食品を海外に輸出したいけれど、日本国内向けのラベルをそのまま使えるのか、どこをどう変更すればいいのか分からず困っていませんか。実は、食品輸出では輸出先国ごとに表示ルールが大きく異なり、原材料表示や栄養成分表示の基準も日本とは違います。
この記事では、初めて食品輸出に取り組む中小企業の経営者・担当者の方に向けて、海外向け食品ラベルの基本ルールから実務上の調査手続き、各国別の表示要件までを分かりやすく解説します。輸出前に必要な原材料の使用可否確認や添加物規制のチェック方法、さらに専門機関による支援サービスの活用法もご紹介しています。
この記事を最後まで読めば、輸出差し止めや法令違反といったリスクを避けながら、効率的に海外向けラベルを作成できる具体的な道筋が見えてきます。スムーズな輸出実現に向けて、まずは正しい知識を身につけましょう。
食品輸出における表示の基本ルール
食品を海外に輸出する際、多くの企業が最初につまずくのが表示ルールの違いです。日本国内で販売している商品のラベルをそのまま使って輸出できると考えがちですが、実際には各国で定められた法律に従って、まったく新しいラベルを作り直す必要があります。
日本の食品表示法は、あくまで日本国内で流通する商品を対象にした法律です。輸出先の国にはそれぞれ独自の食品表示に関する法律があり、記載する項目や順番、表現方法まで細かく決められています。たとえば、原材料の記載順序が日本とは逆の国もあれば、栄養成分の表示単位が異なる国もあります。
さらに、使用できる添加物の種類や表示方法も国によって大きく異なるため、日本では合法でも輸出先では使用が認められていない添加物が含まれていると、輸出そのものができなくなる可能性があります。このような事態を避けるためには、輸出を計画する段階から輸出先国の表示ルールをしっかり理解し、準備を進めることが重要です。
日本国内の表示ルールは海外では通用しない
日本の食品表示法で義務付けられている一括表示や栄養成分表示は、日本国内でのみ有効なルールです。海外では通用しないどころか、日本語で書かれた表示は読んでもらえません。輸出先国では、その国の消費者が理解できる言語と形式で表示することが法律で求められています。
たとえば、アメリカに輸出する場合は英語での表示が必須であり、FDA(アメリカ食品医薬品局)が定める栄養成分表示のフォーマットに従わなければなりません。中国に輸出する場合は中国語(簡体字)での表示が必要で、中国独自の食品安全基準に適合した内容でなければ通関できません。
また、日本では任意表示となっている項目が、海外では義務表示になっているケースも多くあります。EUでは原産国表示が義務化されている食品カテゴリーがあり、韓国では遺伝子組み換え食品の表示義務が日本よりも厳格です。このように、国内で問題なく販売できている商品でも、海外向けには大幅な表示変更が必要になることを理解しておく必要があります。
輸出先国の法律に沿った言語で表示する義務
食品の表示は、輸出先国の公用語で記載することが基本ルールです。これは単なる商習慣ではなく、多くの国で法律によって義務付けられています。消費者が商品の内容を正しく理解し、安全に食べられるようにするための重要な規制です。
英語圏であれば英語、中国であれば簡体字の中国語、台湾であれば繁体字の中国語というように、それぞれの国や地域で使用される文字と言語で表示しなければなりません。韓国ではハングル表示が義務で、タイではタイ語での表示が求められます。
ただし翻訳する際には、単に日本語を直訳すればよいわけではありません。各国には食品の分類や原材料名に関する独自の用語基準があり、それに従った正確な表現を使う必要があります。たとえば、日本で「調味料(アミノ酸等)」と表示している添加物を、輸出先国の基準に合わせて適切な名称に変換する必要があります。また、輸出先国で使用が認められていない添加物が含まれている場合は、配合そのものを見直さなければなりません。
国内用ラベルと輸出用ラベルの二重管理が必要な理由
国内販売用と輸出用で異なるラベルを管理しなければならないのは、法律の違いだけでなく、表示項目や記載方法が根本的に異なるためです。同じ商品であっても、販売する国によってラベルの内容を変える必要があり、これが二重管理を避けられない理由です。
具体的には、原材料の表示順序が違います。日本では重量の多い順に記載しますが、EUでも同様のルールがある一方、表示の詳細度が異なる場合があります。栄養成分表示も、日本では100gまたは100mlあたりで表示するのに対し、アメリカでは1食分(サービングサイズ)あたりでの表示が義務付けられています。
さらに、アレルギー物質の表示対象も国によって異なります。日本では特定原材料7品目と特定原材料に準ずるもの21品目が定められていますが、EUでは14品目、アメリカでは主要アレルゲン9品目というように、対象となる品目数も種類も違います。
こうした違いに対応するため、多くの企業では輸出先国ごとに専用のラベルデザインを作成し、印刷や在庫も別々に管理しています。コストはかかりますが、法令違反による輸出差し止めや罰金のリスクを避けるためには必要な投資です。
食品輸出表示で必須となる調査手続き
食品を海外に輸出する前に、必ず行わなければならないのが輸出先国の規制調査です。この調査を怠ると、せっかく商品を作っても輸出できなかったり、現地で販売できなかったりするリスクがあります。調査には時間がかかるため、輸出計画の初期段階から取り組むことが重要です。
調査手続きは大きく分けて3つのステップで進めます。第一に、輸出先国の食品表示に関する法律や規制の全体像を把握します。第二に、自社商品に使用している原材料や添加物が輸出先国で使用可能かどうかを確認します。第三に、実際のラベル表示案を作成し、現地の規制に適合しているかをチェックします。
これらの調査は、農林水産省やJETRO(日本貿易振興機構)が提供する情報を活用したり、現地の専門コンサルタントに依頼したりする方法があります。特に初めて輸出に取り組む企業にとっては、専門家のサポートを受けながら進めることで、ミスやトラブルを大幅に減らすことができます。
輸出前に行うべき基準調査の流れ
基準調査は、まず輸出先国を決めることから始まります。国が決まったら、その国の食品安全基準、表示規制、輸入手続きに関する情報を収集します。農林水産省のウェブサイトには国別の規制情報がまとめられており、JETROも詳細なガイドブックを提供しています。
次に、自社商品がどの食品カテゴリーに分類されるかを確認します。たとえば、調味料、菓子、飲料など、食品の種類によって適用される規制が異なる国があります。中国では、輸入できる食品のカテゴリーが限定されており、事前に登録が必要な場合もあります。
輸出先国の規制を理解したら、自社商品の配合表や原材料規格書を用意し、使用している原材料や添加物が現地の基準に適合しているかをチェックします。この段階で問題が見つかった場合は、配合を変更するか、別の輸出先国を検討する必要があります。
最後に、表示内容の詳細を確認します。必須表示項目、任意表示項目、禁止表示などをリストアップし、ラベルデザインの要件を整理します。この情報をもとに、実際のラベル案を作成していきます。
原材料の使用可否を確認する方法
原材料の使用可否を確認するには、まず自社商品の配合表を詳細に整理することが必要です。配合表には、使用している全ての原材料と添加物を正確に記載し、それぞれの使用量や割合も明記します。
次に、輸出先国の原材料規制リストと照合します。多くの国では、使用が認められている原材料のポジティブリストや、使用が禁止されている原材料のネガティブリストが公開されています。たとえば、EUではNovel Food(新規食品)規制があり、従来EUで食べられてこなかった食品や原材料は事前承認が必要です。
添加物については特に注意が必要です。日本で認可されている添加物でも、海外では使用が認められていないケースが多くあります。たとえば、日本で広く使われている保存料や着色料の中には、EUやアメリカで使用が禁止されているものがあります。逆に、海外では使用が認められているが日本では未認可の添加物もあります。
原材料の確認作業は、各原材料メーカーから提供される規格書や成分表をもとに行います。原材料メーカーに対して、輸出先国での使用可否を問い合わせることも有効です。不明な点がある場合は、専門の検査機関や食品表示コンサルタントに相談することをおすすめします。
添加物規制の事前チェックポイント
添加物規制は国によって大きく異なるため、輸出前の入念なチェックが欠かせません。まず確認すべきは、使用している添加物が輸出先国で認可されているかどうかです。日本で「既存添加物」として認められているものでも、海外では未承認のケースがあります。
次に、添加物の使用基準を確認します。認可されている添加物でも、使用できる食品カテゴリーや最大使用量が国によって異なります。たとえば、保存料の安息香酸は多くの国で使用が認められていますが、使用できる食品の種類や上限濃度は国ごとに違います。
添加物の表示方法も重要なチェックポイントです。日本では「調味料(アミノ酸等)」のように一括名で表示できる添加物がありますが、海外では物質名での個別表示が義務付けられている国が多くあります。中国では添加物の表示に関して非常に厳格なルールがあり、INS番号(国際食品添加物番号)や中国独自の添加物名称を使用する必要があります。
また、アメリカではGRAS(Generally Recognized As Safe)という安全性評価制度があり、GRAS認証を受けていない添加物は使用できません。EUでもE番号という独自の添加物番号システムがあり、承認された添加物にはE番号が付与されます。
添加物に関する情報は頻繁に更新されるため、輸出直前にも最新の規制を再確認することが大切です。
海外向け食品ラベルの作成で押さえるべきポイント
海外向けの食品ラベルを作成する際には、デザインの美しさよりも法令遵守を最優先に考える必要があります。どんなに魅力的なパッケージでも、必須項目が欠けていたり、記載方法が間違っていたりすると、通関できずに輸出が止まってしまいます。
ラベル作成では、まず輸出先国で義務付けられている表示項目を漏れなく記載することが基本です。その上で、文字のサイズ、配置、言語、表現方法などの細かいルールを守らなければなりません。特に栄養成分表示やアレルギー表示は、フォーマットが厳密に定められている国が多いため、注意が必要です。
また、ラベルには記載してはいけない内容もあります。誇大な健康効果の表示や、科学的根拠のない効能の主張は、多くの国で禁止されています。輸出先国の文化や宗教に配慮した表現を選ぶことも重要です。
ラベルデザインが完成したら、輸出前に必ず専門家によるチェックを受けることをおすすめします。小さな表示ミスが大きなトラブルにつながることもあるため、慎重に確認を進めましょう。
ラベルに記載すべき必須項目一覧
食品ラベルに記載すべき必須項目は国によって異なりますが、共通して求められる基本項目がいくつかあります。まず、商品名は必須です。輸出先国の言語で、消費者が商品の内容を理解できる名称を記載します。
原材料名の表示も、ほぼ全ての国で義務付けられています。日本と同様に、使用量の多い順に記載するのが一般的です。ただし、複合原材料の表示方法や、添加物の記載ルールは国によって異なります。
内容量の表示も必須項目です。グラムやミリリットルなどの単位で明記します。アメリカでは、メートル法表記に加えて、オンスやポンドなどの表記も併記することが求められる場合があります。
賞味期限または消費期限の表示も重要です。日付のフォーマットは国によって異なり、日本の「年/月/日」形式が通用しない国もあります。アメリカでは「月/日/年」、ヨーロッパでは「日/月/年」が一般的です。
製造者または輸入者の名称と住所も必須です。輸出の場合、日本の製造者情報に加えて、現地の輸入業者や販売者の情報を記載することが求められる国もあります。
保存方法の表示も多くの国で義務化されています。「冷暗所保存」「開封後要冷蔵」などの情報を、輸出先国の言語で明記します。
栄養成分表示の国別基準の違い
栄養成分表示は、国によって表示すべき項目、表示単位、フォーマットが大きく異なります。日本では、エネルギー、たんぱく質、脂質、炭水化物、食塩相当量の5項目が義務表示ですが、これは日本国内でのみ有効なルールです。
アメリカでは、FDA(食品医薬品局)が定める栄養成分表示(Nutrition Facts)のフォーマットに従う必要があります。表示項目は、総カロリー、脂肪(飽和脂肪、トランス脂肪を含む)、コレステロール、ナトリウム、総炭水化物(食物繊維、総糖類、添加糖類を含む)、たんぱく質、ビタミンD、カルシウム、鉄、カリウムなど、日本よりも多くの項目が義務付けられています。
EUでは、エネルギー、脂肪、飽和脂肪酸、炭水化物、糖類、たんぱく質、食塩の7項目が義務表示です。さらに、任意で食物繊維やビタミン・ミネラルを追加表示することもできます。表示単位は100gまたは100mlあたりが基本ですが、1食分あたりの表示を併記することも可能です。
中国では、エネルギー、たんぱく質、脂肪、炭水化物、ナトリウムの5項目が義務で、「栄養成分表」という形式で表示します。表示単位は100gまたは100mlあたりです。
韓国では、エネルギー、炭水化物、糖類、たんぱく質、脂肪、飽和脂肪、トランス脂肪、コレステロール、ナトリウムの表示が義務付けられています。
栄養成分の分析値も、輸出先国の基準に合わせて測定する必要がある場合があります。分析方法が国によって異なるため、現地で認められた検査機関での分析が求められることもあります。
アレルギー表示
アレルギー表示は、食品の安全性に直結する重要な項目です。しかし、アレルギー物質として指定されている品目は国によって大きく異なるため、輸出先国の基準をしっかり確認する必要があります。
日本では、特定原材料として7品目(卵、乳、小麦、えび、かに、落花生、そば)の表示が義務付けられ、特定原材料に準ずるものとして21品目の表示が推奨されています。しかし、この分類は日本独自のものです。
EUでは、14品目がアレルゲンとして指定されています。日本と共通するものもありますが、セロリ、マスタード、セサミ(ごま)、ルピナス(マメ科植物)、軟体動物(いかやたこなど)など、日本では義務表示対象でないものも含まれています。EUでは、アレルゲンを原材料リスト内で太字や下線などで強調表示することが求められます。
アメリカでは、主要アレルゲンとして9品目が指定されています。乳、卵、魚類、甲殻類(えび・かになど)、木の実類(アーモンド、くるみなど)、ピーナッツ、小麦、大豆、ごまです。2023年からごまが追加され、9品目となりました。アレルゲンは原材料リストの後に「Contains:」という形で明示することが一般的です。
中国では、8品目がアレルゲンとして指定されており、グルテンを含む穀物、甲殻類、卵、魚類、ピーナッツ、大豆、乳、木の実類が対象です。表示は「過敏物質提示」という形で行います。
韓国では、21品目がアレルギー誘発食品として指定されており、日本に近い分類ですが、トマトやホタテ貝など、日本では対象外の品目も含まれています。
アレルギー表示では、微量混入の可能性がある場合の注意表示(コンタミネーション表示)についても国ごとにルールが異なります。輸出先国の規制を正確に理解し、適切に表示することが、消費者の安全を守るために不可欠です。
食品輸出表示の作成を支援するサービス活用法
食品輸出の表示作成は専門知識が必要で、初めて取り組む企業にとっては非常に難しい作業です。そこで活用したいのが、専門機関による支援サービスです。プロの力を借りることで、作業時間を大幅に短縮でき、ミスやトラブルのリスクも減らせます。
支援サービスには、大きく分けて3つのタイプがあります。第一に、輸出先国の規制調査や原材料の適合性確認を行うコンサルティングサービス。第二に、実際のラベルデザインや表示内容の翻訳・作成を代行するサービス。第三に、栄養成分分析やアレルゲン検査など、表示に必要なデータを提供する検査機関のサービスです。
これらのサービスを提供する機関には、民間企業のほか、日本食品分析センターや食品産業センターなどの公的機関もあります。JETROや農林水産省も、輸出支援の一環として相談窓口や情報提供を行っています。
サービスを選ぶ際には、対応可能な国や地域、実績、費用、納期などを比較検討することが大切です。また、法改正への対応や継続的なサポート体制があるかも重要なポイントです。
専門機関による表示変換サービスの選び方
表示変換サービスを選ぶ際には、まず対応可能な国と地域を確認しましょう。アメリカやEU、中国、韓国など主要な輸出先国に対応している機関が多いですが、東南アジアや中東など、特定地域に特化した専門家もいます。自社の輸出計画に合った対応範囲を持つサービスを選ぶことが重要です。
次に、提供されるサービスの内容を詳しく確認します。単なる翻訳だけでなく、原材料の適合性調査、添加物の使用可否確認、栄養成分表示の作成、アレルギー表示のチェックなど、どこまでサポートしてもらえるかを把握しましょう。一貫したサービスを提供している機関を選ぶと、窓口が一本化されて効率的です。
実績と専門性も選定の重要なポイントです。食品業界での経験が豊富で、多くの企業の輸出をサポートした実績がある機関は信頼できます。特に、自社と同じ食品カテゴリー(調味料、菓子、飲料など)での実績があると、より的確なアドバイスが期待できます。
費用体系も事前に確認しておきましょう。初期調査費用、ラベル作成費用、検査費用など、何にどれだけの費用がかかるのかを明確にしてもらうことが大切です。また、法改正があった際の対応費用についても確認しておくと安心です。
納期も重要な要素です。輸出スケジュールに合わせて、調査からラベル完成までどのくらいの期間が必要かを確認し、余裕を持ったスケジュールを組みましょう。
最後に、アフターサポートの有無もチェックポイントです。ラベル作成後に輸出先国の法律が改正された場合の対応や、追加の質問に答えてもらえるかなど、継続的なサポート体制が整っている機関を選ぶと、長期的に安心して輸出事業を続けられます。
まとめ
食品を海外に輸出する際には、日本国内の表示ルールとは全く異なる基準に対応する必要があります。輸出先国の法律に沿った言語で、必須項目を漏れなく記載したラベルを作成しなければ、通関できないリスクがあります。
輸出前には必ず、輸出先国の規制調査を行い、原材料や添加物の使用可否を確認することが重要です。特に添加物は国によって認可状況が大きく異なるため、入念なチェックが欠かせません。
ラベル作成では、栄養成分表示やアレルギー表示など、国ごとに異なるフォーマットや表示項目に対応する必要があります。専門機関による表示変換サービスを活用することで、作業負担を減らし、ミスのリスクを抑えられます。
初めて輸出に取り組む企業にとって、表示対応は大きなハードルですが、正しい知識と適切なサポートがあれば、スムーズに海外展開を実現できます。まずは輸出先国の基本ルールを理解し、一歩ずつ準備を進めていきましょう。