海外展開を目指す食品メーカーにとって、通関手続きは避けて通れない重要なプロセスです。
しかし「どんな申請が必要なのか」「許可を得るまでにどれくらい時間がかかるのか」など、初めて食品輸出に取り組む担当者の方は不安を感じることも多いでしょう。
通関は単なる手続きではなく、輸出プロジェクト全体のスケジュールやコストに大きく影響します。適切な準備をせずに進めてしまうと、書類不備による出荷遅延や、想定外のコスト増加といったトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、食品輸出における通関の基礎知識から、申請に必要な書類、許可取得までの具体的な流れ、よくあるトラブルと対策まで、実務に役立つ情報を網羅的に解説します。初めての輸出を成功させるために、ぜひ参考にしてください。
食品輸出における通関の基礎知識
食品を海外に輸出する際、必ず通過しなければならないのが「通関」という手続きです。通関は単なる形式的な手続きではなく、輸出プロジェクト全体の成否を左右する重要なプロセスとなります。ここでは、通関の基本的な仕組みと食品輸出における重要性について解説していきます。
通関とは何か
通関とは、商品を国境を越えて輸出入する際に、税関の許可を得るための一連の手続きのことを指します。具体的には、輸出する商品の内容や価格、数量などを税関に申告し、検査を受けた上で許可を得るプロセスです。
日本から食品を輸出する場合、まず日本の税関で輸出通関を行い、その後、輸出先国の税関で輸入通関を受ける必要があります。この二段階の手続きを経て、初めて商品が相手国で流通できるようになります。
通関では、商品が輸出入に関する法律や規制に適合しているかをチェックされます。食品の場合は、一般的な貿易規制に加えて、食品衛生法や植物防疫法、検疫法など、さまざまな法律が関わってきます。そのため、他の商品と比べて通関手続きが複雑になることが多いです。
また、通関では関税の計算や納付も行われます。関税は商品の種類や輸出入先の国によって異なり、自由貿易協定などによって優遇措置が適用される場合もあります。これらの要素を正確に理解し、適切に申告することが求められます。
通関手続きに関わる主な機関
食品の輸出通関には、複数の政府機関が関わっています。それぞれの役割を理解しておくことで、スムーズな手続きが可能になります。
税関(日本では財務省管轄)は、通関手続きの中心となる機関です。
輸出申告の受理、書類審査、必要に応じた貨物検査を行い、最終的に輸出の許可を出します。関税の徴収や貿易統計の作成も税関の役割です。
厚生労働省は、食品衛生に関する規制を担当しています。
食品衛生法に基づく届出や、輸出先国が求める衛生証明書の発行などを行います。特に肉類や水産物など動物性食品の輸出では、厚生労働省の検疫所が発行する証明書が必要になることが多いです。
農林水産省は、植物検疫や動物検疫を担当しています。植物防疫所では、穀物や野菜、果物などの植物性食品について、病害虫の検査を行い、植物検疫証明書を発行します。動物検疫所では、畜産物の検疫を担当しています。
輸出先国の関係機関も重要です。たとえば、米国に輸出する場合はFDA(食品医薬品局)やUSDA(農務省)、中国に輸出する場合は海関総署(税関)や国家市場監督管理総局など、それぞれの国の規制機関が輸入食品の検査と許可を行います。
これらの機関が連携して、食品の安全性を確保しながら国際貿易を円滑に進める仕組みになっています。輸出者としては、各機関の役割と必要な手続きを事前に把握しておくことが大切です。
食品輸出の通関に必要な許可と申請の種類
食品を輸出する際には、さまざまな許可や申請が必要になります。
輸出する食品の種類や輸出先国によって求められる手続きが異なるため、自社の商品に何が必要なのかを正確に把握することが重要です。ここでは、一般的な食品輸出で必要となる主な許可と申請について説明します。
輸出申請が必要な食品の範囲
基本的に、商業目的で食品を海外に輸出する場合は、すべての食品が輸出通関の対象となります。少量であっても、販売目的であれば正式な輸出手続きが必要です。
ただし、輸出申請の詳しい内容は食品の種類によって大きく異なります。たとえば、加工食品や菓子類は比較的手続きが簡素ですが、肉類や乳製品、生鮮食品などは追加の検疫証明書や衛生証明書が必要になることが多いです。
特に注意が必要なのは、原材料に動物性成分や植物性成分を含む加工食品です。
たとえば、少量の肉エキスや乳成分を含むスープやソースなども、輸出先国によっては厳格な規制の対象(輸出先国に輸入ができない)となる場合があります。成分表示を確認し、どのような原料が使われているかを正確に把握しておく必要があります。
また、輸出先国によっては、特定の食品カテゴリーについて事前の登録や認証を求めることがあります。
たとえば、中国に輸出する場合、製造施設の登録が義務付けられている食品があります。米国に輸出する場合も、製造施設のFDA登録が必要です。
自社の商品がどの規制に該当するのかは、輸出先国の規制を詳しく調べるか、専門の通関業者に相談することで確認できます。事前の確認を怠ると、輸出直前になって追加手続きが必要と判明し、スケジュールが大幅に遅れることもあるため、計画段階でしっかりと調査しておくことが大切です。
通関で求められる主な許可
食品の輸出通関では、複数の許可や承認が求められることがあります。ここでは代表的なものを紹介します。
輸出許可は、税関から得る基本的な許可です。輸出申告を行い、書類審査や必要に応じた検査を経て、税関から輸出許可が下ります。この許可が下りて初めて、商品を日本から輸出することができます。
植物検疫証明書は、穀物、豆類、野菜、果物、茶葉など植物由来の食品を輸出する際に必要になります。日本の農林水産省植物防疫所が発行するもので、輸出する食品に病害虫が付着していないことを証明します。輸出先国の多くで提出が義務付けられています。
動物検疫証明書(衛生証明書)は、肉類、卵製品、乳製品、水産物など動物由来の食品を輸出する際に必要です。厚生労働省の検疫所や農林水産省の動物検疫所が発行し、食品が安全基準を満たしていること、病原体に汚染されていないことなどを証明します。
原産地証明書は、商品が日本で製造・加工されたことを証明する書類です。自由貿易協定を利用して関税優遇を受ける場合や、輸出先国が放射性物質規制などの理由で原産地確認を求める場合に必要となります。商工会議所などが発行します。
施設登録は、輸出先国が製造施設の事前登録を求める場合に必要です。たとえば、中国に食品を輸出する企業は、中国税関への製造施設登録が義務付けられています。米国向けの場合はFDAへの施設登録が必要です。
これらの許可や証明書は、取得に時間がかかるものもあります。特に初めての輸出の場合は、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが重要です。
食品衛生法に基づく届出との違い
食品の輸出入に関わる手続きとして、「食品衛生法に基づく届出」と「通関手続き」は異なるものです。両者の違いを理解しておくことで、混乱を避けることができます。
食品衛生法に基づく届出は、主に日本に食品を輸入する際に必要な手続きです。輸入者は、厚生労働省に対して食品の内容を届け出て、必要に応じて検査を受ける必要があります。この届出は、日本国内で流通する食品の安全性を確保するための制度です。
一方、日本から食品を輸出する場合、日本の食品衛生法に基づく届出は基本的に必要ありません。ただし、輸出先国が求める衛生証明書や検査証明書を取得するため、厚生労働省の検疫所に相談したり、証明書の発行を依頼したりすることはあります。
通関手続きは、輸出入を問わず、商品が国境を越える際に税関で行う手続きです。輸出通関では、税関に対して商品の内容や価格を申告し、許可を得ます。この手続きは貿易管理や関税徴収を目的としたもので、食品衛生法の届出とは管轄も目的も異なります。
整理すると、日本から食品を輸出する場合の主な手続きは次のようになります。まず、輸出先国が求める証明書(衛生証明書や検疫証明書など)を取得します。次に、税関に輸出申告を行い、通関手続きを経て輸出許可を得ます。そして、商品を輸出先国に輸送し、現地で輸入通関を行います。
輸出先国での輸入通関では、その国の法律に基づいた検査や審査が行われます。たとえば、米国ではFDAの事前通知が必要であり、中国では中国税関による検査が行われます。これらは各国独自の規制であり、日本の食品衛生法とは別の枠組みです。
このように、輸出と輸入、日本の規制と相手国の規制を区別して理解することが、スムーズな食品輸出への第一歩となります。
食品輸出の通関申請から許可までの流れ
食品の輸出通関は、いくつかの段階を経て進みます。全体の流れを理解しておくことで、各段階で何をすべきかが明確になり、トラブルを未然に防ぐことができます。ここでは、輸出準備から通関許可取得までの具体的なステップを解説します。
通関手続きの全体像
食品輸出の通関手続きは、大きく分けて「準備段階」「申告段階」「検査段階」「許可段階」の四つのステップで構成されます。
準備段階では、輸出する食品について必要な書類を揃え、輸出先国の規制を確認します。この段階が最も重要で、ここでの準備が不十分だと後の手続きで問題が発生します。
申告段階では、税関に対して輸出申告を行います。輸出する商品の内容、数量、価格、輸出先などの情報を正確に申告します。多くの場合、通関業者を通じて電子申告システムを利用して申告が行われます。
検査段階では、税関が必要に応じて書類審査や貨物検査を実施します。すべての貨物が検査されるわけではなく、リスク評価に基づいて検査対象が選ばれます。食品の場合、初回輸出や高リスクと判断された場合に検査が行われることが多いです。
許可段階では、審査や検査で問題がなければ、税関から輸出許可が下ります。許可が下りた後、商品を船や飛行機に積み込んで輸出先国に向けて発送します。
この一連の流れは、通常数日から一週間程度で完了しますが、検査が入った場合や書類に不備があった場合は、さらに時間がかかることがあります。特に生鮮食品や冷凍食品など、時間的制約がある商品の場合は、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。
また、日本での輸出通関が完了しても、それで終わりではありません。輸出先国での輸入通関も同様に重要です。現地での通関手続きがスムーズに進むよう、輸入者と密に連携し、必要な書類を事前に提供しておくことが求められます。
申請前に準備すべきこと
通関申請を行う前の準備段階は、輸出プロジェクト全体の成否を左右する最も重要なフェーズです。ここでの準備を怠ると、後々大きな問題に発展する可能性があります。
まず最初に行うべきは、輸出先国の規制調査です。各国は独自の食品安全基準や表示規則を持っています。たとえば、使用できる食品添加物の種類、残留農薬の基準値、アレルゲン表示の要件などが国によって大きく異なります。輸出先国の規制当局のウェブサイトや、JETROなどの支援機関が提供する情報を活用して、自社の商品が輸出先国の基準を満たしているかを確認します。
次に、必要な証明書の確認と取得を行います。植物検疫証明書、動物検疫証明書、原産地証明書など、輸出先国が求める証明書をリストアップし、発行機関に申請します。証明書の発行には検査が必要な場合もあり、時間がかかることがあるため、早めに手続きを開始することが大切です。
商品ラベルの確認と作成も重要な準備項目です。多くの国では、自国の言語での表示や、特定の表示項目を義務付けています。たとえば、中国では中国語のラベルが必須であり、栄養成分表示やアレルゲン表示も求められます。輸出先国の表示規則に適合したラベルを事前に用意しておく必要があります。
輸出者コードの取得も忘れてはいけません。輸出申告を行う際には、税関に登録された輸出者コードが必要です。初めて輸出を行う場合は、事前に税関で登録手続きを行います。
また、通関業者の選定も準備段階で行います。自社で通関手続きを行うこともできますが、専門知識が必要なため、多くの企業は通関業者に依頼しています。経験豊富で食品輸出に詳しい業者を選ぶことで、手続きがスムーズに進みます。
製造施設の登録が必要な場合もあります。米国向けにはFDA施設登録、中国向けには中国税関への施設登録など、輸出先国が製造施設の事前登録を求めることがあります。これらの登録には時間がかかる場合があるため、計画段階で確認し、早めに手続きを開始します。
最後に、書類の準備も重要です。商業送り状(インボイス)、梱包明細書(パッキングリスト)、原産地証明書、各種検疫証明書など、通関に必要な書類を漏れなく準備します。書類に記載する情報は正確でなければならず、商品の数量、重量、価格などが一致している必要があります。
これらの準備を計画的に進めることで、通関申請の段階でのトラブルを大幅に減らすことができます。
通関申告から許可取得までのステップ
準備が整ったら、いよいよ通関申告を行います。ここでは、申告から許可取得までの具体的な流れを説明します。
ステップ1:輸出申告の提出 通関業者または自社で、税関に対して輸出申告を行います。現在は電子申告システム(NACCS)を使用するのが一般的で、必要な情報を入力して送信します。申告内容には、商品の品名、HSコード(商品分類コード)、数量、価格、輸出先、輸送方法などが含まれます。
ステップ2:書類審査 税関は提出された申告内容と添付書類を審査します。商品の分類が正しいか、価格が適正か、必要な許可や証明書が添付されているかなどがチェックされます。書類に不備があれば、修正や追加書類の提出を求められます。
ステップ3:検査の実施(必要な場合) 税関がリスク評価に基づいて、貨物検査が必要と判断した場合、現物検査が行われます。食品の場合、包装の状態、表示ラベルの内容、実際の商品が申告内容と一致しているかなどが確認されます。必要に応じて、サンプルを採取して検査機関での分析が行われることもあります。
ステップ4:輸出許可の発行 書類審査と検査(実施された場合)で問題がなければ、税関から輸出許可が発行されます。電子申告の場合、許可通知は電子データとして送られてきます。この許可を受けて、商品を輸出先国へ向けて発送することができます。
ステップ5:貨物の搬出 輸出許可を得た商品は、港や空港の保税地域から搬出され、船舶や航空機に積み込まれます。この時点で、商品は正式に日本から輸出されたことになります。
通関手続きがスムーズに進めば、申告から許可取得まで数時間から一日程度で完了することもあります。ただし、検査が入った場合や書類の修正が必要な場合は、数日かかることもあります。
トラブルを避けるためのポイントとしては、まず正確な申告を心がけることです。商品の分類や価格の申告ミスは、後々の問題につながります。また、必要な書類はすべて事前に用意し、不備がないかを複数回チェックすることも大切です。
さらに、初回輸出の場合は、税関や通関業者とのコミュニケーションを密に取り、不明点があればその場で確認するようにします。経験を積むことで、手続きはどんどんスムーズになっていきます。
通関にかかる期間の目安
通関手続きにかかる時間は、さまざまな要因によって変わります。ここでは、一般的な目安と、時間に影響を与える要因について説明します。
標準的な所要時間は、書類に不備がなく、検査も不要な場合、輸出申告から許可取得まで数時間から一日程度です。電子申告システムの活用により、かつてに比べて大幅に時間が短縮されています。
ただし、初回輸出の場合は、より時間がかかることを想定しておくべきです。税関側も初めての輸出者に対しては慎重に審査を行うため、通常より時間がかかることがあります。また、不慣れなために書類の準備に手間取ることもあるでしょう。初回は一週間程度の余裕を見ておくと安心です。
検査が入った場合は、さらに時間が延びます。貨物検査だけであれば、半日から一日程度の追加時間で済むことが多いですが、サンプルを採取して検査機関で分析する場合は、数日から一週間程度かかることもあります。
書類の不備があった場合も、修正や追加書類の準備に時間を取られます。軽微な修正であれば即日対応できることもありますが、証明書の再発行などが必要な場合は、数日から一週間以上かかることもあります。
繁忙期の影響も考慮する必要があります。年末年始や大型連休前後、決算期などは輸出入が集中するため、通関に通常より時間がかかることがあります。特に港や空港が混雑する時期は、貨物の搬出入自体に時間がかかることもあります。
輸出先国での通関時間も忘れてはいけません。日本での輸出通関がスムーズに完了しても、輸出先国での輸入通関で時間がかかることがあります。国によって通関のスピードは大きく異なり、数時間で完了する国もあれば、数週間かかる国もあります。
たとえば、米国や欧州などでは比較的スムーズな通関が期待できますが、一部の新興国では税関のシステムが整備されておらず、時間がかかることがあります。また、輸出先国で検査が入った場合や、現地の祝日と重なった場合なども、通関が遅れる要因となります。
これらの要因を踏まえて、余裕を持ったスケジュールを組むことが重要です。特に納期が厳しい案件や、生鮮食品など鮮度が重要な商品の場合は、想定外の遅延に備えて、十分なバッファを持たせることをお勧めします。
また、経験を積むことで、自社の商品や輸出先国に応じた標準的な通関時間が把握できるようになります。初回は慎重に、二回目以降は経験を活かして効率化を図っていくことで、通関にかかる時間を短縮していくことができます。
食品輸出の通関を成功させるためのポイント
通関手続きをスムーズに進め、トラブルを避けるためには、いくつかの重要なポイントがあります。ここでは、実務で特に役立つポイントを二つに絞って解説します。
通関業者の選び方
通関業務は専門性が高く、法律や規制の知識が求められるため、多くの企業は通関業者に手続きを依頼しています。適切な通関業者を選ぶことは、輸出プロジェクトの成功に直結します。
食品輸出の実績がある業者を選ぶことが最も重要です。食品は他の商品と比べて規制が複雑で、検疫証明書や衛生証明書など特殊な書類が必要になることが多いです。食品輸出の経験が豊富な業者であれば、必要な手続きを熟知しており、スムーズに対応してもらえます。
輸出先国の規制に詳しい業者を選ぶことも大切です。通関業者によって得意な国や地域が異なります。自社が主に輸出する国に強い業者を選ぶことで、現地の最新規制情報を得られたり、トラブル時の対応がスムーズになったりします。
コミュニケーションの取りやすさも重要な選定基準です。通関手続きでは、細かい確認事項が多く発生します。迅速に対応してくれる業者、質問に丁寧に答えてくれる業者を選ぶことで、ストレスなく輸出業務を進めることができます。
料金体系の明確さも確認しましょう。通関業者の料金は、基本料金のほかに、検査が入った場合の追加料金、書類作成費用、証明書取得代行費用など、さまざまな項目があります。事前に料金体系を明確にしておくことで、予算管理がしやすくなります。
ネットワークの広さも考慮すべきポイントです。大手の通関業者は、港や空港に拠点を持っており、全国各地からの輸出に対応できます。また、海外にネットワークがある業者であれば、輸出先国での通関サポートも受けられる場合があります。
通関業者を選ぶ際は、複数の業者に見積もりを依頼し、比較検討することをお勧めします。価格だけでなく、対応の質やサービス内容も含めて総合的に判断することが大切です。また、一度取引を始めたら、定期的にサービスの質を評価し、必要に応じて業者の見直しも検討しましょう。
輸出先国の規制の事前確認
食品輸出で最も重要なのは、輸出先国の規制を事前にしっかりと確認することです。規制への対応不足は、通関トラブルの最大の原因となります。
食品添加物の規制は国によって大きく異なります。日本で使用が認められている添加物でも、輸出先国では禁止されていることがあります。たとえば、特定の着色料や保存料は、一部の国では使用が制限されています。自社製品に使われている全ての添加物について、輸出先国での使用可否を確認する必要があります。
残留農薬の基準も国ごとに異なります。日本の基準値と輸出先国の基準値が異なる場合、日本では問題なくても、輸出先国では基準超過となることがあります。特に韓国では農薬のポジティブリスト制度が厳格に運用されており、登録されていない農薬は極めて低い残留基準が適用されます。
表示規制も重要な確認事項です。多くの国では自国語での表示を義務付けており、表示すべき項目も国によって異なります。たとえば、中国では中国語のラベルが必須であり、栄養成分表示やアレルゲン表示も求められます。米国では栄養成分表示の様式が細かく規定されています。表示規則に適合しないラベルは、通関時に問題となります。
検疫・検査要件も事前に確認が必要です。植物由来の食品には植物検疫証明書、動物由来の食品には動物検疫証明書や衛生証明書が必要になることが多いです。また、放射性物質検査の証明書を求める国もあります。これらの証明書は、輸出前に日本の関係機関から取得する必要があり、検査には時間がかかることもあるため、早めの準備が重要です。
施設登録要件がある場合も、早めの対応が必要です。中国に輸出する場合は製造施設の中国税関への登録が必要であり、登録には数ヶ月かかることもあります。米国向けにはFDAへの施設登録が必要です。
これらの規制情報は、各国の規制当局の公式ウェブサイトで確認できます。また、JETRO(日本貿易振興機構)は、各国の食品規制に関する詳しい情報を提供しており、相談窓口も設けています。さらに、プロジェクト知識として提供されている各国向けの規制チェックリスト(中国、韓国、台湾、米国など)も、実務で非常に役立ちます。
規制は頻繁に更新されるため、輸出の都度、最新情報を確認することが大切です。規制への対応を怠ると、通関で商品が差し止められたり、最悪の場合、廃棄や送り返しになったりすることもあります。事前の入念な確認が、輸出成功の鍵となります。
まとめ:食品輸出の通関申請をスムーズに進めるために
食品輸出における通関は、単なる手続きではなく、輸出プロジェクト全体の成否を左右する重要なプロセスです。適切な準備と正確な手続きにより、スムーズな通関を実現することができます。
まず重要なのは、事前準備の徹底です。輸出先国の規制を詳しく調べ、必要な証明書を漏れなく取得し、適合したラベルを用意することが、トラブルを避ける最大のポイントです。準備段階で時間をかけることが、結果的に全体の時間短縮につながります。
次に、正確な申告と書類作成です。商品の分類、価格、数量などを正確に申告し、必要書類に不備がないようにすることで、審査がスムーズに進みます。書類の記載内容は互いに一致している必要があり、矛盾があると問題になります。
専門家の活用も成功の鍵です。経験豊富な通関業者に依頼することで、複雑な手続きを効率的に進めることができます。また、JETRO などの支援機関や、各国の規制情報を活用することで、最新の規制に対応できます。
継続的な学習と改善も大切です。初回輸出で得た経験を次に活かし、手続きを標準化していくことで、効率は確実に向上します。また、規制は変更されることがあるため、常に最新情報をキャッチアップする姿勢が求められます。
食品輸出の通関は確かに複雑ですが、一つ一つのステップを着実に進めることで、必ず成功させることができます。本記事が、皆様の食品輸出プロジェクトの成功の一助となれば幸いです。