省の食肉衛生検査所が発行します。証明書には、と畜場と処理施設の認定番号、家畜の個体識別情報、獣医師による検査結果などが記載されます。食肉は微生物汚染のリスクが高いため、製造から輸送まで一貫した低温管理が不可欠です。

BSE(牛海綿状脳症)対策も重要な要件です。特定危険部位の除去、検査体制の整備など、EUが求める基準を満たす必要があります。また、成長ホルモンの使用は厳しく禁止されているため、飼育段階からの管理が重要です。

家きん肉(鶏肉、七面鳥肉など)についても同様に厳格な要件があります。鳥インフルエンザなどの感染症が発生した地域からの輸出は一時停止されることがあるため、常に最新の情報を確認する必要があります。

青果物の輸出における植物検疫

野菜や果物などの青果物は、植物検疫の観点から規制されます。EUへの輸出には、病害虫が付着していないことを証明する植物検疫証明書が必要です。

植物検疫証明書は、農林水産省の植物防疫所が発行します。輸出前に、検査官が製品を目視検査し、必要に応じてサンプルを採取して詳細検査を行います。害虫や病気の兆候が見られないことが確認されると、証明書が発行されます。

青果物の場合、残留農薬の基準も非常に重要です。EUの基準は日本よりも厳しいことが多いため、栽培段階から使用する農薬の選定と管理に注意が必要です。特に、EUで使用が認められていない農薬は絶対に使用しないよう、生産者と密に連携することが重要です。

また、土が付着した状態での輸出は原則として認められません。根菜類などを輸出する場合は、十分に洗浄し、土を完全に除去する必要があります。包装材料も清潔で、害虫の侵入を防げるものを使用します。

有機栽培の青果物を輸出する場合は、有機認証の手続きも必要です。日本の有機JAS認証を取得していれば、EUとの同等性協定により、EU市場でも有機製品として販売できる可能性があります。

加工食品(調味料・飲料など)の規制

醤油、味噌、緑茶、日本酒などの伝統的な日本の加工食品は、EU市場でも人気が高まっています。これらの製品の輸出には、製品の種類に応じた規制への対応が必要です。

完全に植物性の加工食品(例:純粋な醤油、植物油、緑茶)は、比較的簡素な手続きで輸出できます。施設のEU認定は不要で、輸出の都度の証明書取得も必要ない場合が多いです。ただし、製品がEUの食品安全基準(残留農薬、添加物、重金属など)を満たしていることは必須です。

動物性原材料を含む調味料やスープ製品は、前述の混合食品規制が適用されます。使用する動物性原料の種類と量に応じて、必要な証明書が異なります。例えば、かつお節エキス入りの製品は、使用するエキスの含有量や製造方法によって、公的証明書が必要な場合と自己宣誓書で対応できる場合があります。

アルコール飲料(日本酒、焼酎、梅酒など)には、食品規制に加えてアルコール飲料特有の規制が適用されます。ラベルには、アルコール度数の表示が必須で、一部の加盟国では追加の税金や登録手続きが必要になることがあります。

飲料類(緑茶、ジュース、清涼飲料水など)は、使用する水の品質基準、容器の材質基準、保存料や着色料などの添加物規制に注意が必要です。特にペットボトルなどのプラスチック容器を使用する場合は、容器からの物質移行に関する基準を満たす必要があります。

加工食品全般に共通する重要な点として、トレーサビリティの確保があります。原材料の調達先、製造日、ロット番号などを記録し、問題が発生した際に迅速に追跡できる体制を整えることが求められます。

EU食品輸出で失敗しないための実務ポイント

EU市場への食品輸出を成功させるためには、規制や手続きの理解だけでなく、実務面での注意点を押さえることが重要です。ここでは、実際に輸出を進める際に役立つ実践的なポイントを紹介します。

多くの企業が輸出開始後に直面する課題は、事前の準備不足や情報収集の不十分さから生じています。これらの課題を未然に防ぐために、先行企業の経験や専門家のアドバイスを参考にすることが有効です。

輸出計画を立てる前に確認すべきチェックリスト

EU輸出を本格的に検討する前に、以下の項目を確認しておくことで、スムーズな計画立案が可能になります。

まず、製品の市場性を調査します。EU市場での類似製品の販売状況、価格帯、消費者の嗜好などを把握します。現地の日本食品店やオンラインショップで販売されている製品を調べ、自社製品の競争力を評価します。

次に、自社製品がEU基準を満たしているか初期評価を行います。原材料リストを作成し、使用している添加物や農薬がEUで認可されているか確認します。必要に応じて、専門の分析機関に製品検査を依頼し、残留農薬や重金属などの基準適合性を確認します。

製造施設の現状評価も重要です。動物性原材料を使用する場合、施設がEU認定を取得できる水準にあるか、改修が必要な箇所はないかをチェックします。HACCPに基づく衛生管理が適切に実施されているか、記録が整備されているかも確認ポイントです。

輸出にかかるコストの見積もりも欠かせません。施設改修費、認定取得費用、証明書発行手数料、検査費用、輸送費、関税、現地での流通マージンなどを積み上げ、採算が取れるか検討します。初期投資が大きい場合は、段階的な市場参入や補助金の活用も検討します。

また、輸出に必要な期間も把握しておきます。施設認定の取得に6ヶ月〜1年、製品テストやラベル作成に数ヶ月、輸入業者との契約交渉に数ヶ月など、全体で1〜2年程度の準備期間が必要になることも珍しくありません。

パートナー(輸入業者・物流業者)の選び方

EU市場での成功には、信頼できる現地パートナーの存在が不可欠です。適切なパートナーを選ぶことで、市場参入がスムーズになり、長期的なビジネス関係を築くことができます。

輸入業者を選ぶ際は、まずその業者の取扱実績を確認します。日本食品の輸入経験があるか、類似製品を扱っているか、販売ルート(小売店、レストラン、オンライン販売など)を持っているかをチェックします。可能であれば、既に取引している日本企業から評判を聞くことも有効です。

輸入業者との契約では、販売エリア(独占販売権の範囲)、最低発注量、支払条件、在庫リスクの負担、マーケティング支援の内容などを明確にします。特に、初期段階では在庫リスクを業者が負担するコンサインメント販売(委託販売)の形態を検討することも一つの選択肢です。

物流業者の選定も重要です。食品輸送の経験が豊富で、温度管理が必要な製品に対応できる業者を選びます。また、通関手続きのサポート、保税倉庫の利用、配送ネットワークの充実度なども確認ポイントです。日本からEU向けの輸出実績が多い物流業者であれば、規制対応についてのアドバイスも得られます。

ジェトロ(日本貿易振興機構)は、海外の輸入業者とのマッチング支援や、現地での商談会開催など、様々なサービスを提供しています。こうした公的支援を活用することで、信頼できるパートナーを見つけやすくなります。また、現地の日本大使館や商工会議所からの情報収集も有効です。

パートナー候補が見つかったら、まず小規模なテスト取引から始めることをお勧めします。少量の製品を輸出し、実際の手続きや物流の流れを確認することで、本格的な取引開始前に問題点を洗い出すことができます。

よくあるトラブル事例と対処法

EU向け食品輸出では、様々なトラブルが発生する可能性があります。代表的な事例と対処法を知っておくことで、問題発生時に適切に対応できます。

最も多いトラブルの一つが、通関時の書類不備です。衛生証明書の記載ミス、商業送り状との内容の不一致、ラベル表示の不備などがあると、貨物が留め置かれてしまいます。対処法としては、出荷前に複数の担当者で書類をクロスチェックすることです。特に、製品名、重量、施設認定番号などの数字や固有名詞は慎重に確認します。

検査での基準値超過も深刻な問題です。残留農薬や重金属が基準を超えて検出されると、貨物の返送または廃棄を命じられることがあります。予防策として、輸出前に日本国内で検査を実施し、基準適合を確認しておくことが重要です。定期的に検査を行い、製造工程に問題がないか監視することも有効です。

ラベル表示の不適合も頻繁に発生します。アレルゲン表示の漏れ、栄養成分値の誤り、現地語への翻訳ミスなどが典型例です。ラベル作成時には、EU規制に詳しい専門家やネイティブスピーカーによるチェックを受けることをお勧めします。また、初回輸出時には現地当局による確認を受け、問題がないことを確認してから本格的な輸出を開始するのが安全です。

温度管理の不備による品質劣化も注意が必要です。輸送中や保管中に適切な温度が維持されないと、製品が劣化したり、微生物が増殖したりする可能性があります。信頼できる物流業者を選び、温度記録装置を活用して輸送中の温度を監視することが重要です。

現地での商品回転率が低く、賞味期限切れが発生するケースもあります。これは市場調査不足や過剰な初期発注が原因です。対処法として、最初は少量から始め、実際の販売動向を見ながら徐々に発注量を増やすアプローチが推奨されます。

コスト・期間の目安と資金計画

EU輸出にかかるコストと期間を事前に把握し、適切な資金計画を立てることが、ビジネスの成功には不可欠です。

施設のEU認定取得には、施設の現状によって大きく費用が異なりますが、新たな設備投資が必要な場合、数百万円から場合によっては数千万円規模の投資が必要になることがあります。既存施設の一部改修で対応できる場合は、比較的低コストで済むこともあります。認定申請の手数料自体は数万円程度ですが、コンサルタントを活用する場合は別途費用が発生します。

製品検査費用も継続的にかかります。残留農薬、重金属、微生物などの検査を専門機関に依頼すると、1製品あたり数万円から十数万円程度が一般的です。定期的な検査を行う場合、年間で数十万円のコストを見込む必要があります。

証明書発行手数料は、1回の輸出あたり数千円から数万円程度です。輸出頻度が高い場合、年間で相当な額になります。また、ラベルデザインや翻訳の費用も初期投資として必要で、専門業者に依頼すると数十万円かかることがあります。

輸送費は、輸送方法(航空便か海上便か)、製品の重量・容積、温度管理の要否などによって大きく変わります。少量の高付加価値製品であれば航空便が、大量の製品であれば海上便が適しています。輸送費に加えて、保険料、通関手数料、現地での配送費なども考慮が必要です。

関税は製品の種類によって異なり、0%から20%以上まで幅があります。日本とEUの間には経済連携協定(EPA)があり、多くの食品で関税が削減または撤廃されていますが、適用を受けるには原産地証明書の取得など追加の手続きが必要です。

期間については、施設認定の取得に6ヶ月〜1年、製品開発やテストに数ヶ月、輸入業者との契約交渉に数ヶ月、実際の輸送に航空便で数日〜1週間、海上便で1〜2ヶ月程度を見込みます。全体として、輸出を決定してから実際に製品が現地で販売されるまで、1〜2年程度の期間を要することが一般的です。

資金計画を立てる際は、これらの初期投資と運転資金に加えて、予期せぬ追加コストへの備えとして、全体予算の10〜20%程度の予備費を確保しておくことをお勧めします。また、売上の回収までに時間がかかることを考慮し、十分なキャッシュフローを確保することも重要です。

農林水産省やジェトロが提供する輸出促進のための補助金制度もありますので、こうした支援制度の活用も検討するとよいでしょう。補助金の申請には一定の条件と手続きが必要ですが、初期投資の負担を軽減する有効な手段となります。

EU食品輸出規制を理解して着実に市場参入を実現しよう

ここまで、EU食品輸出規制の全体像から、具体的な手続き、品目別の要件、実務上のポイントまで詳しく解説してきました。EUの規制は確かに厳格ですが、一つひとつの要件を理解し、計画的に準備を進めることで、中小規模の事業者でも十分に対応可能です。

EU市場は人口約4.5億人を擁する巨大な市場であり、日本食品への関心も年々高まっています。特に、健康志向の高まりや日本文化への興味から、伝統的な日本食品や高品質な食材への需要が拡大しています。適切な準備と戦略をもってアプローチすれば、大きなビジネスチャンスが広がっています。

最初は複雑に感じられるEU規制も、実際に取り組んでみると、段階的に理解が深まっていきます。一度輸出の仕組みを構築すれば、2回目以降はよりスムーズに進められるようになります。また、EU市場での実績は、他の海外市場への展開にも活かすことができます。

輸出準備を進める際は、決して一人で抱え込まず、利用できる支援やリソースを最大限活用することが成功の鍵です。ジェトロ、農林水産省、各地の商工会議所、業界団体など、多くの機関が輸出支援サービスを提供しています。専門家のアドバイスを受けながら、着実に準備を進めましょう。

また、同じ業界で既にEU輸出を実現している企業から学ぶことも非常に有効です。業界団体のセミナーや商談会に参加することで、貴重な情報やネットワークを得ることができます。

EU食品輸出は、確かにハードルが高い挑戦です。しかし、適切な知識と準備、そして粘り強い取り組みによって、必ず実現できる目標でもあります。本記事で解説した内容を参考に、ぜひEU市場への第一歩を踏み出してください。皆様のEU輸出ビジネスの成功を心より応援しています。