自社の食品を海外に販売したいが、限られた予算で具体的な取引先を見つける方法がわからない。仲介業者を通さず直接バイヤーと交渉したいが、どこから始めればよいのか迷っている。そんな中小規模の食品事業者の方に向けて、この記事では食品輸出商談会への参加から成約までの全プロセスを詳しく解説します。
JETROが開催する商談会の基本から、参加募集の応募方法、事前準備のステップ、当日の効果的な進め方、そして商談後のフォローアップまで、実践的なノウハウを網羅的にお伝えします。海外見本市と比べてコストを抑えながら、国内にいながら海外バイヤーと直接商談できる食品輸出商談会は、初めて輸出に挑戦する事業者にとって最適な機会です。
食品輸出商談会とは?初めての事業者が知っておくべき基本
食品輸出商談会は、日本国内にいながら海外のバイヤーと直接商談できる貴重な機会です。海外に製品を販売したい日本の食品メーカーと、日本の食品を仕入れたい海外のバイヤーが一堂に会し、対面で商談を行います。
通常、海外のバイヤーと取引を始めるには、海外の展示会に出展したり、現地に営業に行ったりする必要があります。しかし食品輸出商談会では、海外から来日したバイヤーと国内で商談できるため、渡航費や宿泊費などのコストを大幅に削減できるのが特徴です。特に輸出経験が少ない中小規模の事業者にとっては、初めての海外取引に挑戦する最適なステップとなります。
主催者が事前に海外バイヤーを招聘し、商談の場をセッティングしてくれるため、自分で取引先を探す手間も省けます。通訳サポートが用意されている商談会も多く、英語に自信がない方でも安心して参加できる環境が整っています。
食品輸出商談会の仕組みと特徴
食品輸出商談会の基本的な仕組みは、事前マッチングと当日の商談という二段階で構成されています。まず参加を申し込むと、自社の製品情報や希望する取引条件などを登録します。主催者側は、招聘した海外バイヤーの情報も収集しており、双方の希望をマッチングさせて商談スケジュールを組みます。
商談会当日は、決められた時間枠の中で複数のバイヤーと順番に面談していく形式が一般的です。1回の商談時間は20分から30分程度で、その時間内に自社製品のプレゼンテーションを行い、バイヤーからの質問に答えます。興味を持ってもらえれば、商談会後に継続的なやり取りが始まります。
大きな特徴は、主催者によるサポート体制が充実していることです。商談会の前には説明会や準備セミナーが開催され、初めて参加する事業者でも安心して臨めるよう配慮されています。また、通訳スタッフの配置や商談記録のサポートなど、スムーズな商談を実現するための支援も用意されています。
海外見本市との違いとメリット
海外の見本市に出展する場合、渡航費、宿泊費、ブース設営費、輸送費などで数百万円のコストがかかることも珍しくありません。一方、国内で開催される食品輸出商談会であれば、これらの費用を大幅に抑えられます。参加費は無料から数万円程度で、移動も国内のため日帰りや一泊程度で済みます。
また、海外の見本市では不特定多数の来場者が訪れるため、本当に興味のあるバイヤーと出会えるかどうかは運次第です。しかし食品輸出商談会では、事前マッチングにより自社製品に関心を持つバイヤーとの商談が設定されるため、効率的に見込み客と出会えます。
さらに、言語の壁も大きな違いです。海外見本市では基本的にすべて英語や現地語での対応が求められますが、国内の商談会では通訳サポートが提供されることが多く、語学力に不安がある事業者でも参加しやすい環境が整っています。初めて輸出に挑戦する中小企業にとって、リスクを抑えながら海外展開の可能性を探れる点が最大のメリットといえます。
商談会で出会える海外バイヤーの種類
| バイヤータイプ | メリット | デメリット | 最小ロット | 向いている商品 |
|---|---|---|---|---|
| 小売業者 (スーパー・デパート) |
✓ 早期の店頭販売が可能 ✓ 直接消費者に届く ✓ ブランド認知度向上 |
× 単価交渉が厳しい × 品質基準が厳格 × 返品リスクあり |
大 (数百〜数千個) |
パッケージ商品 賞味期限が長い商品 |
| 卸売商社 (ディストリビューター) |
✓ 複数店舗への販路拡大 ✓ 物流を任せられる ✓ 現地ネットワーク活用 |
× 中間マージン発生 × 最終顧客が見えにくい × 価格競争力が必要 |
中〜大 (数百個〜) |
汎用性の高い商品 コストパフォーマンス重視 |
| 業務用バイヤー (レストラン・ホテル) |
✓ 継続的な取引関係 ✓ 品質重視の評価 ✓ 柔軟な対応が可能 |
× ロット数が少なめ × 個別対応が必要 × 納期が厳格 |
小〜中 (数十〜数百個) |
高品質・本格食材 業務用サイズ商品 |
食品輸出商談会に参加する海外バイヤーは、大きく分けて三つのタイプがあります。一つ目は、現地のスーパーマーケットやデパートなどの小売業者です。彼らは直接店頭に並べる商品を探しており、成約すれば比較的早く店舗での販売が実現します。
二つ目は、食品の輸入・卸売を専門とする商社やディストリビューターです。彼らは現地の複数の小売店に商品を流通させるネットワークを持っており、一度取引が成立すれば大きな販路拡大につながります。ただし、中間マージンが発生するため、価格設定には注意が必要です。
三つ目は、レストランやホテルなどの業務用バイヤーです。特に日本食レストランや高級ホテルは、本格的な日本の食材を求めているケースが多く、品質重視の取引が期待できます。ロット数は小売向けより少ない場合もありますが、継続的な取引関係を築きやすい特徴があります。
商談会では、これらのバイヤーが複数の国や地域から参加しているため、自社製品に最も適した取引先を見つけることができます。事前に各バイヤーの情報を確認し、どのタイプのバイヤーと優先的に商談したいかを明確にしておくことが成功のカギとなります。
食品輸出商談会の開催情報とJETROの支援内容
JETRO(日本貿易振興機構)は、日本の食品輸出を促進するため、年間を通じて様々な商談会を開催しています。東京、大阪、名古屋などの主要都市で定期的に実施されており、それぞれの地域の特産品や強みを活かした商談の場が設けられています。
JETROが提供する支援は商談会の開催だけにとどまりません。参加事業者向けに、輸出に必要な基礎知識を学べるセミナーや、商談スキルを高めるための研修プログラムも用意されています。また、各国の輸入規制や商習慣に関する情報提供、現地市場のトレンド分析なども無料で利用できます。
さらに、商談会後のフォローアップ支援も充実しています。海外バイヤーとの継続的なやり取りをサポートするアドバイザー制度や、輸出実務に関する個別相談窓口なども設置されており、初めて輸出に取り組む事業者でも安心して進められる体制が整っています。JETROの全国ネットワークを活用すれば、地方の中小企業でも海外展開のチャンスを掴むことができます。
FOODEX JAPANやSMTSでの商談機会
FOODEX JAPAN(国際食品・飲料展)は、アジア最大級の食品・飲料専門展示会として毎年3月に幕張メッセで開催されます。この期間中、JETROは会場内で食品輸出商談会を同時開催しており、展示会に訪れる世界各国のバイヤーと商談できる絶好の機会となっています。展示会全体で約3,000社が出展し、80か国以上から約8万人のバイヤーが来場するため、多様な商談チャンスが生まれます。
SMTS(スーパーマーケット・トレードショー)は、毎年2月に開催される日本最大級の小売・流通業界向け展示会です。こちらでもJETROが食品輸出商談会を実施しており、特にアジア圏のスーパーマーケットチェーンのバイヤーと多く出会えます。国内の小売向け商談と海外輸出商談を同時に進められる点も魅力です。
これらの大規模展示会と連動した商談会に参加するメリットは、商談だけでなく会場全体を見学できることです。競合他社の動向や最新の食品トレンド、パッケージデザインの傾向なども同時に把握できるため、自社製品の改善や今後の戦略立案にも役立ちます。ただし、参加希望者が多いため早めの申し込みが必要です。
食品輸出商談会への参加募集要項と応募方法
食品輸出商談会への参加を決めたら、まず主催者のウェブサイトで募集要項を確認しましょう。JETROをはじめとする主催団体は、商談会の2〜3か月前から参加事業者の募集を開始します。募集要項には、対象となる事業者の条件、取り扱える商品カテゴリー、定員、参加費、申込期限などが詳しく記載されています。
応募方法は、多くの場合オンラインでの申し込みフォーム入力となります。企業情報、出展希望商品の詳細、希望する商談相手の国や地域、自社の輸出経験などを記入します。商品写真や会社案内資料のアップロードを求められることもあるため、事前に準備しておくとスムーズです。
申し込み後、主催者による審査が行われます。商談会のテーマや招聘するバイヤーのニーズに合った商品であるか、輸出に対する本気度があるかなどが評価されます。審査に通過すれば正式に参加が決定し、詳細な案内が送られてきます。人気の高い商談会では定員オーバーで参加できない場合もあるため、複数の商談会に応募することも検討しましょう。
参加対象となる事業者の条件
食品輸出商談会の参加対象は、基本的に日本国内で食品の製造または販売を行っている事業者です。製造メーカーだけでなく、複数のメーカーの商品を扱う商社や卸売業者も参加できる場合があります。ただし、商談会によっては製造者のみを対象とするケースもあるため、募集要項を必ず確認してください。
企業規模については、中小企業を優先する商談会が多い傾向にあります。大企業はすでに独自の販路を持っていることが多いため、輸出経験が少ない中小規模の事業者に機会を提供することを目的としているためです。従業員数や売上高などの基準が設けられている場合もあります。
輸出経験の有無については、初心者歓迎の商談会もあれば、ある程度の輸出実績を求められる商談会もあります。初めて挑戦する方は「輸出未経験者歓迎」と明記されている商談会を選ぶと安心です。また、食品衛生法などの国内法規を遵守していることや、輸出に必要な各種証明書を取得できる体制があることなども、参加条件として求められることがあります。
募集期間と定員の確認方法
商談会の募集期間は、開催日の2〜3か月前から始まるのが一般的です。たとえば3月開催の商談会であれば、12月下旬から1月にかけて募集が開始されます。募集期間は通常1か月程度ですが、定員に達し次第締め切られることも多いため、早めの応募が重要です。
定員は商談会の規模によって異なりますが、20社から50社程度が一般的です。大規模な商談会では100社以上が参加することもあります。定員が少ない商談会ほど、各参加者が多くの商談時間を確保できるメリットがある一方、参加のハードルも高くなります。
募集情報の確認方法は、主催者のウェブサイトをこまめにチェックするのが基本です。JETROの場合は、JETROのイベント情報ページや、地域ごとの貿易情報センターのサイトで最新情報が公開されます。また、メールマガジンに登録しておけば、新しい商談会の募集開始時に通知を受け取れます。地域の商工会議所や中小企業支援センターでも情報提供しているため、複数のルートで情報を集めることをおすすめします。
参加費用と必要書類の準備
食品輸出商談会の参加費は、主催者や商談会の規模によって大きく異なります。JETROが主催する商談会の多くは無料または1〜3万円程度の低額に設定されており、中小企業でも参加しやすい価格帯です。一方、民間企業が主催する商談会では5〜10万円程度かかる場合もあります。
参加費に含まれる内容も確認が必要です。通常、商談ブースの利用料や事前マッチングサービス、通訳サポートなどが含まれています。ただし、商品サンプルの準備費用や当日の交通費、宿泊費などは自己負担となります。商品を試食してもらう予定であれば、サンプルの準備コストも予算に入れておきましょう。
必要書類としては、まず会社案内や製品カタログが求められます。これらは英語版が必須となることが多いため、事前に翻訳を済ませておく必要があります。また、商品の原材料表や栄養成分表、製造工程を説明する資料なども用意しておくと、バイヤーからの質問にスムーズに答えられます。食品衛生に関する証明書や、すでに取得している認証(HACCP、有機JASなど)のコピーも準備しておくと信頼性が高まります。
食品輸出商談会の申込から商談準備までのステップ
参加が正式に決定したら、商談会当日までの準備期間を有効に活用することが成功のカギとなります。主催者から送られてくる案内メールや準備マニュアルをしっかり読み込み、必要な準備を計画的に進めていきましょう。準備不足のまま当日を迎えると、せっかくのチャンスを活かしきれません。
多くの商談会では、参加決定後に説明会やセミナーが開催されます。商談会の流れ、効果的なプレゼンテーション方法、輸出実務の基礎知識などを学べる貴重な機会です。可能な限り参加して、疑問点を事前に解消しておくことをおすすめします。
また、この期間中に自社の輸出体制を整えることも重要です。最低注文数量(MOQ)や支払条件、納期など、海外取引の基本条件を社内で決めておきましょう。バイヤーから具体的な条件を聞かれた際に、その場で答えられないと信頼を失う可能性があります。事前準備の質が商談の成否を大きく左右するのです。
STEP1:事前マッチング制度の活用法
事前マッチング制度は、効率的な商談を実現するための重要な仕組みです。参加が決定すると、主催者から招聘予定のバイヤーリストが提供されます。各バイヤーの会社名、所在国、取扱商品カテゴリー、仕入れ希望品目などの情報が含まれており、この情報をもとに商談を希望するバイヤーを選択します。
マッチング申請では、第一希望から第五希望程度まで優先順位をつけて提出するのが一般的です。選択の際は、自社製品との相性だけでなく、バイヤーの規模や実績、取引条件なども考慮しましょう。大手スーパーチェーンは魅力的ですが、要求される数量や品質基準が厳しい場合があります。一方、中小規模のバイヤーは柔軟な取引が可能なこともあります。
主催者側でもバイヤーの希望を収集しており、双方の希望がマッチすれば商談が設定されます。必ずしも第一希望のバイヤーと商談できるとは限りませんが、マッチング精度を高めるため、希望理由や自社製品の強みを丁寧に記入することが大切です。商談スケジュールが確定したら、各バイヤーに合わせた提案内容を準備しましょう。
STEP2:商品資料と英語プレゼン資料の作成
海外バイヤーとの商談では、言葉の壁を越えて商品の魅力を伝える必要があります。そのため、視覚的に分かりやすい英語資料の準備が不可欠です。まず商品カタログは、写真を大きく使い、商品の特徴を簡潔な英文で説明しましょう。専門用語は避け、中学英語レベルで理解できる表現を心がけます。
商品の差別化ポイントを明確に伝えることも重要です。「日本の伝統的な製法で作られている」「無添加・オーガニック」「受賞歴がある」など、海外バイヤーが興味を持つ要素を前面に出します。また、原材料の産地や製造工程の写真を入れると、品質へのこだわりが伝わりやすくなります。
価格表や取引条件シートも英語で用意しておきましょう。FOB価格(本船渡し価格)やCIF価格(運賃・保険料込み価格)など、国際取引で使われる価格条件を理解しておく必要があります。最小注文数量、支払条件(前払い、信用状など)、納期なども明記します。プレゼン資料はPowerPointで5〜10枚程度にまとめ、20分の商談時間内で説明できるボリュームに調整することがポイントです。
STEP3:ターゲットバイヤーの選定と事前調査
商談する各バイヤーについて、事前に徹底的な調査を行うことで商談の成功率が大きく高まります。まずバイヤーの会社名でインターネット検索し、ウェブサイトや関連ニュースをチェックしましょう。どのような商品を扱っているか、店舗数や事業規模はどれくらいか、最近の動向などを把握します。
SNSアカウントがあれば、そちらも確認しておくと良いでしょう。実際に販売している商品の写真や、顧客からの反応などが分かり、バイヤーが求める商品イメージをつかめます。特にInstagramやFacebookでは、店舗の雰囲気や扱っている商品の価格帯なども確認できます。
調査結果をもとに、各バイヤー向けにカスタマイズした提案を準備します。たとえば、高級志向のデパートには品質とストーリー性を強調し、大衆向けスーパーには価格競争力と安定供給力をアピールするなど、相手に合わせた戦略が必要です。また、そのバイヤーの国や地域での日本食品のトレンドや、輸入規制についても事前に調べておくと、具体的な提案ができます。
食品輸出商談会当日の効果的な進め方
商談会当日は、朝早めに会場入りして準備を整えましょう。ブースの設営、商品サンプルの陳列、資料の配置などを確認します。会場では複数のバイヤーと連続して商談するため、体力も必要です。水分補給や休憩のタイミングも考えておくと良いでしょう。
服装はビジネスフォーマルが基本ですが、商品の特性に合わせて工夫する余地もあります。たとえば、地方の伝統食品を扱う場合は、その地域の要素を取り入れた装いで個性を出すのも効果的です。ただし、清潔感と信頼感を損なわない範囲で行いましょう。
商談中は、相手の話をよく聞く姿勢が大切です。一方的に商品説明をするのではなく、バイヤーが何を求めているのか、どんな課題を抱えているのかを理解することで、より的確な提案ができます。商談終了後は、すぐに次の商談が始まるため、メモを素早く取り、気づいた点を記録しておくことが重要です。
商談形式の理解とブース運営のコツ
食品輸出商談会の形式は、大きく分けて「ブース型」と「テーブル型」があります。ブース型では、各参加企業に小さなブースが割り当てられ、そこにバイヤーが訪問してくる形式です。商品サンプルを陳列したり、ポスターを掲示したりして、視覚的なアピールができます。
テーブル型は、参加企業とバイヤーがテーブルを挟んで向かい合い、決められた時間で順番に商談していく形式です。ブース型ほど自由な演出はできませんが、資料やサンプルをテーブル上に並べて効果的に説明できます。どちらの形式でも、限られた時間内で最大限の印象を残すことが目標です。
ブース運営のコツは、商品サンプルの見せ方にあります。試食用サンプルは、衛生的に小分けにして、すぐに試してもらえる状態にしておきましょう。パッケージデザインも重要な要素なので、実際の商品パッケージも展示します。価格表や取引条件は、バイヤーがすぐに確認できる位置に配置し、質問されたらすぐに答えられるよう準備しておくことが大切です。
海外バイヤーとの交渉で押さえるべきポイント
海外バイヤーとの交渉では、文化の違いを理解することが重要です。日本では曖昧な表現が好まれることもありますが、海外取引では明確な回答が求められます。「できるかもしれない」「検討します」といった表現は避け、「可能です」「難しいです」とはっきり伝えましょう。
価格交渉では、最初から最安値を提示するのではなく、交渉の余地を残しておくのがポイントです。ただし、あまりに高い価格を提示すると真剣に検討してもらえないため、市場価格を調査した上で適正な範囲での設定が必要です。数量に応じた割引条件なども事前に決めておくと、スムーズに交渉できます。
バイヤーからの要望には柔軟に対応する姿勢を見せつつ、自社が対応できない条件は正直に伝えることも大切です。たとえば、最小注文数量を大幅に下回る発注や、極端に短い納期などは、無理に受けると後でトラブルになります。信頼関係を築くためには、約束できることとできないことを明確に区別し、できることは必ず守る姿勢が重要です。
通訳サポートと商談記録の取り方
多くの商談会では通訳サポートが提供されますが、通訳者に頼りすぎず、自分でも基本的な英語表現を準備しておくと良いでしょう。「ありがとうございます」「これが私たちの主力商品です」「サンプルを試してください」など、簡単なフレーズを覚えておくだけで、バイヤーとの距離が縮まります。
通訳を介して商談する際は、短い文章で区切って話すことがコツです。長々と説明すると通訳者も訳しにくく、バイヤーも理解しづらくなります。また、専門用語や業界用語は事前に通訳者に伝えておくと、正確に訳してもらえます。商品の独自性を表す言葉などは、英語でどう表現するか事前に確認しておきましょう。
商談記録は、その場でメモを取ることが重要です。バイヤーの会社名、担当者名、興味を示した商品、要望された条件、次のアクションなどを箇条書きでメモします。商談会では1日に5〜10件の商談をこなすため、記憶だけに頼ると混同してしまいます。可能であれば、バイヤーの名刺にその場で重要ポイントを書き込んでおくと、後で見返したときに思い出しやすくなります。
食品輸出商談会後の成約までのフォローアップ
商談会が終わったら、すぐにフォローアップを始めることが成約への最短ルートです。商談会で良い感触を得ても、その後のアクションが遅れると、バイヤーの興味が薄れてしまいます。理想的には、商談会翌日から3日以内にお礼のメールを送り、継続的なコミュニケーションを開始しましょう。
フォローアップの過程では、バイヤーからさまざまな追加要求が出てくることがあります。詳細な成分表、追加のサンプル送付、価格の見直し、パッケージのカスタマイズなどです。これらの要求に迅速かつ誠実に対応できるかどうかが、契約成立の分かれ目となります。
また、輸出に必要な手続きや書類についても、この段階で具体的に準備を始める必要があります。輸出先国の規制に合わせた証明書の取得、ラベル表示の確認、輸送方法の検討などを並行して進めましょう。JETROのサポートサービスを活用すれば、これらの実務面でも助言を得られます。
商談後の迅速なお礼と提案書送付
商談会終了後、できるだけ早くお礼のメールを送ることが、良い印象を与える第一歩です。メールには、商談の機会への感謝、話し合った内容の簡単な確認、そして次のステップの提案を含めます。テンプレート化したメールではなく、各バイヤーとの商談内容を反映させた個別のメールを作成しましょう。
提案書には、商談で話し合った条件を整理して記載します。商品仕様、価格(FOBやCIFなどの条件を明記)、最小注文数量、納期、支払条件などを具体的に示します。バイヤーから特別な要望があった場合は、それに対する対応可否も明記しましょう。提案書は英語で作成し、PDFファイルで送付するのが一般的です。
商品サンプルの追加送付を希望された場合は、すぐに手配を始めます。国際郵便や宅配便を使って送る際は、税関申告が必要です。「商業サンプル・無償」と明記し、適切な書類を添付しましょう。サンプル到着後にバイヤーから感想を聞き、さらに条件を詰めていきます。このスピード感が、競合他社との差別化につながります。
サンプル送付から契約条件の調整まで
バイヤーがサンプルを評価し、本格的な取引に興味を示したら、契約条件の詳細な調整に入ります。この段階では、価格だけでなく、品質基準、包装仕様、ラベル表示、賞味期限の長さなど、細かい条件を一つずつ確認していきます。メールでのやり取りが基本ですが、重要な点は電話やビデオ会議で直接話し合うことも効果的です。
輸入国の規制に合わせた対応も必要になります。たとえば、アメリカ向けには栄養成分表示がFDA基準に適合している必要があり、EUでは特定の添加物が禁止されています。これらの規制情報はJETROのウェブサイトや、農林水産省の輸出支援サイトで確認できます。必要に応じて、商品の成分調整やラベルの作り直しも検討しましょう。
契約書の作成では、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。国際取引では、支払条件(信用状、前払い、後払いなど)や、トラブル発生時の解決方法(準拠法、仲裁など)を明確にしておくことが重要です。中小企業基盤整備機構や地域の商工会議所では、国際取引に詳しい専門家による無料相談を実施しているところもあります。
JETROのアフターサポート活用法
JETROでは商談会後も、参加事業者向けに継続的なサポートを提供しています。海外ビジネスに関する相談窓口では、契約交渉の進め方、貿易実務、輸出入手続き、現地の商習慣など、幅広い質問に専門のアドバイザーが答えてくれます。これらのサービスは基本的に無料で利用できるため、積極的に活用しましょう。
また、JETROは世界各地に事務所を持っており、現地のスタッフがバイヤーとの関係構築をサポートしてくれる場合もあります。たとえば、契約条件で行き詰まった際に、現地の商習慣を踏まえたアドバイスをもらったり、信頼できる物流業者を紹介してもらったりできます。海外出張が必要になった場合も、現地での面談セッティングなどを支援してもらえます。
さらに、JETROでは輸出成功事例のセミナーや、貿易実務の研修なども定期的に開催しています。初めての輸出で不安なことがあれば、同じような経験をした先輩企業の話を聞くことで、具体的な解決策が見つかることもあります。JETROのメールマガジンに登録しておけば、最新の支援プログラムや市場情報も入手できます。
まとめ
食品輸出商談会は、限られた予算で海外展開を目指す中小規模の事業者にとって、最も効率的な手段の一つです。国内にいながら海外バイヤーと直接商談できるため、渡航費や宿泊費などのコストを抑えながら、具体的な取引先を見つけるチャンスが得られます。
成功のカギは、事前準備の徹底と商談後の迅速なフォローアップにあります。事前マッチングでターゲットバイヤーを絞り込み、各バイヤーに合わせた提案資料を準備することで、限られた商談時間を最大限に活用できます。英語資料の作成、商品サンプルの準備、取引条件の事前決定など、やるべきことは多岐にわたりますが、一つずつ確実にこなしていきましょう。
商談会当日は、バイヤーの話をよく聞き、相手のニーズを理解することが重要です。一方的な商品説明ではなく、バイヤーが抱える課題に対して自社製品がどう貢献できるかを伝える姿勢が、信頼関係構築の第一歩となります。
そして商談会後のフォローアップこそが、成約への最も重要なプロセスです。お礼のメール送付、提案書の作成、サンプルの追加送付、契約条件の調整など、スピード感を持って対応することで、バイヤーの興味を具体的な契約につなげることができます。JETROをはじめとする支援機関のサポートも積極的に活用し、初めての輸出を成功させましょう。
食品輸出商談会への参加は、単なる商談の場ではなく、海外市場を学び、自社製品の可能性を広げる貴重な機会です。この記事で紹介した準備から成約までのステップを実践し、自社製品を世界に届ける第一歩を踏み出してください。