日本政府が掲げる食品輸出5兆円という目標について、具体的な達成時期や市場規模の推移を把握したいとお考えではありませんか?食品メーカーの経営企画を担当される方にとって、輸出市場の成長性や政府の支援策は事業計画に欠かせない重要な情報です。
本記事では、農林水産省が策定した2030年までの実行戦略の全容から、2024年の最新輸出実績データ、品目別・地域別の市場動向まで詳しく解説します。さらに、輸出事業者が実際に活用できる補助金や助成金の種類、申請方法についても具体的にご紹介しています。
この記事を読むことで、食品輸出5兆円目標達成に向けた政府の道筋が明確になり、自社の輸出戦略立案や事業計画策定に必要な定量データと支援制度の情報を一度に入手できます。輸出ビジネスの可能性を最大限に活かすための実践的な知識が得られるでしょう。

食品輸出5兆円目標とは?2030年に向けた政府の方針

日本政府は2030年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円にするという大きな目標を掲げています。この目標は、日本の農業や食品産業を成長産業として位置づけ、海外市場での競争力を高めることを目的としたものです。現在、日本の食品輸出額は年々増加していますが、5兆円という目標達成にはさらなる取り組みが必要とされています。

農林水産省を中心に、政府は「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」を策定し、具体的な施策を進めています。この戦略では、輸出に適した産地づくりや、海外の規制に対応した認証取得の支援、さらには海外でのプロモーション強化など、多岐にわたる取り組みが計画されています。単に輸出額を増やすだけでなく、持続的に成長できる仕組みづくりを目指しているのが特徴です。

食品メーカーの経営企画担当者にとって、この政府目標は自社の輸出戦略を考える上で重要な指標となります。政府の方針を理解することで、どのような分野に商機があるのか、どのような支援が受けられるのかが見えてきます。

5兆円目標が設定された背景と経緯

5兆円という目標が設定された背景には、日本の人口減少と国内市場の縮小という課題があります。国内の食品市場は少子高齢化の影響で今後縮小していくことが予測されており、食品産業が成長を続けるためには海外市場の開拓が不可欠だと考えられています。一方で、世界的には人口増加や経済成長により、食品需要は拡大し続けています。特にアジア諸国では中間層の拡大により、安全で高品質な日本産食品への需要が高まっています。

政府は当初、2019年に「2025年までに農林水産物・食品の輸出額を5兆円にする」という目標を設定していました。しかし、新型コロナウイルスの影響や世界経済の変動などを考慮し、目標年次を2030年に見直しました。この見直しは単なる先送りではなく、より実現可能で持続的な成長を目指すための戦略的な判断だったと言えます。

また、日本の食品は世界的に「安全」「高品質」「おいしい」というイメージが定着しつつあります。和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも、日本食への関心を高める要因となりました。こうした追い風を活かし、日本の強みを海外市場で展開することが、5兆円目標の実現につながると期待されています。

目標達成に向けたスケジュールと中間目標

5兆円という大きな目標を達成するため、政府は段階的なスケジュールを設定しています。2025年には2兆円、2030年には5兆円という中間目標を掲げ、着実に輸出額を増やしていく計画です。この段階的なアプローチにより、各段階で施策の効果を検証し、必要に応じて戦略を修正することが可能になります。

具体的には、2025年までの期間を「基盤づくりの期間」と位置づけています。この期間では、輸出に対応できる産地の育成や、海外の規制に適合した施設の整備、輸出事業者の組織化などを重点的に進めます。例えば、HACCP(食品衛生管理の国際基準)に対応した施設の整備や、EU向け輸出に必要な認定施設の拡大などが進められています。

2025年から2030年にかけては、「拡大・定着の期間」として、構築した基盤を活用して輸出を本格的に拡大します。この期間では、海外市場での販路拡大や、ブランド力の強化、新たな輸出先国の開拓などに力を入れます。また、輸出に成功した事例を他の事業者にも横展開し、産業全体の底上げを図る取り組みも計画されています。

対象となる食品カテゴリーと重点品目

5兆円目標の達成に向けて、政府はすべての食品を均等に扱うのではなく、特に輸出拡大が期待できる品目を「重点品目」として選定しています。現在、27の品目が重点品目に指定されており、それぞれに具体的な輸出目標額と戦略が設定されています。

重点品目の中でも特に注目されているのが、牛肉、米・米加工品、日本酒、水産物(ホタテ、ブリなど)です。牛肉については、和牛のブランド価値を活かし、高級レストランや富裕層をターゲットとした戦略が進められています。米については、日本食レストランの増加に伴う需要増加を見込み、炊飯米だけでなく、米粉や日本酒の原料としての輸出拡大も目指しています。

また、加工食品の分野では、調味料(醤油、味噌など)、菓子類、即席麺、レトルト食品なども重点品目に含まれています。これらは日持ちがしやすく輸送に適していることに加え、海外での日本食ブームにより需要が拡大しています。さらに、果物(りんご、ぶどう、いちごなど)や茶、花きなども重点品目として輸出拡大が進められています。

重点品目以外の食品についても、輸出の可能性があれば支援の対象となります。政府は重点品目を軸としながらも、地域の特産品や新たな商品の輸出にも柔軟に対応する姿勢を示しています。

食品輸出の現状と実績データ

日本の食品輸出は近年、着実に成長を続けています。政府の積極的な支援策や、海外での日本食ブームの影響もあり、輸出額は右肩上がりで推移しています。ただし、5兆円という目標を達成するためには、現在のペースをさらに加速させる必要があります。

輸出実績を品目別や国・地域別に詳しく見ていくと、どの分野が伸びているのか、どの地域に需要があるのかが明確になります。こうしたデータは、食品メーカーが輸出戦略を立てる際の重要な判断材料となります。市場の動向を正確に把握することで、自社の強みを活かせる分野や地域を見つけることができます。

また、現在の達成率と課題を理解することで、今後どのような取り組みが必要なのかも見えてきます。データに基づいた戦略立案が、輸出ビジネスの成功につながります。

2024年の食品輸出額と前年比推移

2024年の日本の農林水産物・食品の輸出額は、約1兆5000億円に達し、過去最高を記録しました。前年の2023年と比較すると、約8%の増加となっています。この成長は、円安の追い風や、海外での日本食需要の拡大、そして政府の輸出促進策が功を奏した結果だと言えます。

過去10年間の推移を見ると、輸出額は一貫して増加傾向にあります。2015年には約7000億円だった輸出額が、2024年には倍以上に成長しました。特に2020年以降は、新型コロナウイルスの影響で一時的に減速したものの、2021年から再び力強い回復を見せています。オンライン販売の拡大や、家庭での調理需要の増加なども、輸出増加を後押ししました。

ただし、2025年の中間目標である2兆円まではまだ約5000億円の開きがあります。年平均で10%以上の成長を続けなければ、目標達成は難しい状況です。そのため、政府も民間企業も、より効果的な輸出促進策を模索し続けています。

品目別の輸出実績ランキング

2024年の品目別輸出額を見ると、上位には加工食品や水産物が並んでいます。第1位はアルコール飲料で、特に日本酒とウイスキーが高い伸びを示しています。日本酒の輸出額は約500億円を超え、世界的な和食ブームと相まって人気が高まっています。特に中国、アメリカ、香港などの市場で需要が拡大しています。

第2位は水産物で、ホタテやブリ、マグロなどが主力商品となっています。ホタテは中国向けの輸出が大きな割合を占めていましたが、最近では東南アジアや欧米市場への輸出も増加しています。養殖技術の向上により、安定した供給が可能になったことも輸出増加の要因です。

第3位以降には、牛肉、米・米加工品、調味料、菓子類などが続きます。和牛は高級食材として欧米や中東で高い評価を得ており、輸出額は年々増加しています。米については、日本食レストランの増加に伴い、特にアメリカや香港での需要が伸びています。また、意外なところでは、カレールウやインスタントラーメンなどの即席食品も、アジア諸国を中心に人気が高まっています。

果物では、いちご、ぶどう、りんごなどが輸出されており、特に高級品種は富裕層向けのギフト市場で好調です。茶類も、抹茶ブームの影響で欧米での需要が拡大しています。

国・地域別の輸出先と市場動向

輸出先を国・地域別に見ると、アジア地域が全体の約7割を占めています。中でも中国は最大の輸出先であり、全体の約4分の1を占めています。中国向けには、水産物、アルコール飲料、菓子類などが主に輸出されています。ただし、中国は政治的な理由で輸入規制を強化することもあるため、リスク分散の観点から他の市場開拓も重要視されています。

香港は第2位の輸出先で、中国本土への中継地点としての役割も果たしています。香港では日本食レストランが多く、食材全般への需要が高い状況です。台湾も重要な市場で、地理的な近さと日本食への親近感から、幅広い品目が輸出されています。

アメリカは非アジア圏では最大の輸出先です。日本食レストランの数が増加しており、食材需要も拡大しています。特に西海岸の都市部では、日本食が日常的な食事の選択肢として定着しつつあります。ヨーロッパでは、EU圏への輸出が増加傾向にあります。健康志向の高まりにより、日本食への関心が高まっているためです。

東南アジア諸国も成長市場として注目されています。経済成長に伴う中間層の拡大により、日本産食品への需要が高まっています。特にタイ、シンガポール、ベトナムなどでは、日本食レストランが増加し、食材需要も伸びています。

5兆円目標に対する達成率と課題

現在の輸出額1兆5000億円は、2030年目標の5兆円に対して30%の達成率となります。2025年の中間目標2兆円に対しては75%の達成率です。数字だけを見ると順調に見えますが、目標達成のためには今後さらにペースを上げる必要があります。

最大の課題の一つは、輸出先国の規制への対応です。各国には独自の食品安全基準や検疫規則があり、これらに適合するためには施設の整備や認証の取得が必要になります。例えば、EU向けに食品を輸出するには、EU が認定した施設で製造される必要があります。こうした施設の整備には時間とコストがかかるため、中小企業にとっては大きなハードルとなっています。

また、物流コストの上昇も課題となっています。新鮮な食材を海外に届けるには、コールドチェーン(低温物流)の確保が必要ですが、これには通常の輸送よりも高いコストがかかります。特に遠隔地への輸出では、物流コストが商品価格に大きく影響してしまいます。

さらに、海外市場でのブランド力の構築も重要な課題です。日本産食品は「高品質」というイメージがある一方で、価格が高いというイメージもあります。価格競争力を維持しながら、品質の高さをアピールしていくバランスが求められています。

農林水産省が策定した「食品輸出拡大実行戦略」の全容

農林水産省は5兆円目標の達成に向けて、「農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略」という具体的な行動計画を策定しています。この戦略は単なる目標の羅列ではなく、具体的な施策とスケジュールが明確に示されています。戦略の最大の特徴は、官民が一体となって取り組むという点です。

政府が環境整備を行い、民間企業が実際のビジネスを展開するという役割分担が明確になっています。また、戦略は定期的に見直されており、市場環境の変化や施策の効果を検証しながら、必要に応じて修正が加えられています。この柔軟性が、実効性の高い戦略となっている理由です。

食品メーカーにとって、この実行戦略を理解することは、政府の支援をどのように活用できるかを知る上で非常に重要です。戦略に沿った事業展開を行うことで、補助金や支援サービスを効果的に利用できる可能性が高まります。

実行戦略の3つの柱と具体的施策

実行戦略は大きく3つの柱で構成されています。第1の柱は「マーケットイン輸出への転換」です。これまでの日本の輸出は、国内で余った農産物を海外に売るという「プロダクトアウト」の発想が中心でした。しかし、これでは継続的な輸出拡大は困難です。そこで、海外市場のニーズを把握し、それに合わせた生産や商品開発を行う「マーケットイン」の考え方に転換することを目指しています。

具体的には、海外バイヤーや消費者の声を聞き、求められる品質や価格、パッケージなどを研究します。また、現地の食文化や嗜好に合わせた商品開発も推進されています。例えば、中国市場では大きめのサイズが好まれるため、果物のサイズを調整するといった取り組みが行われています。

第2の柱は「輸出に取り組む事業者の育成・展開支援」です。輸出を行うには、通関手続きや海外の規制への対応など、専門的な知識が必要になります。そこで、輸出に取り組む事業者を支援するため、各種の研修プログラムや専門家による個別相談サービスが提供されています。

また、複数の生産者や加工業者が連携して輸出に取り組む「輸出産地」の形成も支援されています。単独では難しい大規模な輸出を、複数の事業者が協力することで実現しようという取り組みです。実際に、いくつかの地域では輸出産地の指定を受け、集中的な支援を受けています。

第3の柱は「輸出のための環境整備」です。これには、海外の規制に対応した施設の整備、輸出先国との協議による規制の緩和、動植物検疫の円滑化などが含まれます。特に重要なのが、輸出先国の食品安全基準をクリアした施設の拡大です。政府は、HACCP 対応施設の整備や、EU 認定施設の拡大などを支援しています。

輸出促進に向けた規制緩和と制度改正

輸出を拡大するためには、輸出先国の規制に適合することが不可欠です。農林水産省は、各国政府との協議を通じて、規制の緩和や撤廃を働きかけています。例えば、福島第一原発事故後に設けられた食品の輸入規制について、科学的根拠に基づいて撤廃を求める交渉を続けてきました。その結果、多くの国で規制が緩和または撤廃されています。

また、輸出先国との間で、食品安全に関する相互認証の仕組みを構築する取り組みも進められています。これは、日本の食品安全基準が輸出先国でも認められるようにすることで、個別の検査や認証を簡素化しようというものです。EU との間では、有機食品の同等性に関する合意が結ばれ、日本の有機 JAS 認証を受けた農産物が EU でも有機食品として販売できるようになりました。

国内の制度改正も進められています。例えば、輸出証明書の発行手続きを電子化し、オンラインで申請できるようにする取り組みが行われています。これにより、事業者の事務負担が軽減され、輸出手続きのスピードアップが図られています。

さらに、輸出用の特別な生産基準や加工基準の整備も進められています。輸出先国の要求に応えるため、残留農薬基準や添加物の使用基準などを明確化し、生産者や加工業者が対応しやすい環境を整えています。

官民一体での海外販売力強化の取り組み

海外での販売力を強化するため、政府と民間企業が協力してプロモーション活動を展開しています。農林水産省は「日本産品の魅力を海外に伝える」ことを重視し、各国での展示会への出展支援や、現地でのプロモーションイベントの開催などを行っています。

JETRO(日本貿易振興機構)も、海外でのビジネスマッチングや、現地バイヤーとの商談会の開催など、実践的な支援を提供しています。これらのイベントでは、日本の食品メーカーが直接海外のバイヤーと商談できる機会が設けられており、多くの商談が成立しています。

また、「日本食品海外プロモーションセンター(JFOODO)」という組織が、日本産食品全体のブランディングやプロモーションを戦略的に展開しています。JFOODO は、特定の品目(和牛、水産物、日本酒など)に焦点を当て、統一的なメッセージで海外市場にアピールする活動を行っています。

インターネットを活用したプロモーションも強化されています。SNS を使った情報発信や、EC サイトでの販売促進など、デジタルマーケティングの手法も積極的に取り入れられています。特にコロナ禍以降、オンラインでの販売が急拡大しており、この流れを後押しする支援策も展開されています。

食品輸出事業者が活用できる補助金・助成金制度

食品輸出に取り組む事業者にとって、資金面での支援は大きな助けとなります。政府は輸出促進のため、さまざまな補助金や助成金制度を用意しています。これらの制度を活用することで、輸出に必要な設備投資や、海外でのプロモーション活動などのコストを軽減できます。

補助金や助成金は、用途や対象者によって多くの種類があります。施設整備に使えるもの、マーケティング活動に使えるもの、認証取得に使えるものなど、目的に応じて選択できます。ただし、それぞれの制度には申請条件や審査基準があり、必ずしもすべての企業が利用できるわけではありません。

効果的に補助金を活用するためには、自社の事業計画に合った制度を選び、申請書類をしっかりと準備することが重要です。また、補助金は公募期間が限られていることが多いため、情報収集を怠らないことも大切です。

農林水産省の主要な支援プログラム

農林水産省は、輸出拡大を目指す事業者向けに複数の支援プログラムを用意しています。代表的なものが「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備事業」です。この事業は、輸出先国の衛生基準に対応した施設を整備する際の費用を補助するものです。補助率は通常2分の1で、上限額は設定されていますが、大規模な設備投資にも対応できる制度となっています。

「農畜産物輸出拡大施設整備事業」も重要な支援策です。これは、輸出に対応した集出荷施設や加工施設、貯蔵施設などの整備を支援するものです。例えば、コールドチェーンに対応した保冷施設や、輸出用の選別・梱包ラインの整備などに活用できます。

また、「日本産品の輸出促進緊急対策事業」という、海外でのプロモーション活動を支援する制度もあります。展示会への出展費用、現地でのプロモーションイベントの開催費用、マーケティング調査費用などが補助対象となります。特に新規で輸出に取り組む事業者にとっては、市場開拓の初期コストを抑えられる有効な制度です。

「食品産業の輸出向けHACCP等対応施設整備緊急対策事業」では、既存施設の改修費用も補助対象となります。新規の建設だけでなく、既存施設を輸出対応にアップグレードする場合にも活用できるため、中小企業でも利用しやすい制度となっています。

JETROによる輸出支援サービス

JETRO(日本貿易振興機構)は、輸出を目指す企業に対して幅広い支援サービスを提供しています。JETRO の最大の強みは、世界各地に設置された海外事務所のネットワークです。現地の市場情報や規制情報を収集し、日本の企業に提供しています。

JETRO の代表的なサービスとして、「輸出有望案件発掘支援」があります。これは、輸出の可能性がある商品を持つ企業を発掘し、海外バイヤーとのマッチングを支援するものです。JETRO のスタッフが商品の魅力を評価し、適切な市場や販路を提案してくれます。

「ジャパンモール事業」も人気の高いサービスです。これは、海外の EC サイトに日本産食品の特設コーナーを設け、オンライン販売を支援する取り組みです。中国やタイ、シンガポールなどの主要 EC サイトと提携し、出品から決済、物流までを一貫してサポートしています。

また、JETRO は海外での商談会や展示会の開催も行っています。「日本産食品輸出商談会」では、海外のバイヤーを日本に招いて商談の機会を提供しています。これにより、日本の企業は海外に行かずとも、海外バイヤーと直接商談できます。商談会では通訳も配置されるため、語学力に不安がある企業でも参加しやすくなっています。

さらに、JETRO は輸出に関する各種セミナーや研修も開催しています。輸出の基礎知識から、国別の市場情報、実務的な手続きの方法まで、幅広いテーマで学ぶことができます。

補助金の申請条件と申請方法

補助金を申請する際には、いくつかの基本的な条件を満たす必要があります。まず、多くの補助金では「輸出実績がある、または具体的な輸出計画がある」ことが求められます。単なる希望や興味だけでは申請できず、実現可能性のある事業計画を示す必要があります。

また、補助金の対象となる事業者の要件も確認が必要です。法人であることが条件の場合もあれば、個人事業主でも申請できる場合もあります。さらに、事業規模(従業員数や資本金)による制限がある場合もあります。中小企業を対象とした補助金では、大企業は申請できないケースが一般的です。

申請方法は、多くの場合オンラインでの申請となっています。農林水産省や JETRO のウェブサイトから申請書類をダウンロードし、必要事項を記入して提出します。申請書には、事業計画書、収支計画書、会社概要などの書類を添付する必要があります。

事業計画書では、「なぜ輸出に取り組むのか」「どのような商品を、どの市場に、どのように販売するのか」を具体的に説明することが求められます。また、補助金を使ってどのような成果を上げるのか、数値目標も含めて示す必要があります。説得力のある事業計画書を作成することが、採択される鍵となります。

申請後は審査が行われ、採択された事業者のみが補助金を受けられます。審査では、事業の実現可能性、費用の妥当性、輸出拡大への貢献度などが評価されます。競争率の高い補助金では、しっかりとした準備が必要です。

補助金を受けた後は、定期的に進捗報告を行い、事業完了後には成果報告書を提出する必要があります。また、補助金で取得した設備などは、一定期間処分が制限される場合もあります。こうした条件も事前に確認しておくことが大切です。

食品輸出5兆円達成に向けた今後の展望と企業の対応策

5兆円という目標の達成は決して容易ではありませんが、いくつかの追い風要因もあります。世界的な健康志向の高まりや、日本食への関心の拡大は、日本産食品にとって大きなチャンスです。また、アジア諸国の経済成長により、購買力のある中間層が増加していることも市場拡大の要因となります。

一方で、国際情勢の不安定さや、為替変動、各国の保護主義的な政策など、リスク要因も存在します。こうした環境の中で、食品メーカーがどのような戦略を取るかが、今後の成否を分けることになります。

政府の支援策を活用しながら、自社の強みを活かした独自の輸出戦略を構築することが重要です。また、先行企業の成功事例から学び、自社の取り組みに活かすことも効果的なアプローチとなります。

2030年までの市場予測と成長機会

2030年に向けて、食品輸出市場は大きな成長が期待されています。特にアジア地域では、人口増加と経済成長が続くことで、食品需要が拡大すると予測されています。中国やインド、東南アジア諸国では、中間層の拡大により、高品質な食品への需要が高まっています。

品目別では、加工食品と高付加価値農産物の成長が見込まれています。調味料や即席麺などの加工食品は、海外での日本食レストランの増加により、業務用需要が拡大しています。また、家庭での日本食調理の広がりにより、小売向けの需要も増えています。

高級果物や和牛などの高付加価値農産物は、富裕層向けの市場で成長が期待されています。特に中東やヨーロッパでは、日本産の高級食材への関心が高まっています。これらの市場では、価格よりも品質や希少性が重視されるため、日本の強みを活かせる分野だと言えます。

また、健康食品やオーガニック食品の分野も成長が予想されます。世界的な健康志向の高まりにより、日本の伝統的な発酵食品(味噌、醤油、納豆など)や、機能性食品への注目が集まっています。

オンライン販売の拡大も重要なトレンドです。EC サイトを通じた食品の国際取引は年々増加しており、今後もこの傾向は続くと見られています。特に若い世代は、オンラインで海外の食品を購入することに抵抗がなく、新たな販路として期待されています。

食品メーカーが取るべき輸出戦略

食品メーカーが輸出を成功させるためには、まず自社の強みを明確にすることが重要です。すべての市場、すべての商品で勝負するのではなく、自社が優位性を持つ分野に集中することが効果的です。例えば、伝統的な製法を持つ企業であれば、その独自性を前面に出したブランディングが有効です。

次に、ターゲット市場を絞り込むことが大切です。世界中すべての国に輸出しようとするのではなく、自社の商品が受け入れられやすい市場を選択します。市場調査を行い、現地の食文化や消費者の嗜好、競合状況などを把握した上で、進出先を決定します。

現地パートナーとの連携も成功の鍵となります。海外市場では、現地の商習慣や流通システムを理解している現地企業と提携することが効果的です。輸入代理店やディストリビューターとの良好な関係を構築し、現地での販売網を確保することが重要です。

商品開発においては、現地のニーズに合わせたカスタマイズも検討すべきです。味付けやパッケージサイズ、賞味期限など、現地市場の要求に応じた調整を行うことで、受け入れられやすくなります。ただし、日本らしさを失わない範囲でのカスタマイズを心がけることも大切です。

認証取得や規制対応は避けて通れない課題です。輸出先国の要求する認証(HACCP、ハラル、コーシャなど)を取得することで、市場参入の障壁を下げることができます。時間とコストはかかりますが、長期的な輸出を考えると必要な投資だと言えます。

デジタルマーケティングの活用も重要です。SNS を使った情報発信や、インフルエンサーとのコラボレーション、EC サイトでの販売など、デジタルツールを効果的に使うことで、コストを抑えながら市場開拓ができます。

輸出拡大の成功事例と学ぶべきポイント

実際に輸出で成功している企業の事例から、多くの学びを得ることができます。ある日本酒メーカーは、アメリカ市場で大きな成功を収めています。この企業は、単に日本酒を輸出するだけでなく、現地で日本酒の啓蒙活動を積極的に行いました。レストランでのテイスティングイベントや、日本酒と料理のペアリング提案など、日本酒の楽しみ方を現地の消費者に伝える活動を続けた結果、ファンベースを拡大することに成功しました。

ある水産加工会社は、東南アジア市場で急成長を遂げています。この企業の成功の秘訣は、現地の食文化を深く研究し、それに合わせた商品開発を行ったことです。例えば、タイ市場では辛味を好む消費者が多いことを踏まえ、スパイシーな味付けの水産加工品を開発しました。現地のニーズに応えることで、市場シェアを拡大しています。

果物の輸出で成功している産地もあります。ある地域では、複数の生産者が協力して輸出組合を結成し、品質管理を徹底しました。輸出向けの果物は特別な基準で栽培・選別され、高品質を維持しています。また、輸出先国での商標登録も行い、ブランド保護にも力を入れています。その結果、高価格帯でも安定した需要を獲得しています。

これらの成功事例に共通するのは、「現地市場を深く理解する」「品質にこだわる」「長期的な視点で取り組む」という3つのポイントです。輸出は短期間で成果が出るものではありませんが、地道な努力を続けることで、確実に市場を開拓できることを示しています。

また、政府の支援策を積極的に活用していることも共通点です。補助金を使った施設整備や、JETRO のマッチング支援を利用するなど、利用できる制度は最大限活用しています。自社の努力と政府の支援をうまく組み合わせることが、成功への近道だと言えるでしょう。