2023年より日本の食品輸出額が過去最高を記録している今、多くの中小企業が海外市場への進出を検討しています。
しかし、「関税の仕組みがよくわからない」「トランプ関税で損失が出るのではないか」「正確なコスト計算ができず価格設定に困っている」といった悩みを抱えていませんか。
本記事では、食品輸出における関税の基本から、具体的な計算方法、さらにはEPA/FTAを活用したコスト削減戦略まで、実務に直結する情報を網羅的にお届けします。
米国の15%相互関税は一律適用のため、実は日本だけが不利になるわけではありません。関税の正しい知識を身につけることで、適切な価格設定と利益確保が可能になります。
この記事を最後まで読めば、関税に振り回されることなく、自信を持って海外市場に挑戦できるようになるでしょう。
食品輸出時の関税の基本を理解する
食品を海外に輸出する際、必ず理解しておかなければならないのが「関税」です。
関税とは、国境を越えて商品が輸入される際に、輸入国の税関が課す税金のことを指します。
日本企業が海外に食品を輸出する場合、その商品を受け取る相手国で関税が発生するのが一般的です。この関税は、輸入国にとって国内産業を保護する役割と、国家財政の収入源という2つの重要な機能を持っています。
なお、関税を支払わなければいけないのは相手国の輸入者です。
関税の仕組みを正しく理解することは、輸出価格の設定や利益計算に直結します。
たとえば、ある食品を100万円で米国に輸出する場合、米国側で15%の関税がかかると輸入者は115万円+輸送費等を負担することになります。
この関税分は商品の小売価格にのせられるのが一般的で、最終的には消費者が負担していることになります。
関税とは何か?その仕組みと役割
関税は、商品が国境を越える際に輸入国政府が徴収する税金です。
輸入する商品の種類や原産国によって税率が異なり、各国が独自に設定しています。
関税には大きく分けて2つの目的があります。1つ目は「財政収入の確保」です。輸入品に課税することで、国の税収を増やすことができます。2つ目は「国内産業の保護」です。
海外から安い商品が大量に入ってくると、国内の生産者が不利になる可能性があります。そこで関税を課すことで輸入品の価格を上げ、自国の産業を守る働きをしています。
HSコードによる商品分類と税率の決まり方
関税率は商品ごとに異なりますが、その分類に使われるのが「HSコード」という国際的な商品分類システムです。
HSはHarmonized System(ハーモナイズド・システム)の略で、世界共通の6桁の番号で商品を分類しています。この6桁の基本コードに、各国が独自の桁数を追加して、さらに細かく分類しているのが一般的です。
たとえば、醤油のHSコードは「2103.10」から始まり、各国でさらに細分化されます。
米国では10桁、中国では13桁のコードを使って、より詳細に商品を特定します。
このHSコードによって、その商品にかかる関税率が決まる仕組みです。同じ「食品」というカテゴリーでも、チョコレートと乾燥野菜では税率が大きく異なります。また、加工度合いによっても税率が変わることがあります。
HSコードを正確に特定することは、関税計算の出発点です。
間違ったコードを使用すると、過剰な関税を払うことになったり、逆に税関でトラブルになる可能性があります。各国の税関ウェブサイトや貿易支援機関(ジェトロなど)で、HSコードと対応する関税率を調べることができます。商品の原材料、製造方法、用途などを正確に把握した上で、適切なHSコードを選ぶことが大切です。
FOB価格とCIF価格による関税計算の違い
食品輸出の取引では、FOB価格とCIF価格という2つの価格条件がよく使われます。この違いを理解することは、関税計算においても非常に重要です。FOB(Free On Board)は「本船渡し価格」のことで、日本の港で船に積み込むまでの費用を輸出者が負担し、それ以降の輸送費用や保険料は輸入者が負担する条件です。一方、CIF(Cost, Insurance and Freight)は「運賃保険料込み価格」で、相手国の港に到着するまでの輸送費と保険料を輸出者が負担する条件になります。
関税の計算基礎となるのは、多くの国でCIF価格です。つまり、商品本体の価格だけでなく、運賃や保険料も含めた金額に対して関税率がかけられます。
たとえば、商品価格が100万円、運賃と保険料が20万円の場合、CIF価格は120万円となり、関税はこの120万円に対して計算されます。関税率が10%なら、関税額は12万円になります。
この仕組みを知らずにFOB価格だけで関税を計算してしまうと、実際に必要な金額が足りなくなってしまいます。輸出先国がどの価格基準で関税を計算するのかを事前に確認し、正確なコスト試算を行うことが、利益を守るために不可欠です。取引条件と関税計算の関係を正しく理解することで、価格交渉でも有利に進めることができるでしょう。
トランプ関税が食品輸出に与える影響と対策
2025年に入り、米国のトランプ政権による相互関税政策が大きな注目を集めています。この政策では、日本から米国への輸出品に対して15%の関税が課されることになりました。
食品輸出を検討している企業にとって、この新たな関税負担は無視できない問題です。しかし、冷静に状況を分析すれば、対応策は見えてきます。
トランプ関税の特徴は、日本だけを狙い撃ちにしたものではないという点です。
この相互関税は多くの国に一律に適用されるため、日本企業だけが不利になるわけではありません。
むしろ、どの国から輸入しても同じように関税がかかるため、競争条件は比較的フェアになるともいえます。
現地の米国商社の話では、輸入業者側は「仕入れ全体が10~15%値上がりする」という認識で受け止めており、特定の国からの輸入を避けるというよりも、全体的なコスト増として対応しているようです。
米国の相互関税15%の概要と発動タイミング
トランプ政権が発表した相互関税政策では、日本からの輸出品に対して15%の関税が適用されることになりました。この措置は、米国が貿易赤字を抱える国々に対して「公平な貿易」を求めるという名目で導入されたものです。日本は米国に対して年間約9兆円の貿易黒字を持っており、この不均衡を是正する狙いがあるとされています。
発動タイミングについては、すでに2025年4月から段階的に実施されています。食品分野では、農林水産省が対策チームを立ち上げ、輸出事業者への影響分析と対応策の検討を進めています。15%という税率は、当初懸念されていた数字よりも低いという見方もありますが、食品輸出企業にとっては利益率に直結する重要な数字です。
重要なのは、この関税が「追加」であるという点です。つまり、もともと存在していた関税に15%が上乗せされるわけではなく、相互関税として15%が新たに設定されたということです。ただし、品目によってはもともとの関税と合わせて、さらに高い税率になる可能性もあります。自社の輸出品にどの程度の影響があるのか、具体的な計算をすることが最初のステップになります。
一律課税だから日本だけが不利ではない理由
トランプ関税について最も理解しておくべきポイントは、この関税が日本だけを対象としたものではないということです。米国は貿易赤字を抱える多くの国々に対して、同様の相互関税を課す方針を打ち出しています。つまり、韓国、台湾、ヨーロッパ諸国など、多くの輸出国が同じような関税負担に直面しているのです。
この状況は、一見すると全員が不利になるように思えますが、競争という観点では違います。たとえば、日本の醤油メーカーが米国市場で韓国の醤油メーカーと競争している場合、両方とも15%の関税がかかるなら、相対的な競争力は変わりません。むしろ重要なのは、関税がかかった後でも選ばれる商品力、つまり品質やブランド力、価格設定の戦略です。
現地の米国輸入業者の反応も冷静です。彼らは「特定の国からの輸入をやめる」のではなく、「輸入コスト全体が上がった」という認識で、必要に応じて販売価格に転嫁したり、仕入れ先との交渉を行っています。つまり、15%の関税は市場全体で吸収される傾向にあり、日本企業だけが極端に不利になるという状況ではないのです。
現地での価格転嫁と消費者の受け止め方
米国の輸入業者や小売業者は、トランプ関税による仕入れコストの増加に対して、どのように対応しているのでしょうか。現地での実態を見ると、多くの業者が「段階的な価格転嫁」という手法を取っています。つまり、15%の関税がかかったからといって、すぐに小売価格を15%値上げするわけではなく、市場の反応を見ながら、数%ずつ価格を調整していくケースが多いのです。
消費者の受け止め方も重要です。米国の消費者は、すでにインフレの影響で食品価格の上昇に慣れつつあります。そのため、数%の値上がりであれば、「仕方ない」と受け入れられる傾向にあります。特に日本食品は「高品質」「健康的」というイメージが強く、価格よりも品質を重視する消費者層からの支持があります。醤油、味噌、日本茶、和菓子などは、代替品が少ないため、多少の値上がりでも需要が落ちにくいという特徴があります。
ただし、価格転嫁には限界があることも事実です。競合商品が多い分野では、値上げによって顧客が離れるリスクがあります。そこで重要になるのが「価値の明確化」です。なぜ自社の商品が他より優れているのか、15%の追加コストを払う価値があるのかを、消費者にしっかりと伝えることが求められます。パッケージデザイン、ストーリー性、健康効果など、価格以外の価値を訴求する戦略が、トランプ関税時代を生き抜く鍵になるでしょう。
食品輸出の関税コストを正確に計算する方法
食品輸出を成功させるためには、関税コストを正確に計算し、適切な価格設定を行うことが不可欠です。関税率が分かっていても、実際の計算方法を間違えると、利益が出ないどころか赤字になってしまう可能性もあります。ここでは、実務で使える具体的な計算方法を解説していきます。
関税コストの計算は、単に「商品価格×関税率」で終わりではありません。輸送費や保険料を含めた価格(CIF価格)をベースにすること、さらに輸入消費税などの追加コストも考慮する必要があります。これらを正しく理解し、エクセルなどで計算シートを作成しておくと、見積もりや価格交渉がスムーズに進みます。
関税率の調べ方と実行関税率表の見方
関税率を調べる最も確実な方法は、輸出先国の税関が公表している「実行関税率表」を確認することです。日本の財務省関税局や各国の税関ウェブサイトでは、HSコード別に関税率が掲載されています。たとえば、米国税関のウェブサイト(CBP.gov)や、中国の海関総署のサイトでは、詳細な関税率表を無料で閲覧できます。
実行関税率表を見る際のポイントは、HSコードを正確に特定することです。食品の場合、第01類から第24類に分類されることが多く、たとえば醤油は第21類「調味料」に含まれます。HSコードの最初の2桁で大まかなカテゴリーが決まり、4桁、6桁と細かくなるにつれて具体的な商品が特定されます。
また、関税率には「MFN税率(最恵国税率)」「EPA税率(経済連携協定の優遇税率)」「一般税率」など、いくつかの種類があります。日本からの輸出の場合、多くの国でMFN税率が適用されますが、EPAを締結している国(米国、EU、ASEANなど)では、さらに低い優遇税率が適用される可能性があります。自社商品がどの税率カテゴリーに該当するのかを確認することが重要です。
輸入消費税を含めた総コストの算出例
関税だけでなく、輸入時には「輸入消費税」も発生します。これは、輸入国の国内で販売される商品に課される税金で、日本でいう消費税のようなものです。たとえば中国では13%の増値税(付加価値税)が一般的に課されます。米国の場合、連邦レベルでの輸入消費税はありませんが、州によっては販売税が課されることがあります。
具体的な計算例を見てみましょう。日本から中国に、商品価格100万円の食品を輸出するケースを考えます。
- 商品価格(FOB):100万円
- 運賃・保険料:10万円
- CIF価格:110万円
- 関税率:10%(仮定)
- 関税額:110万円×10%=11万円
- 関税込み価格:110万円+11万円=121万円
- 増値税率:13%
- 増値税額:121万円×13%=15.7万円
- 総コスト:121万円+15.7万円=136.7万円
このように、当初100万円だった商品が、輸入国側では136.7万円のコストになります。
実際のビジネスでは、輸入者がこれらのコストを負担するのが一般的ですが、輸出者側も総コストを理解した上で、競争力のある価格を提示することが求められます。
EPA/FTAを活用した食品輸出の関税削減戦略
関税コストを削減する最も効果的な方法の1つが、EPA(経済連携協定)やFTA(自由貿易協定)の活用です。
日本は現在、20以上の国・地域とEPA/FTAを締結しており、これらの協定を活用すれば、関税が大幅に削減されたり、ゼロになるケースも少なくありません。食品輸出において、EPA/FTAは価格競争力を高める強力な武器になります。
たとえば、日本とEUの間では日EU・EPA、日本とASEAN各国との間ではRCEP(地域的な包括的経済連携協定)が発効しています。
これらの協定では、多くの食品カテゴリーで関税が段階的に削減され、最終的にはゼロ税率になる品目も多数あります。ただし、優遇税率を受けるためには、原産地証明書などの書類が必要になるため、手続きを正しく理解しておくことが重要です。
経済連携協定で関税がゼロになる仕組み
EPA/FTAとは、特定の国や地域間で貿易の自由化を進めるための協定です。最大の特徴は、協定を結んだ国同士の貿易では、関税が削減または撤廃されるという点にあります。たとえば、日本とオーストラリアの間のEPAでは、日本からの緑茶や味噌などの食品について、協定発効後すぐに関税がゼロになりました。
関税がゼロになる仕組みは、「原産地規則」に基づいています。つまり、その商品が協定国(この場合は日本)で実際に生産されたものであることを証明できれば、優遇税率が適用されるのです。逆に言えば、日本で単に梱包しただけで、原材料がすべて海外産の場合は、日本原産とは認められず、優遇税率の対象外になります。
EPAを活用することで得られるメリットは非常に大きいです。たとえば、通常10%の関税がかかる商品を年間1000万円輸出している場合、EPAを使えば100万円のコスト削減になります。この差額を価格競争力に回すこともできますし、利益として確保することもできます。競合他社がEPAを活用していない場合、大きなアドバンテージを得ることができるのです。
主要輸出先国との協定内容と対象品目
日本が締結している主要なEPA/FTAと、食品分野での優遇内容を見ていきましょう。まず、日米貿易協定では、米国側が日本からの牛肉、豚肉、小麦などの輸入関税を削減することに合意していますが、食品加工品については品目ごとに異なります。一部の醤油や調味料では関税削減の対象になっていますが、すべての食品がゼロ税率になるわけではありません。
日EU・EPAは、食品輸出企業にとって非常に有利な協定です。日本酒、緑茶、醤油などの多くの日本食品について、関税が即時撤廃または段階的に削減されています。特に日本酒はEU側の関税(従来は1リットルあたり約32円)が即時撤廃されたため、ヨーロッパ市場での価格競争力が大きく向上しました。
RCEP(地域的な包括的経済連携)は、日本、中国、韓国、ASEAN10カ国、オーストラリア、ニュージーランドの15カ国が参加する巨大な経済圏です。中国との間では、一部の食品について関税削減が進んでおり、今後さらに対象品目が拡大する見込みです。韓国やASEAN各国との貿易でも、RCEPを活用することで関税メリットを享受できます。
原産地証明の取得手続きと必要書類
EPA/FTAの優遇税率を受けるためには、「原産地証明書」という書類が必要です。これは、その商品が日本で生産されたものであることを証明する公的な文書で、商工会議所などの発給機関が発行します。原産地証明書がないと、いくらEPAを締結していても、優遇税率は適用されません。
原産地証明書の取得手順は、まず商工会議所に企業登録を行い、その後、輸出する商品ごとに証明書の発給申請をします。申請の際には、インボイス(商業送り状)、パッキングリスト(梱包明細書)、原産地を証明できる資料(製造工程表や原材料の仕入れ先情報など)を提出します。審査が通れば、数日で原産地証明書が発行されます。
近年では、「自己証明制度」を導入するEPAも増えています。これは、輸出者自身が原産地を証明する文書を作成できる制度で、商工会議所を経由しなくても優遇税率を受けられます。たとえば、日EU・EPAや日英EPAでは、認定輸出者になることで自己証明が可能です。認定輸出者になるためには、税関に申請して承認を受ける必要がありますが、承認後は迅速に証明書を発行できるため、業務効率が大幅に向上します。
関税に左右されない食品輸出戦略の構築
トランプ関税やその他の貿易障壁が存在する中でも、成功している食品輸出企業には共通点があります。それは、「関税の影響を最小化する戦略」を持っていることです。関税は確かにコスト要因ですが、商品力、市場選択、価格設定の工夫次第で、その影響を大きく軽減できます。ここでは、関税に左右されずに輸出を成功させるための具体的な戦略を紹介します。
愛知県のある食品メーカーは、トランプ関税に対して「関税に左右されない商品づくり」を模索していると報じられています。これは、単に価格を下げるのではなく、付加価値を高め、他では手に入らない商品を作ることで、多少のコスト増があっても選ばれ続けることを目指す戦略です。このような考え方は、すべての食品輸出企業にとって参考になります。
オンリーワン商品で価格競争力を確保する
関税が高くても売れる商品には、共通する特徴があります。それは「代替品がない」ということです。日本からの食品輸出で成功している品目を見ると、醤油、味噌、日本酒、緑茶、和牛、ホタテなど、日本独自の商品が多いことに気づきます。これらは、他国では生産が難しく、日本産でなければ本物の味が出せないため、多少高くても需要があるのです。
オンリーワン商品を作るためには、いくつかのアプローチがあります。1つ目は「伝統製法の維持」です。たとえば、何百年も続く醸造技術で作られた醤油や味噌は、工業製品にはない深い味わいがあります。2つ目は「地域特産品の活用」です。特定の地域でしか採れない原料を使った商品は、希少性が高く、ブランド価値を生み出します。3つ目は「革新的な商品開発」です。たとえば、健康志向の高まりに合わせて、低塩分、無添加、オーガニックなど、現地のニーズに合わせた商品を開発することで、他社と差別化できます。
米国での食品輸出データを見ると、日本からの輸出品目で強いのは「オンリーワン品目」であることが分かります。つまり、価格競争に巻き込まれない独自性を持った商品こそが、関税という障壁を乗り越えられるのです。自社の商品に「なぜ日本産でなければならないのか」という明確な理由を持たせることが、長期的な成功の鍵になります。
複数市場への分散でリスクを軽減する
トランプ関税のような予期しない政策変更は、特定の国にだけ輸出している企業にとって大きな打撃になります。そこで重要なのが「市場分散戦略」です。米国だけでなく、EU、中国、東南アジア、オーストラリアなど、複数の市場に輸出先を広げることで、一つの市場でリスクが発生しても、他の市場でカバーできます。
市場分散のメリットは、リスク軽減だけではありません。各国の食品トレンドや消費者の嗜好は異なるため、多様な市場に触れることで、新しい商品開発のヒントが得られます。たとえば、米国では「ヘルシー」「グルテンフリー」が重視され、中国では「高級感」「ギフト需要」が強く、東南アジアでは「日常使い」「手頃な価格」が求められます。こうした違いを理解し、市場ごとに商品ラインナップを調整することで、売上を最大化できます。
ただし、複数市場への展開には、それぞれの国の規制や表示要件への対応が必要です。プロジェクト内のPDFには、米国、中国、韓国、台湾、香港などへの輸出規制がまとめられています。各国の要件を事前に確認し、必要な認証や表示を整えることで、スムーズな輸出が可能になります。複数市場への対応は手間がかかりますが、長期的には企業の安定性と成長に大きく寄与します。
現地ニーズに合わせた商品開発と価格設定
食品輸出の成功には、「現地適応」が欠かせません。日本で人気の商品をそのまま輸出しても、海外では受け入れられないことがあります。味の好み、パッケージサイズ、価格帯、購入シーンなど、国によって消費者のニーズは大きく異なるからです。
たとえば、米国では大容量パッケージが好まれる一方、香港や台湾では小容量の個包装が人気です。また、中国では贈答用の需要が高いため、高級感のあるパッケージデザインが重要になります。さらに、健康志向の強い市場では、低塩分、無添加、オーガニックなどの訴求ポイントが効果的です。
価格設定も、現地の購買力と競合状況を踏まえて決める必要があります。先進国市場では、高品質・高価格のプレミアム戦略が有効ですが、新興国市場では、手頃な価格帯で市場シェアを獲得する戦略が求められることもあります。関税15%が上乗せされても、現地消費者が「それでも買いたい」と思える価値を提供できれば、売上は維持できます。
現地ニーズを把握するためには、市場調査やテストマーケティングが有効です。ジェトロや地方自治体が支援する海外展示会や商談会に参加することで、現地バイヤーの声を直接聞くことができます。また、現地の輸入業者や小売店と密にコミュニケーションを取り、売れ筋商品の情報を収集することも重要です。こうした地道な努力が、関税というハードルを越えて成功する鍵になります。
まとめ:食品輸出で持続的成長を実現するために
食品輸出は、日本経済にとって重要な成長分野です。2024年の農林水産物・食品輸出額は過去最高の1兆4,148億円を記録し、政府は2025年までに2兆円、2030年までに5兆円という目標を掲げています。トランプ関税のような一時的な逆風はあっても、長期的には日本食品への需要は世界中で高まり続けています。
本記事では、食品輸出における関税の基本から、トランプ関税の影響、関税コストの計算方法、EPA/FTAの活用、そして関税に左右されない戦略まで、包括的に解説してきました。最も重要なポイントは、「関税は確かにコストだが、それを上回る価値を提供すれば勝てる」ということです。日本の食品が持つ品質、安全性、独自性という強みを最大限に活かし、現地ニーズに合わせた商品開発と戦略的な価格設定を行うことで、関税というハードルを乗り越えられます。
また、情報収集と準備の重要性も忘れてはいけません。各国の規制要件、HSコード、EPA/FTAの活用方法、原産地証明の取得手続きなど、事前にしっかりと調べて準備することで、通関トラブルを避け、スムーズな輸出が実現できます。ジェトロ、商工会議所、地方自治体などの支援機関を積極的に活用し、専門家のアドバイスを受けることも有効です。
食品輸出は決して簡単なビジネスではありませんが、正しい知識と戦略を持てば、中小企業でも十分に成功できる分野です。トランプ関税のような変化を脅威としてではなく、自社の商品力を見直し、戦略を磨く機会として捉えましょう。関税に左右されない強い商品とビジネスモデルを構築することで、持続的な成長を実現できるはずです。