※ 2025年9月公開時点での内容です。その後変更している場合もあるので注意ください。
アメリカは世界最大級の食品市場であり、日本企業にとって大きなチャンスがあります。
しかし一方で、輸入規制や表示ルールは非常に複雑で、初めて挑戦するメーカーにとっては「何から始めればいいのか分からない」と感じる場面が多いのも事実です。
この記事では、これから輸出を検討する企業の担当者がまず押さえておきたい基本的なルールや流れを整理しました。
細かいルールをすべて覚える必要はありません。
全体像を理解して「自社の商品を出すにはどこを確認すべきか」を把握することが第一歩になります。読み終えたときに「面倒そうだけど、きちんとやれば進められる」と感じられるようにまとめました。
全体像:誰が・どこで・何に適合すべきか
関係機関の役割(FDA/USDA/CBP/州規制の存在)
アメリカの食品規制は大きく分けて三本柱です。
FDAは加工食品全般を監督し、ラベル表示や栄養成分表、アレルギー表示などを細かく定めています。
USDAは肉や卵製品など動物由来の食品に関する権限を持ち、輸出する場合は特別な衛生証明や施設認可が必要になります。
CBP(税関・国境警備局)は通関で、輸入の手続きを監督します。
さらに、カリフォルニア州のように州独自で添加物や化学物質に関するルールを追加している地域もあるため、販売先の州まで含めて調べることが大切です。こうした仕組みを知っておくと、「どこでつまずきやすいのか」が見えてきます。
🏛️ 米国食品輸入における3つの主要機関
💡 重要: さらに州独自の規制(カリフォルニア州のProp 65など)も存在するため、販売先の州法も確認が必要です
“輸出者”と“米国側輸入者”の分担(FSVPなど)
日本側の輸出者が「食品を作る責任」を負うのに対して、アメリカ側の輸入者は「その食品が米国の基準に合っているかを保証する責任」を持ちます。
これはFSVP(外国サプライヤー検証プログラム)と呼ばれる仕組みで、輸入者は定期的に書類を確認し、安全性を証明しなければなりません。
輸出者と輸入者はパートナー関係であり、どちらか片方だけでは成立しません。
輸出側はラベル、成分表、工場の衛生管理情報などをきちんと用意して輸入者に渡す必要があります。
この分担を理解していれば、どんな書類が求められるかが自然と見えてきます。
加工食品で特に注意する品目(低酸性缶詰、ジュース、水産加工、畜産由来成分入り 等)
すべての食品が同じルールではありません。
中でも特に厳しいのが「低酸性缶詰食品」や「酸性化食品」と呼ばれるカテゴリーです。
これはpHや水分活性の条件で細菌が繁殖しやすく、ボツリヌス菌などの危険性があるため、FDAに製造工程を事前申請しなければ販売できません。
日本でよくある商品の一例
- なめ茸の瓶詰
- きんぴらの缶詰(醤油、砂糖、ごま油などで調理した惣菜の缶詰)
- 煮豆
また、ジュースは「ジュースHACCP」、水産加工品は「シーフードHACCP」といった特別な管理ルールがあります。
さらに、ソースや惣菜に少量でも肉や卵が含まれる場合はUSDAの対象となり、日本の工場がUSDA承認施設でなければ輸出できません。
このように品目によって要求水準が異なるため、最初に「自社商品がどのカテゴリーに入るのか」を調べることが非常に重要です。
最短で判断するためのチェックリスト(保存版)
アメリカへの食品輸出は複雑に見えますが、実際に確認するべきポイントは大きく整理すると限られています。
ここでは「最低限、これを見ておけば進められる」というチェックリストを紹介します。
細かな条文や数値基準を覚える必要はなく、自社の商品がどの項目に当てはまるのかを確認するだけで、次の行動が決めやすくなります。
輸出に初めて挑戦する企業でも、この順番で見ていけば「できること」「外部に頼むこと」がはっきりします。
ラベル:英語/必須項目/フォーマット(Nutrition Facts 等)
アメリカ市場で販売するには、商品ラベルが一番最初の関門です。
表示言語は基本的に英語で、Nutrition Facts(栄養成分表示)、Ingredients(原材料)、Allergen(アレルギー)、Manufacturer/Importer(製造者・輸入者情報)、保存方法などが必須になります。
特に栄養成分表示は日本と異なるフォーマットになっていて、カロリーや脂質、糖類などを決められた順番とスタイルで載せなければいけません。
日本式の「エネルギー・たんぱく質・脂質…」とは配置も表現も異なるため、そのままでは使えません。
まずは「英語化」と「米国のラベル形式に合わせる」ことが最初のチェックポイントです。
施設:FDA施設登録・GMP/必要に応じてHACCP(Seafood/Juice)やLACF届出
輸出を行う際、日本側の製造工場はFDA(米国食品医薬品局)への施設登録が必要です。
これは「この工場で作られた食品をアメリカに入れる」ための最低条件で、登録は2年ごとに更新されます。
登録そのものは「無料」で行うことができますが、米国内に連絡拠点を置く必要があるため、現地の代行業者に依頼することが一般的です。
米国以外のメーカーも年間数千件監査が行われています。監査も無償で、問題がなければ変わりなく米国への輸出ができますが、問題があった場合は有償で再監査を実施しなければいけないです。
また、工場の管理体制がGMP(適正製造規範)に沿っていることも前提になります。
さらに、品目によって追加の制度が求められることがあります。たとえば魚介類は「シーフードHACCP」、ジュースは「ジュースHACCP」、缶詰や瓶詰めは「低酸性食品の製造工程届出(LACF)」といった制度です。
つまり「どの商品を輸出するか」で工場の要件も変わるので、自社の工場が対象になるかを早めに確認することが大切です。
事前手続き:Prior Notice/原産国マーキング
アメリカに食品を輸出する際は、貨物が到着する前に「Prior Notice(事前通知)」をFDAに出すことが義務です。
これは輸入される食品の内容を事前に伝える仕組みで、輸入者や通関業者を通じて申請します。出さずに船積みすると、港で足止めされてしまいます。
また、商品や外装には「Made in Japan」や「Product of Japan」といった原産国表示が必ず必要です。これは米国税関(CBP)が確認するポイントで、欠けていると販売できません。ラベルや外箱にどこまで表示すべきかをチェックし、物流業者とも事前に打ち合わせをしておくと安心です。
原材料:添加物・着色料の適法性(USで許容か)
アメリカに食品を輸出する場合、日本で使える添加物や着色料でも、そのまま認められないことがあります。
FDA(食品医薬品局)は食品に使える成分を細かくリスト化しており、色素や保存料、甘味料などは「アメリカで許可されたものかどうか」を事前に確認しなければいけません。
例えば日本で一般的に使われている着色料の中には、アメリカでは表示義務が厳しかったり、そもそも認められていないものもあります。
また、一部一括表示が認められている場合もありますが、基本的に添加物は個別名を明記する必要があります。原材料の安全性は最も基本的なポイントなので、輸出前に規格書を整理し、輸入者と一緒に「この成分は米国でOKか」を突き合わせることが重要です。
米国側手配:FSVP対応が可能な輸入者の選定
このようにアメリカでは、輸入者が「この食品は安全で基準に合っている」と責任を持つ仕組みが整えられています。
これをFSVP(外国サプライヤー検証プログラム)と呼びます。
日本から輸出する企業がどれだけ準備をしても、最終的にはアメリカの輸入者が書類を確認し、定期的に検証を行うことが求められます。
そのため、輸入者選びは非常に重要です。FSVPの経験がある輸入者なら、ラベルの細かい修正点や必要な証明書の準備をサポートしてくれる場合もあります。
逆にFSVPに不慣れな輸入者だと、検査で止められてしまい販売開始が遅れることもあります。はじめて輸出に挑戦するメーカーこそ、「FSVP対応が得意なパートナー」を見つけることが、スムーズな輸出の近道といえるでしょう。
ラベル表示の最大のポイント(ここでつまずくと即NG)
ラベル表示は、アメリカ輸出で最も多くの差し戻しが起きる部分です。
たとえ商品そのものが問題なくても、ラベルが基準に合っていなければ販売は認められません。
つまり「ラベルを直せば通るのに」というケースが多いのです。基本的には英語表記が原則で、成分やアレルゲン、栄養成分などが決められた形式で載っていなければなりません。
日本語ラベルをそのまま英訳しただけでは足りないことも多いため、専用のフォーマットを用意する必要があります。ここからは、特に注意すべきポイントを順番に整理します。
表示言語:英語が原則/併記時は全必須情報を両言語で
当たり前ですが、食品のラベルは必ず英語で書かれていなければなりません。
もちろん日本語を残してもかまいませんが、その場合は「必須情報はすべてを両方の言語で載せる」必要があります。たとえば、原材料や保存方法が日本語だけになっていると、その時点で基準違反となります。
輸入後にラベルを貼り替える方法もありますが、現地での手間やコストがかかるため、最初から英語で作り込むほうが安心です。
消費者が一目で理解できるかどうかを意識すると、後でトラブルを防ぐことができます。
原材料表示:一般名称・配合順
原材料表示は、日本同様に「使っている量の多い順」に並べます。
ここで注意したいのが2%未満の成分です。アメリカでは少量成分はまとめて「Contains less than 2% of…」と記載する方法が認められています。
また、香料やスパイスは「spices」や「natural flavor」といった一括名で表示できますが、着色の目的で使う場合は個別に明記が必要です。
さらに添加物は、FDAが認めている名を正確に書く必要があります。
日本では一括名で曖昧に書ける部分でも、アメリカでは厳しく確認されるので、ここでの不備はよくあります。
栄養成分表示(Nutrition Facts):必須項目・Added Sugars・RACC・版面ルール
アメリカの食品パッケージには「Nutrition Facts」という専用フォーマットの栄養成分表示が必要です。
カロリーや脂質、糖質などの基本情報はもちろん、アメリカ特有の必須項目があります。
たとえば「Added Sugars(添加糖)」は日本にはない必須項目です。
また、表示する分量(Serving size)はRACCという基準で決められており、メーカーが勝手に設定することはできません。
文字の大きさや配置、太字のルールまで定められているため、単なる翻訳では済まない部分です。輸出前に分析値を整理し、アメリカ仕様の版面に作り直すことが求められます。
アレルギー表示:米国の“9大”アレルゲン(ゴマ追加)/“Contains:”表記
アメリカでは、食品アレルギーの事故を防ぐために主要なアレルゲンを必ず表示しなければなりません。
対象は卵・乳・小麦・落花生・木の実・大豆・魚・甲殻類に加え、2023年から「ゴマ」が追加されて9種類になりました。
表示方法は原材料名の中に「(milk)」と明記するか、Ingredientsの直後に「Contains: Milk, Wheat」とまとめる形のどちらかです。
日本では義務ではないゴマや特定のナッツ類が抜けやすいので注意が必要です。消費者が一目で危険を判断できるように、分かりやすい書き方を意識することが求められます。
遺伝子組換え表示(NBFDS/BE表示):対象・表示文言・BEマーク・非対象の扱い
アメリカでは、遺伝子組換え作物を使った食品には特別な表示が必要です。
これは「NBFDS(National Bioengineered Food Disclosure Standard)」、通称BE表示と呼ばれています。トウモロコシや大豆、ジャガイモなど、遺伝子組換えが広く使われている原料が対象になり、その成分を使っている場合にはパッケージに「bioengineered」マークや文言を入れなければいけません。
ただし、精製された油や砂糖のようにDNAやタンパク質が残っていないものは表示不要とされています。つまり同じ「大豆由来」でも、豆乳なら表示が必要で、大豆油なら不要といった違いがあるのです。こうした判断を誤ると差し戻しになるため、輸出前に「対象か非対象か」を一つずつ確認することが欠かせません。
日付・保存条件:Best if Used By/Use By/要冷蔵・開封後表示
賞味期限や保存方法の表記もアメリカでは独自のルールがあります。
日本の「賞味期限」「消費期限」と同じ感覚で書くと伝わりません。
一般的に「Best if Used By」は品質が保たれる期限を示し、「Use By」は安全上守るべき期限を示します。
さらに、冷蔵や冷凍が必要な場合は「Keep Refrigerated」「Keep Frozen」とはっきり書かなければなりません。開封後に冷蔵保存が必要なら「Refrigerate after opening」と追記します。
これらが欠けていると消費者に誤解を与えるため、通関時にも指摘を受けやすい項目です。
日本語ラベルの感覚をそのまま持ち込むのではなく、アメリカの消費者が分かりやすい言葉で表記することが重要です。
製造者・輸入者の氏名・住所表記:「Manufactured for / Distributed by」の使い分け
ラベルには製造者や輸入者の情報も明記しなければなりません。
ここでよく出てくるのが「Manufactured for」と「Distributed by」の違いです。
自社が直接製造した場合は「Manufactured by」を使いますが、他の工場で製造して自社ブランドで販売する場合は「Manufactured for」となります。
一方で、輸入者や販売代理店を示す場合は「Distributed by」を用います。つまり「誰が作り、誰が販売しているのか」をはっきりさせるのがルールです。
住所は消費者が問い合わせ可能な形式で載せる必要があります。
レーサビリティとロット管理
食品をアメリカに輸出する際には、商品がどのような経路で作られ、どのように市場に届いたのかを追跡できる仕組みが求められます。
特別パッケージに表示することはありません。
すでに多くのメーカーでは実施されているとは思います。
輸入先で問題が発生した場合、迅速に「どのロットに不具合があるのか」を特定し、回収や対応を行えるようにしておくことが欠かせません。
書類やラベルの管理をきちんと行うことで、輸入検査の段階での信頼度が上がり、万が一のときにも対応がスムーズになります。
ロットコードの実務(法律上の位置づけ/回収・在庫管理の要)
ロットコードとは、同じ条件で製造された商品のまとまりを識別するための番号です。
アメリカでは法律で「必ず印字しなければならない」とまでは決められていませんが、事実上強く推奨され輸入者や小売業者が求めます。
問題が発生したときに回収を効率的に行うためです。
もしロットがなければ、全量を回収せざるを得ず、莫大なコストがかかります。さらに在庫管理にも役立ち、どの製造日に作られたものがどこにあるかを把握できます。
印字する際には、製造日や工場コードを組み合わせて一意の番号にすると便利です。
法律で明確に義務とされていない部分でも、輸出ビジネスの「信頼」を守る意味で必須と考えるべき項目です。
包装資材・外装の落とし穴
食品を輸出する際にはアメリカに限らず、包装資材や外装にも注意が必要です。
見落とされやすいのですが、アメリカの規制では容器やインク、接着剤といった「食品に触れるもの」まで対象になります。
また近年は環境や健康への意識が高まり、化学物質に関する規制も強化されています。
さらに輸送用の木材パレットや箱には国際基準のマーキングが義務付けられており、忘れると通関でストップしてしまいます。
包装に関する不備は販売どころか入国すらできなくなるため、計画の早い段階で確認することが重要です。
食品接触材(FCS)とFDA適合性:樹脂・コーティング・インク・接着剤
アメリカでは食品に直接触れる包装材を「Food Contact Substance(FCS)」と呼び、FDAの適合性が求められます。
具体的には、プラスチック容器の樹脂、缶や瓶の内側に塗るコーティング、印刷インク、接着剤などが対象です。
たとえば、プラスチック製のトレーが高温で成分を溶出する可能性がある場合や、インクが食品に移行する可能性がある場合は問題になります。
日本ではあまり意識されない部分ですが、アメリカではこの点を厳しくチェックします。輸出前に資材メーカーからFDA準拠の証明書を入手しておくと安心です。
近年の化学物質規制(PFAS/フタル酸/BPAなど)と州規制リスク
近年は化学物質に関する規制が強化されています。
特にアメリカでは、食品包装に使われる「PFAS(有機フッ素化合物)」や「フタル酸エステル類」、プラスチックに使われる「BPA(ビスフェノールA)」などが問題視されています。
これらは健康への影響が懸念されており、州ごとに独自規制を導入する動きも広がっています。例えばカリフォルニア州では食品包装にPFASを含む資材を禁止する法律がすでに施行されています。
つまり「連邦レベルではOKでも州レベルでNG」というケースがあるのです。
輸出計画の際には販売予定の州の規制も必ず確認することが、トラブルを避けるポイントになります。
木材梱包(ISPM-15)マーキング必須/未処理のリスク
輸送に使う木材パレットや木箱は、国際基準の「ISPM-15」に従った処理とマーキングが必要です。
熱処理や燻蒸処理をしたことを示す焼印が押されていなければ、アメリカに入国した時点で貨物が止められてしまいます。
処理されていない木材は害虫の持ち込みにつながるため、非常に厳しく取り締まられているのです。
特に日本では木材パレットを再利用することが多いため、輸出用に使うものは必ずマークを確認しましょう。輸送途中で交換が必要になる場合もあるので、物流業者とも事前に相談しておくと安心です。
施設・衛生要件と品目別追加要件
食品の安全性は、アメリカに輸出する際の最大のチェックポイントです。製品だけでなく、それを作る施設の登録や衛生管理が適切であることを示さなければなりません。
ここではFDA登録や文書整備、さらに品目ごとの追加要件について整理します。
FDA施設登録(U.S. Agent/2年ごとの更新)
日本で製造した食品をアメリカに輸出する場合、工場は必ずFDAに施設登録を行う必要があります。
この登録は2年ごとに更新され、期限を過ぎると自動的に無効になってしまいます。
また、登録には「U.S. Agent」と呼ばれるアメリカ国内の代理人を指定しなければなりません。
代理人はFDAからの通知や緊急連絡を受ける役割を担うため、信頼できるパートナーを選ぶことが重要です。施設登録は輸出の第一歩であり、これがなければ商品はアメリカ市場に入れません。
GMP/FSMA予防管理/文書整備のポイント
施設登録だけでなく、日常の衛生管理も基準に合っていることが求められます。
基本となるのがGMP(適正製造規範)で、工場の清掃、設備点検、従業員の衛生教育などを体系的に行うことが必要です。さらにアメリカではFSMA(食品安全強化法)に基づき、予防管理計画を作成し、危害の可能性を事前に把握して対策を取ることが義務づけられています。
これらを証明するためには、マニュアルや点検記録をきちんと残しておくことが不可欠です。
現場の実務と書類の両方をそろえることで、検査時にもスムーズに対応できます。
品目別:Seafood HACCP/Juice HACCP/LACF(工程届出)
品目によっては、さらに追加の要件が課されます。
水産加工品は「Seafood HACCP」、果汁やジュースは「Juice HACCP」に基づいて危害要因を管理しなければなりません。また、缶詰や瓶詰のような「低酸性食品(LACF)」は、製造工程をFDAに事前届出する必要があります。
これらの制度は、特に食中毒や微生物リスクが高い食品を対象としています。該当する商品を扱う場合は、輸出前に専門家の協力を得てプランを作成するのが現実的です。
USDA管轄(肉・卵製品)に触れる場合の注意(日本側施設リスト・衛生証明)
肉や卵を含む食品を輸出する場合は、FDAではなくUSDA(農務省)の管轄になります。
例えばソースや惣菜に少量でも肉や卵が入っていると対象になる場合があります。
USDAの輸出を許可されるには、日本側の工場がUSDA承認施設リストに掲載されている必要があります。さらに、輸出時には動物検疫や衛生証明書の取得が必須です。
日本で一般的な加工食品でも、成分に動物由来のものが入っているだけでUSDAルールが適用されることがあるため、早めの確認が必要です。
通関・通知・検査の流れ
アメリカ輸出では、商品を作るだけでなく「どの順番でどんな手続きが必要か」を理解しておくことがとても大切です。流れを把握していないと、通関で止まってしまったり、販売開始が大きく遅れることがあります。ここでは「事前の準備 → 出荷前 → 到着後」の順に分けて説明します。タイムラインで整理すれば、どこで時間がかかるのか、どこに注意するべきかが見えてきます。
📦 アメリカ食品輸出の全体フロー
事前準備
- ラベル・原材料の適合確認
- 添加物・着色料のFDA適法性チェック
- 栄養成分分析の実施
施設登録
- FDA施設登録(2年ごと更新)
- U.S. Agent(米国代理人)の指定
- 必要に応じてHACCP/LACF届出
輸入者確認・出荷準備
- FSVP対応可能な輸入者の選定
- Prior Notice(事前通知)の準備
- Invoice、Packing List等の書類作成
- 原産国マーキングの確認
通関
- FDAによるチェック
- CBP(税関)での通関手続き
- 不備があれば保管または返送
市場流通開始
FDAとCBPのリリース後、正式に米国市場での販売が可能になります
⏱️ 全体で通常2〜6ヶ月程度(品目や準備状況により変動)
事前:ラベル・原材料適合確認 → 施設登録 → 輸入者/FSVP確認
輸出の最初のステップは「製品がアメリカ基準に合っているか」を確認することです。
ラベルや原材料がFDAルールに沿っているかをチェックし、添加物や色素がアメリカで認められているかも事前に調べる必要があります。
次に、製造施設がFDAに登録されていることを確認します。
施設登録がないと輸入は認められません。
さらに、輸入者がFSVP(外国サプライヤー検証プログラム)に対応できるかを確認し、書類のやり取り体制を整えます。これらをきちんと行うことで、後のトラブルを大きく減らすことができます。
出荷書類
提出は通関業者を通じて行うのが一般的です。
併せて、インボイス(Invoice)、パッキングリスト(Packing List)、原産国表示を含んだ外装など、基本的な出荷書類を準備します。
冷蔵や冷凍品であれば「温度管理条件」も明記する必要があります。これらをきちんと揃えておけば、スムーズに出荷できます。
到着後:FDAリリース → CBP通関 → 市場流通
貨物がアメリカに到着すると、まずFDAによるチェックが行われます。
ここでは荷物に不備がないかが確認されます。その後、CBP(税関)が通関手続きを進めます。
輸入書類に不備がなければ、正式に市場へ流通することが可能になります。
すべてが問題なく進めば数日でクリアできますが、不備が見つかると長期保管や返送につながるため注意が必要です。
必要書類まとめ(まず何を揃える?)
輸出準備で一番迷いやすいのが「どの書類を揃えればいいのか」という点です。
ラベルや成分表、施設登録の控え、輸送書類など、必要なものが幅広くあります。
最初から完璧に揃える必要はありませんが、一覧を把握して順番に準備すれば大きなトラブルを防げます。ここでは実務でよく求められる代表的な書類を整理します。
📋 輸出に必要な書類チェックリスト
📦 ラベル・表示関連
AI/印刷用データ、英語校閲済み、すべての必須項目を含む
RACC準拠のServing size、Added Sugars含む全必須項目
米国9大アレルゲン対応(ゴマ含む)、”Contains:”形式
対象原料を使用する場合のBioengineered表記またはマーク
🧪 原材料・成分関連
全原材料の詳細情報、添加物の個別名称を含む
公的機関または認定ラボによる分析値、または計算根拠
使用添加物がすべて米国で許可されているかの確認書類
供給者証明書、GMO非使用証明など
🏭 施設関連
登録番号、U.S. Agent情報、有効期限(2年更新)確認
衛生管理マニュアル、危害要因分析、点検記録
【水産加工品のみ】魚介類を扱う場合必須
【ジュースのみ】果汁・野菜ジュースを扱う場合必須
【缶詰・瓶詰のみ】低酸性食品の場合FDA事前届出必須
📄 取引・輸送関連
輸出者・輸入者情報、商品詳細、金額を含む
箱数、重量、容量などの詳細
“Made in Japan”または”Product of Japan”の外装表示
通関業者経由でFDAへ提出、到着前に必須
木製パレット・木箱使用時、熱処理済み焼印必須
【肉・卵製品のみ】USDA管轄商品の場合必須
🤝 輸入者側(FSVP関連)
外国サプライヤー検証プログラムに対応できるパートナー
上記すべての書類を輸入者と共有し、事前レビュー実施
💡 ヒント: 黄色背景の項目は品目によって必要になります。自社製品がどのカテゴリーに該当するか事前に確認しましょう
パッケージ&ラベル完全版(AI/印刷用データ、英語校閲済み)
最初に揃えるべきなのは、アメリカ仕様のラベルデータです。
英語表記が正しいかどうか、必須項目が入っているかを確認したうえで、AI形式や印刷用の完全版データを用意しておきましょう。
現地輸入者と連絡を取り、事前に輸入できるのか確認をとってもらうことが最適です。
おそらく一番最初に行う準備となります。
原材料規格書・アレルゲン/BE関係の裏付け(供給者証明・分析値)
原材料の規格書は輸出に必須です。
特にアレルゲンや遺伝子組換え(BE表示)に関する情報は、輸入者がFSVP対応をするうえで欠かせません。供給者からの証明書や、必要であれば成分分析値を用意しておくと安心です。曖昧なまま進めると、通関で止まったり販売後に指摘を受けたりするリスクがあります。
証明は一度揃えておけば他の商品にも流用できるケースが多いため、早めに取り寄せてファイル化しておくと効率的です。
実務ではこちらも現地の輸入商社に書類を提出しておくことになります。
ラベルと一緒にチェックすることが一般的です。
栄養成分(分析レポート or 計算根拠)/RACC準拠
アメリカでは「Nutrition Facts」を正しく作成するために、栄養成分値の根拠が必要です。自社で分析を依頼したレポートや、既存データから計算した根拠をまとめておきましょう。
また日本では表示が必要のない成分も、アメリカでは必要になるので検査を行わなければならないです。
各自治体で補助金の対象になっているケースが多いので、輸出が決まりそうであれば商工会議所等を通じ検査しておくとよいです。
特にServing sizeはRACC(Reference Amounts Customarily Consumed)という基準で決められるため、日本の感覚で自由に設定できません。
輸入商社によっては、商品規格書からラベルデザイン案を作ってくれるところもあります。
施設関連(FDA登録、HACCP/予防管理手順、LACF届出控 など)
施設関連の書類も重要です。
FDAの登録番号、HACCPプランや予防管理手順書、缶詰や瓶詰であればLACFの届出控などを揃えておきましょう。これらは通関や輸入者の確認だけでなく、突発的なFDA査察にも対応するために必要です。紙ベースでもデータでも良いので、すぐに提示できるように整理しておくと安心です。
取引書類(Invoice/Packing、原産地表示、必要に応じ衛生証明)
最後に、出荷に直接必要な取引書類です。
インボイス(Invoice)、パッキングリスト(Packing List)、原産地表示の入った外装資料は必須です。
肉や卵製品を含む場合は、検疫証明や衛生証明書が追加で必要になります。
これらの書類が揃っていなければ通関はできません。物流業者や通関業者と早めに確認し、輸出前に不足がないかを徹底的にチェックすることが重要です。
コストと体制:自走かアウトソースか
アメリカ輸出を考えるときにぶつかるのが「体制」の問題です。
自社で進めるのか、それとも専門の業者に任せるのかで必要な資金や社内の負担は大きく変わります。
ここでは代表的な費用の内訳と、内製か外注かを判断するための視点を紹介します。
初期コストの内訳(ラベル作成・分析・登録・翻訳・梱包対応)
輸出準備で発生する初期コストは多岐にわたります。
まずはラベルの英語化とデザイン修正が必要で、場合によっては数万円から数十万円かかります。
さらに栄養成分分析や添加物確認のための試験費用、FDA施設登録料、翻訳費用なども加わります。
加えて、外装や梱包をアメリカ仕様に合わせるためのコストも発生します。
トータルで見ると、最初の1商品で数十万円単位の投資になることが一般的です。
これらを事前に見積もっておけば、急な出費に慌てずに対応できます。
内製でやる場合のチェックポイントと限界
社内で輸出準備を進める場合、コストは抑えられますが担当者の負担は大きくなります。
チェックポイントは「FDAの規則を正しく理解できるか」「英語のラベルを作り込めるか」「必要な証明書を自力で取り寄せられるか」「現地代理人とやり取りができるのか」です。
ある程度の英語力と規制の知識があれば進められます。
しかし初めての輸出では、書類の不備やラベルの修正で通関が遅れるリスクが高まります。
時間と労力をどこまで割けるかが、内製の限界を決める要因になります。
プロに任せるメリット(差戻し率・リードタイム短縮・社内負担軽減)
外部の専門家やコンサルに依頼する最大のメリットは「輸出ができないリスク減らせること」です。
経験のある業者ならラベルの細かい修正や書類の不足に気づけるため、基本的に事前のチェックをすませてから輸出を行うのでストップを防げます。
また、初めての案件では時間がかかりがちですが、専門家が入ればリードタイムを短縮でき、スケジュールが読みやすくなります。
さらに社内の担当者は本来の業務に集中できるので、全体的な負担も軽くなります。コストはかかりますが、失敗による遅延や返品を考えれば十分に投資価値があります。
まず着手する3ステップ(今日から動ける)
「何から始めればいいのか」で止まってしまうと、せっかくの商談も前に進みません。
最短で判断し、ムダ戻りを減らすための第一歩は、
①製品群の棚卸し
②英語ラベルのドラフト作成
③米国側パートナーの仮当て
三つを同時並行で回すことです。
全社プロジェクトにせずとも、担当者と品質管理、営業の小さな横断チームで十分に始められます。
まずはSKUを絞って1品を“通す”ことを目標に据えると、要件の理解が一気に進み、他SKUへの横展開が容易になります。
各ステップで「自社で決められること」と「外部に委ねること」を切り分け、判断の速さを意識して進めましょう。最初の一歩を踏み出せば、必要書類やチェック項目が自然に見えてきます。
製品群の棚卸し(成分・製法・pH/水分活性・温度帯)
はじめに全SKUの“事実”をそろえます。商品規格書から原材料配合、添加物・着色料の有無、アレルゲン、遺伝子組換え由来の可能性、動物由来成分(肉・卵・乳)が入るか、製法の要点(加熱条件・殺菌方式)を整理してください。
温度帯(常温・冷蔵・冷凍)、賞味期間、保管条件、想定サービング量も書いておくと次工程が楽になります。
それぞれアメリカの基準に適合しているのか、不足はあるかとチェックして不備を見つけます。
英語ラベルのドラフト作成(Nutrition Facts/アレルゲン/BEを含む)
棚卸しの事実をもとに、英語ラベルのドラフトを一気に作ります。
Nutrition FactsはRACC(米国基準の1回量)に合わせてServing sizeを設定し、Calories、脂質、ナトリウム、炭水化物、食物繊維、Total/Added Sugars、たんぱく質、ビタミンD・カルシウム・鉄・カリウムまで必須項目をレイアウトします。
Ingredientsは配合順で一般名称に置き換え、2%未満は“Contains less than 2% of …”でまとめる方法も検討しましょう。
アレルギーは“Contains: Milk, Wheat, Sesame”のように明確に。
BE対象なら“bioengineered”の文言またはBEマークを配置します。
保存条件は“Keep Refrigerated/Keep Frozen”“Refrigerate after opening”を忘れずに、原産国表示“Product of Japan”、責任表記“Manufactured by/for”“Distributed by”と住所も入れます。
仮ドラフトを作っておくと、輸入者やパートナーが決まった場合スムーズにやり取りができます。
、FSVP観点の指摘を早期にもらうと手戻りが減ります。
米国側パートナー(輸入者/FSVP)&ロジ手配の仮当て
ラベルの仮版と並行して、米国側の体制を仮置きします。
FSVPに対応できる輸入者(または自社子会社)を候補リスト化し、役割を明確にしましょう。また配送と日本の通関等を行ってくれる乙仲も同時に当てておくと安心です。
最初はサンプル搬入の小ロットで通関の“型”を試し、本船の前に詰まりを洗い出します。NDAを結んだ上で、原材料規格書、アレルゲン表、BE判断根拠、施設登録情報、LACFやHACCPの控えなどレビュー資料を安全に共有すると、輸入者のFSVPチェックが進みます。
到着空港・港と販売州が決まれば、州独自規制の有無も早期確認が可能です。
仮当てでも良いので、窓口とタイムラインを最初に引くのが成功の近道になります。
まとめ:巨大市場に“最短で出す”には準備の順番が大切
アメリカ市場は規制が複雑で、初めて挑戦する企業にとってハードルが高く感じられます。
しかし、順序を整理して取り組めば決して不可能ではありません。
重要なのは「何を先に決め、何を後で対応するか」の優先順位です。
ラベルや成分確認、施設登録、FSVPなど、一度にすべてを完璧に整える必要はなく、段階的に進めればクリアできます。
むしろ順番を間違えて手戻りすると時間とコストが倍増してしまうため、準備の順序こそが最大の成功要因と言えるでしょう。
規制は多いが、型に沿えば通る/社内だけで抱えない
FDAの規制、州ごとの禁止物質、包装資材のチェックなど、確かにルールは多岐にわたります。
それぞれに「ルール」が存在し、そのルールに沿えば問題なく通ります。
自社だけで全てを抱え込まず、輸入者やコンサルタントなど外部の力を借りることが成功への近道です。
経験のあるパートナーと協力することで、リスクを最小限にできます。
「まずは1SKUを通す」→ 横展開の設計
最初から全商品を輸出しようとすると、準備の大変さに押しつぶされてしまいます。
おすすめは「まずは1SKUを通す」ことです。
売れる商品(売りたい商品)を一つ選び、ラベル作成から通関までを実際に経験してみましょう。
その一連の流れが社内に蓄積されれば、他の商品に横展開するのは格段にスムーズになります。
アメリカ市場は巨大で、成功すれば継続的な売上が見込めます。小さく始めて大きく育てる、これが現実的で確実なアプローチです。