食品輸出を始めたいけれど、特別な資格が必要なのか不安に感じていませんか。
また、自分で手続きを進められるのか、それとも専門業者に依頼すべきなのか迷っている方も多いでしょう。
この記事では、食品輸出に必要な資格の有無から、実際に求められる施設登録や届出について詳しく解説します。
さらに、HACCP認証の重要性や、通関士の役割についてもわかりやすく説明していきます。
具体的には、食品輸出に「個人」においては特別な資格は不要であること、「施設」などは国や品目によって必要な登録や手続きがあること、そして自社で対応できるケースと専門家に依頼すべきケースの判断基準をお伝えします。
ここでは食品輸出を始めるために何が必要で、どのような準備をすればよいのかが明確になり、安心して次のステップに進むことができます。
食品輸出に資格は必要か?基本を解説
最初に気になるのが「特別な資格が必要なのか」という点ではないでしょうか。
結論から言えば、食品の輸出業務そのものに特別な事業許可や免許は必要ありません。しかし、輸出先の国や取り扱う食品の種類によっては、生産する「施設」にさまざまな届出や登録が求められます。
食品輸出に特別な資格は不要
日本から海外へ食品を輸出する場合、輸出業者として特別な許可や資格を取得する必要は基本的にありません。
つまり、食品メーカーはいつでも輸出を始めることが可能です。
もちろん、輸出する食品によっては日本国内での製造や取り扱いに関する許可が必要になります。
例えば、食肉製品を扱う場合は食肉製品製造業の許可が、水産加工品を扱う場合は水産物加工業の許可が必要です。
これらは輸出のためというよりも、国内で食品を製造・加工するために必要な許可となります。
ただし関連する届出や登録は必要
食品輸出業者としての特別な資格は不要ですが、輸出先の国によっては製造施設の登録や各種証明書の取得が必要になります。
例えば、アメリカへ食品を輸出する場合、製造施設をFDA(米国食品医薬品局)に登録しなければなりません。中国へ輸出する場合も、海外製造施設として中国税関への登録が義務付けられています。
また、輸出する食品の種類によっては、日本の検疫機関が発行する衛生証明書や原産地証明書の取得が必要です。特に食肉製品や水産物、乳製品などの動物性食品を輸出する際には、輸出国政府が発行する衛生証明書が求められるケースが多くなっています。
これらの証明書取得には、製造施設が一定の衛生基準を満たしていることが前提となります。
自社で輸出するか専門業者に依頼するかの判断基準
食品輸出を自社で行うか、それとも専門の輸出代行業者に依頼するかは、事業規模や取り扱う商品によって判断が異なります。
中小企業で輸出を始める場合、まずは輸出手続きの複雑さと自社のリソースを天秤にかけて検討しましょう。
自社で対応できるケースとしては、輸出先が一か国で輸出量が少ない場合、または既に海外取引の経験がある場合などが挙げられます。一方、複数国への輸出を計画している場合や、国ごとに異なる規制への対応が難しい場合は、専門業者の活用を検討した方が効率的です。
輸出代行業者を利用するメリットは、各国の規制情報を熟知していることや、通関手続きをスムーズに進められることです。
特に初めて食品輸出に取り組む場合は、専門業者のサポートを受けながら経験を積み、徐々に自社での対応範囲を広げていくという方法も有効です。
食品輸出で必要な施設登録と届出
食品を輸出する際には、輸出先の国によって製造施設の登録や届出が必要になります。ここでは、主要な輸出先国における施設登録制度について詳しく解説します。
輸出食品等製造施設登録とは
輸出食品等製造施設登録とは、食品を製造する施設が輸出先国の基準を満たしていることを証明する制度です。多くの国では、自国に食品を輸入する際、製造施設が事前に登録されていることを求めています。
日本では、厚生労働省が「輸出食品等製造施設登録」という制度を運用しています。この登録を受けた施設は、輸出先国が求める衛生基準を満たしていると認められ、円滑な輸出が可能になります。登録にあたっては、施設の衛生管理状況や製造工程が審査され、必要な基準を満たしていることが確認されます。
特に畜産物や水産物など、リスクの高い食品を輸出する場合は、この登録が必須となるケースが多くなります。登録には一定の審査期間が必要なため、輸出計画を立てる際には余裕を持って申請することが重要です。
施設登録が必要な国と品目
施設登録の要否は、輸出先国と取り扱う食品の種類によって異なります。アメリカへ食品を輸出する場合、すべての食品製造施設はFDAへの食品施設登録が義務付けられています。この登録は2年ごとの更新が必要で、偶数年の年末までに更新手続きを行わなければ登録が失効します。
中国への食品輸出では、海関総署(税関)への製造施設登録が必要です。2022年から施行された新しい規則では、肉類、水産物、乳製品などの高リスク食品については、日本の主管当局を通じた登録申請が必要となっています。それ以外の一般食品については、企業自身が中国のシステムを通じて登録申請を行います。
韓国へ輸出する場合も、海外製造業所の事前登録が義務付けられています。輸入申告の少なくとも7日前までに、製造施設の名称や所在地などを韓国食品医薬品安全処へ登録しなければなりません。台湾では、水産加工品や食肉加工品、乳製品などの高リスク品目について、製造施設がHACCPに準拠した衛生管理を実施していることが求められます。
施設登録の申請方法と流れ
施設登録の申請方法は、輸出先国によって異なりますが、基本的な流れは共通しています。まず、輸出しようとする国の規制を確認し、必要な登録の種類を把握します。次に、自社の製造施設が求められる衛生基準を満たしているかを確認し、必要に応じて設備の改善や衛生管理体制の整備を行います。
アメリカのFDA登録の場合、オンラインでの登録手続きが可能です。FDA Industry Systems(FIS)というポータルサイトから申請を行い、米国内の代理人を1名指名する必要があります。
登録自体に費用はかかりませんが、英語での書類作成が必要となるため、初めて申請する場合は専門家のサポートを受けることをおすすめします。
中国への施設登録では、高リスク食品の場合は日本の厚生労働省を通じて申請を行います。
一般食品の場合は、中国の単一窓口システム(CIFER)から直接申請が可能です。韓国への登録は、輸入者または製造業者自身が韓国食品医薬品安全処のシステムを通じて申請します。
登録完了までには数週間から数か月かかる場合があるため、余裕を持った計画が必要です。
食品輸出におけるHACCP認証の重要性
食品輸出において、HACCP認証は非常に重要な役割を果たします。
多くの国で衛生管理の国際基準として認識されており、輸出を円滑に進めるための強力なツールとなります。
輸入元から「HACCP」の認証の写しを求められたり、インシデント管理の表の提出を求められることも多いです。
HACCP認証が求められる理由
食品輸出においてHACCP認証が重視される理由は、国際的に認められた衛生管理システムであることです。輸出先国の多くは、輸入食品に対して高い衛生基準を求めており、HACCP認証を取得していることが取引の条件となるケースが増えています。
HACCP認証取得の3つのメリット
✓ バイヤーとの商談で大きなアドバンテージ
✓ トレーサビリティの向上
✓ 海外展開の加速
アメリカでは、水産加工品についてシーフードHACCP規則への適合が義務付けられており、果汁飲料についてもジュースHACCPの適用を受けます。EUへ動物性食品を輸出する場合も、製造施設がHACCP原則に基づいた衛生管理を実施していることが求められます。
また、HACCP認証を取得することで、海外のバイヤーや小売業者からの信頼を得やすくなります。特に大手スーパーマーケットチェーンや食品卸売業者は、取引先にHACCP認証やISO22000などの国際認証を求めることが一般的です。
HACCP取得の手順とコスト
HACCP認証取得までの流れ
HACCP認証を取得するためには、まず自社の製造工程を分析し、危害要因を特定する必要があります。次に、重要管理点(CCP)を設定し、管理基準や監視方法、記録方法を定めたHACCPプランを作成します。このプランに基づいて実際の運用を開始し、記録を蓄積していきます。
認証取得のためには、第三者認証機関による審査を受ける必要があります。日本国内には、日本食品衛生協会や日本海事検定協会など、複数の認証機関があります。審査では、HACCPプランの内容確認と現場での実施状況の確認が行われ、基準を満たしていると判断されれば認証が付与されます。
HACCP認証取得にかかるコストは、施設の規模や製造する食品の種類によって異なりますが、初回の審査費用として数十万円から100万円程度が目安となります。
また、認証取得後も定期的な維持審査が必要で、年間数十万円程度の費用が発生します。
ただし、国や自治体によっては、HACCP取得のための補助金制度を設けている場合もあるため、活用を検討すると良いでしょう。
食品輸出に関わる資格:通関士
食品輸出の現場で重要な役割を果たす専門家の一つが通関士です。ここでは、通関士という資格について詳しく解説します。
※ メーカーで取得しておく必要はありません。
食品輸出に関わる機関と役割
・輸出手続きの依頼
・必要書類の準備
・商品の梱包・発送
・通関士の配置
・税関との窓口業務
・輸出手続きの代行
・HSコードの判定
・関税の計算
・税関検査への立会い
・食品衛生検査
・動物検疫・植物検疫
・輸出前の衛生確認
・貨物検査の実施
・輸出許可の発給
・法令違反のチェック
・輸入通関手続き
・現地での販売
・フィードバック提供
※実際の輸出では、フォワーダー(貨物輸送業者)や保険会社なども関与します
通関士とは
通関士とは、輸出入の際に税関に提出する申告書類を作成し、通関手続きを行う国家資格保有者です。
関税法に基づいて設けられた資格で、通関業者は営業所ごとに最低1名の通関士を置くことが義務付けられています。(メーカーには不要です。)
通関士の主な業務は、輸出入申告書の作成・審査、税関への申告手続き、関税や消費税の計算、税関検査への立会いなどです。食品輸出の場合、輸出する食品の分類(HSコード)を正確に判定し、必要な証明書類を確認し、適切な申告を行うことが求められます。
通関手続きは専門的な知識が必要で、書類に不備があると輸出が遅延したり、最悪の場合は輸出できなくなったりする可能性があります。そのため、通関士は貿易実務において欠かせない存在となっています。
食品輸出業務での通関士の役割
食品輸出において、通関士は単に書類を作成するだけでなく、輸出がスムーズに進むよう様々なサポートを行います。
例えば、輸出先国の規制に応じて必要な証明書(衛生証明書、原産地証明書など)を確認し、不足がないかチェックします。
また、食品の分類は複雑で、同じような商品でも原材料や加工方法によってHSコードが異なる場合があります。通関士は豊富な知識と経験に基づいて正確な分類を行い、適切な関税率を適用します。これにより、余分な関税を支払うことなく、また税関でのトラブルを避けることができます。
さらに、通関士は税関検査が入った場合の対応も行います。
食品の場合、衛生面や表示内容について詳しく検査されることがあり、その際に税関職員への説明や追加書類の提出をサポートします。
経験豊富な通関士の存在は、食品輸出ビジネスを円滑に進める上で大きな力となるでしょう。
通関士資格の取得方法
通関士になるためには、財務省が実施する通関士試験に合格する必要があります。試験は毎年1回、10月に実施され、合格率は例年10~20%程度と難関資格として知られています。
通関士試験の合格率推移(過去5年)
試験科目は、通関業法、関税法・関税定率法その他関税に関する法律、通関書類の作成要領および通関実務の3科目で構成されています。特に通関実務は計算問題や実務的な知識が問われ、最も難易度が高いとされています。
受験資格に制限はなく、誰でも受験することができます。ただし、合格後に通関士として業務を行うには、通関業者に雇用され、税関長の確認を受ける必要があります。
学習期間は個人差がありますが、一般的には6か月から1年程度の学習が必要とされています。通信講座や専門学校も多数あり、働きながらでも資格取得を目指すことが可能です。
まとめ
食品輸出に特別な資格は必要ありませんが、輸出先国によって様々な登録や届出が求められることがわかりました。
HACCP認証は輸出を円滑に進めるための重要なツールとなり、通関士は貿易実務において欠かせない専門家です。
自社で輸出業務を行うか専門業者に依頼するかは、事業規模や取り扱う商品によって判断が異なります。まずは小規模から始めて経験を積み、徐々に対応範囲を広げていくのも一つの方法でしょう。食品輸出は複雑に見えますが、必要な知識を身につけ、適切な準備を行えば、誰でも取り組むことができるビジネスです。
適切なサポートを活用しながら、食品輸出を成功させてください。